メドレックス社独自技術の経皮吸収型製剤 多様化する生活様式や高齢化社会に向けての取り組み

2018年12月21日に、「株式会社メドレックスが経皮吸収型製剤に関する新たな基在組成剤」について日本において特許査定を取得したというニュースが流れました。本特許はアメリカでもすでに特許査定を取得しています。

メドレックス社は、独自の技術を用いた経皮吸収型製剤に特化して研究・開発をおこなっている創薬会社です。最初に経皮吸収型製剤についてみてみましょう。

[経皮吸収型製剤は皮膚から全身へ]

医薬品の使い方には、病気や症状に応じてさまざまな種類(投与経路)があります。普段、目にすることが多いのは錠剤やカプセルなど口から飲む経口薬、シップなどの消炎鎮痛に用いる貼付剤、目薬などの点眼剤などではないでしょうか。

ほかにも、鎮痛薬などの座薬、喘息の発作止めの吸入薬、鼻づまりを抑える経鼻薬、静脈注射や筋肉注射といった注射剤などさまざま種類があります。

このなかで貼付剤には大きく2種類ものがあります。ひとつは肩こりや関節の痛みなどに用いる消炎鎮痛薬で貼った部分に局所的に作用するもの、もうひとつは薬を皮膚組織から毛細血管に移行させて全身の血流を循環することで効果を発揮する「経皮吸収型製剤」です。

狭心症の経皮吸収型製剤 photo by hakucyou

経皮吸収型製剤は、多くの経口剤が体内に吸収されて肝臓を経てから全身へと送り出されますが経皮吸収型製剤は肝臓を経ることなく薬を全身へ送り届けることが可能です。

食事の影響がほとんどない、薬を長時間安定した血中濃度にすることできる、同じ成分の経口薬と比較して副作用が少ない、嚥下障害などある患者さんも使うことができる、飲み忘れが防止できるなどといったメリットが期待されています。

狭心症、更年期障害、癌性疼痛、喘息、ロキソニン消炎鎮痛薬、新しいところではアレルギー性鼻炎の経皮吸収型製剤などがあります。決して種類が多いものではなく、どのような薬でも経皮吸収型製剤にできるというものではありません。

経皮吸収型製剤を独自の技術を用いて研究・開発をおこなっているメドレックス社とはどのような会社なのでしょうか。

[メドレックス社はどんな会社なの]

メドレックス社は、2002年に多様化する生活様式や高齢化社会に向けて新しい剤型(経皮吸収型製剤)の医薬品を開発することを目的に設立されました。

写真はイメージです。 photo by photo-ac

アメリカに、2009年10月に 臨床開発を目的とした子会社「IL Pharma Inc.」を設立、2015年4月に医薬品開発を目的とした子会社「MEDRx USA INC.」を設立、同年10月に「IL Pharma Inc.」を「MEDRx USA INC.」が吸収合併。

現在は、メドレックス社とアメリカの子会社「MEDRx USA INC.」の2社で独自の経皮吸収型製剤技術をベースに新たな医薬品を生み出す創薬企業グループです。

経皮吸収型製剤の技術を用いて画期的な新薬を提供することで人々の健康とQOLの向上を目指すことを企業コンセプトにしています。

メドレックス社は、開発する製剤の販売・開発・製造に関するライセンス契約をほかの製薬会社などと結んでロイヤルティーを得る形でビジネスモデルを展開しています。

メドレックスの売上高、資産状況

売上高は2017年12月期の売上高は 1.9億円、2018年12月期の予想売上高は 0.7億円、経常利益は2017年12月期の経常利益は ▲9.8億円、2018年12月期の予想経常利益は ▲14.1億円です。2018年12月期の経常利益はパイプラインの研究開発が増加するためにマイナスが増えています。時価総額は64億3500万円。総資産額24億6千万円、自己資本率91.4%です。

[メドレックス社独自の2つの経皮吸収技術]

メドレックス社は、ILTS(Ionic Liquid Transdermal System)とNCTS(Nano-sized Colloid Transdermal System)とういう独自の経皮吸収技術を実用化しました。

わたしたちの皮膚は、わたしたちのからだを守るための大切なバリアの役目をしています。経皮吸収型製剤を用いて有効成分をわたしたちのからだの中に送り届けるには、皮膚のバリアから浸透させやすいことが必要になります。

