独自のビジネスモデルを展開するシンバイオ製薬 主力製品のトレアキシンとリゴセルチブとは

シンバイオ製薬株式会社の株価が5月に200円台につけてから150円台前後まで下落して低調が続いていましたが、10月に入って200円後半台で高騰、その後に200円台を割り下落、11月に200円台に戻して12月に入ってから再び200円台後半まで上がりました。現在は200円前後で推移しています。

株価の乱高下が激しいシンバイオ製薬は自社の開発拠点や工場を持たずに新薬を提供するビジネスモデルのバイオベンチャー企業です。どのような製薬会社なのかみていきましょう。

[シンバイオ製薬が展開するビジネスモデルとは]

シンバイオ製薬は2005年設立、治療が困難とされるような「がん、血液、自己免疫疾患」をターゲットに自社開発や生産を行わずに、他社が開発中の新薬候補を導入して上市を目指すビジネスモデルに展開しています。

導入にさいしては、ターゲットとなる候補を海外ですでに承認されているものや薬効と安全性指標(プルーフ・オブ・コンセプト-POC-)をクリアしている新薬候補を世界中から探索します。これをシンバイオ製薬の吉田社長は「世界中が研究拠点」と述べています。

写真はイメージです。 photo by photo-ac

いままで対象となったものは約1200件に及びます。その中から厳しい導入判断をおこない最終候補となったのは10品目未満です。

導入されたものは臨床開発部隊が上市までの開発戦略を立案した上で治験をおこなっていきます。治験のプロセスの中でシンバイオ製薬がおもに行うのはデータ収集、解析、マネージメントで最短期間での上市を目指します。

現在、シンバイオ製薬の主力製品と展開しているのが「トレアキシン(ベンダムスチン)」です。

トレアキシンは、シンバイオ製薬がドイツのアステラスドイッチラント社から独占的開発、販売に関するライセンス契約を得たものです。日本以外に中国、韓国、台湾、シンガポールに関しての契約を取得しています。

シンバイオ製薬の資産状況は

資本金107億6千万円、総資産額42億5千万、自己資本27億円、有利子負債0円。2017年12月期の売上高は34億4千万円、経常利益は▲39億7千万円、今年度の予想売上高は42億円、経常利益▲30億4千万円です。時価総額は16,0億8800万円です。

直近5年間の売上高は右肩上がり、経常利益はマイナスが続いています。現在、2つのパイプラインを保持、さらに2品目まで増やしたうえで本格成長に向けた事業基盤の構築を目指しています

[シンバイオ製薬の柱であるトレアキシン]

-トレアキシンは血液がんの化学療法剤です-

「トレアキシン」は、2010年10月に「再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫」、2016年8月に「慢性リンパ性白血病」、2016年12月に「未治療低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫」が適応症として承認された化学療法剤です。

非ホジキンリンパ腫は悪性リンパ種のひとつです。リンパ球ががん化して無制限に増殖してさまざまな部位のリンパ節やリンパ組織に腫れやしこりを作ります。

一部のウィルスとの関連性があるものを除いて多くは原因不明の疾患です。治療は分子標的薬と化学療法剤を使った薬物療法、放射線療法、造血細胞移植などが行われます。

悪性リンパ種は、毎年10万人あたり約15人から20人程度が発症しているといわれ、患者数は約30000人程度といわれています。悪性リンパ種は、大きく「ホジキンリンパ腫(HL)」と「非ホジキンリンパ腫(NHL)」に分けられます。日本において患者数の90%は非ホジキンリンパ腫です。

2014年度悪性リンパ腫男女別罹患数 photo by 厚生労働省

非ホジキンリンパ腫はがん化するリンパ球の種類、リンパ腫の形、悪性度などに応じてさまざま種類に分けられます。低悪性度ホジキンリンパ腫は、初期治療によって寛解がすることが多い反面、再発を繰り返すことも多く完治する症例が少ないことが知られています。

※トレアキシンが適応となる非ホジキンリンパ腫は「小リンパ球性リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、MALT関連節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、ろ胞性リンパ腫」です。

マントル細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫のひとつでリンパ節内のマントルという部分にあるリンパ球の中のB細胞ががん化したものです。

発症頻度は低く、悪性リンパ腫のなかでも3%程度です。月単位で病状が進行していき薬物療法で治癒をすることがむずかしく標準治療法は確立されていません。

トレアキシンは、がん細胞の中にあるDNAに結合することでがん細胞の複製反応を阻害してがん細胞死(アポトーシス)を引き起こしてがん細胞の増殖を抑制する効果があります。

抗CD20抗体医薬品である「リキツマシブ」もしくは「ガザイバ」と併用して用いられます。非ホジキンリンパ腫の標準療法のひとつとなっています。

※抗CD20抗体医薬品とは「CD20」と結合してがん細胞を死滅させる効果がある分子標的剤です。CD20はB細胞上に存在するB細胞を活性化させる抗体です。悪性リンパ腫ではB細胞が活発に活動することでCD20が高度に出現し、がん化したB細胞の活性化や増殖などが促進されます。

トレアキシンは、2008年に日本における共同開発と販売に関するライセンス契約をエーザイと締結、販売はエーザイがおこなってきましたが、2020年にエーザイとの販売契約が終了予定で2021年からは自社販売へと切り替えます。

-トレアキシンの今後の方向性は-

トレアキシンの適応範囲を広げるために、再発・難治性中高悪性度非ホジキンリンパ腫について臨床試験第III相中、凍結乾燥剤である現在のトレアキシンを病院で溶かす必要がなく扱いやすいようにした新剤形RTD液剤を2021年上半期販売に向けて申請準備中、点滴投与時間が従来の60分から10分になる新剤形RI液剤の臨床試験II相が完了しています。

RI液剤については、いままでの承認されている適応疾患に加えて「再発・難治性びまん性大細胞型B細胞性リンパ種」も対象にしています。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫病理組織象 photo by wikimedia

※びまん性大細胞型B細胞性リンパ種は、悪性リンパ腫の中で30%以上と患者数がもっとも多く中悪性度に属しており比較的進行が早いことが知られています。化学療法や放射線療法に対する反応よく治療効果が上がれば完治が望まれるといわれています。

トレアキシンについては、非ホジキンリンパ腫だけではなく進行性固形がんの臨床試験第I相開始、全身性エリトマドーデスの臨床試験準備中です。

[もうひとつのパイプラインのリゴセルチブ]

シンバイオ製薬が持っているもうひとつパイプラインは、アメリカのオンコノバ社の「リゴセルチブ」の「骨髄異形成症候群(MDS)」の治療薬です。日本と韓国における独占的開発権および販売権を取得していて注射剤と経口剤の承認取得を目指しています。

オンコノバ社が注射剤における「再発性・難治性高リスク骨髄異形成症候群」を日本も参画して国際共同第III相試験を実施継続中、経口剤については病態によって準備中から臨床治験第I相準備中の段階です。

骨髄異形成症候群は、「赤血球、血小板、白血球」の血液細胞の大もとになる造血幹細胞の遺伝子が傷つき血球がうまく作れなくなる疾患です。原因は不明で血液細胞が減少することから貧血、感染症にかかりやすくなる、出血しやすいなどさまざまな症状があらわれます。

赤血球、血小板、白血球 photo by wikimedia

予後不良で急性骨髄性白血病に移行する場合があります。このことから前白血病状態と呼ばれることがあります。

国内での患者数は推定で約15000人程度と推測されていますが、ほかの病気や高齢が原因となる貧血などと判別がむずかしい場合があって見逃されている軽症者がいるだろうといわれています。

リゴセルチブは、がん関連遺伝子産物の作用を阻害することで、がん細胞の生存や増殖に必要な細胞内シグナルの伝達を抑制してがん細胞を死滅させる新たな作用機序を有する分子標的薬です。

骨髄異形成症候群に対する薬物治療は日本新薬の「ビダーザ」に限られています。臨床試験ではリゴサチブ経口剤とビダーザの併用療法で完全寛解が認められた症例が報告されています。

オンコノバ社の臨床試験結果をみながら注射剤については2019年度中に臨床試験完了を目指しています。将来的には固形がんへの適応を進める予定です。

写真はイメージです。 photo by photo-ac

シンバイオ製薬は、患者数が少なく専門性も高いために治療薬が限られているような「がん、血液、自己免疫疾患」の分野をターゲットにしています。ニーズは高いのですが大手製薬企業が採算性などの面から手を出しにくい空白領域といわれています。

また、パイプラインとなっているトレアキシンとリゴセルチブの対象疾患は高齢者に多くみられるもので、年々、患者数が増加しています。高齢者社会が加速している現代において重要なものになっていくと考えられます。

このような空白領域を埋めるような新しい治療薬が出てくることは病気に苦しんでいる患者さんにとってひとつの朗報になるのではないでしょうか。

 

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