皮膚断面図 photo by wikimedia

その条件としては、「分子量が小さい、脂溶性が高い、融点が低い」など皮膚から浸透しやすいといった条件が必要になります。従来の技術ではこれらの条件をクリアできる薬物が限られていました。

◇ILTS

ILTSはイオン液体の特性を利用したものです。イオン液体は、「常温融解塩」と呼ばれていて融点が100℃以下で「低融点、高伝導性、不揮発性、不燃性」などといった特徴を持っています。太陽電池などの工業製品の材料として主に用いられています。

メドレックス社はイオン液体の性質を利用して、薬物をイオン液体化するもしくはイオン液体に薬物を溶解するといった方法で医薬品の製剤技術に活用して、皮膚からの経皮浸透性を飛躍的に向上させる技術を世界に先駆けて開発しました。

この技術よって、いままで経皮吸収型製剤では難しかった高分子(核酸、ペプチド)や難溶性薬物を経皮吸収型製剤にすることが可能となりました。

◇NCTS

ナノコロイドを活用した経皮吸収型製剤技術です。ナノコロイドとは、粒子の大きさを100ナノサイズ(1ミリの10万分の1)まで超微細化して溶液状態としたもので高い経皮吸収性が得られます。液体のまま貼付剤化することで即効性が期待できるといった側面も持っています。

[メドレックス社のパイプラインは]

メドレックスがILTSとNCTSを利用して研究・開発中の経皮吸収型製剤をみていきましょう。現在、4つのパイプラインがあって「CPN-101、MRX-10XT、MRX-5LBT」がILTS、「MRX-7MLL」がNCTSを利用しています。

◇CPN-101 痙性麻痺治療貼付剤(チザニジンテープ剤)

痙性(けいせい)麻痺とは、脳や脊髄の病気のために筋肉組織が異常に緊張してしまい手足が硬直して動かせなくなってしまう状態です。運動機能障害以外にも睡眠不足、痛み、呼吸がしずらいといった症状にも悩まされます。

CPN-101は、痙性麻痺における筋肉の「つっぱり、こわばり、麻痺」を軽減する中枢性筋弛緩剤「チザニジン」を経皮吸収型製剤にしたものです。

経口用チザニジン錠剤 photo by wikimedia

現時点で経皮吸収型製剤の筋弛緩薬は存在せず、経口剤と比較して有効血中濃度の持続性や副作用の低減が期待されています。

臨床治験第I相終了および第I相追加試験は終了していて基準を満たしているとの結果が2018年1月発表されています。

日本、ヨーロッパで特許査定がでており、アメリカ、カナダ、中国などで特許出願中です。また、インドとアメリカの製薬会社と東アジアを除いた全世界での開発および販売などのライセンス計画を結んでいています。

◇MRX-10XT 中枢性鎮痛貼付剤(オキシコドンテープ剤)

MRX-10XTは、中度から高度のがん性疼痛治療薬「オキシコドン」の経皮吸収型製剤です。

オキシコドンは「オピオイド鎮痛薬」のひとつで強い鎮痛作用を持っています。その一方で乱用や誤用がアメリカでは社会問題になっています。

MRX-10XTは、乱用や誤用を目的にメドレックス独自の経皮吸収型製剤技術「AMRTS」を用いて、安全で安定した疼痛管理をもたらすものとして期待されています。

※AMRTS(Abuse and Misuse Resistant Transdermal System)は、オピオイド乱用や誤用を防止することを目的に開発された技術です。薬からの薬物の抽出しづらい、口の中に入れても溶けづらい、強い苦みを持っているので噛んだりするとことや飲んだりしづらい、再利用しても皮膚からの吸収がほとんどなく簡単にはがれおちてしまうといって特性を持っています。

アメリカでの臨床治験第I相の結果については、2018年2月に疼痛治療において十分な血中濃度を実現できる可能性が高いことが示されています。

◇MRX-5LBT 帯状疱疹後神経疼痛貼付剤(リドカインテープ剤)

帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の原因となるヘルパスウイルスの一種によって神経沿いに発疹・水疱ができ強い痛みがあらわれる疾患です。

ヘルパスウィルス photo by wikimedia

帯状疱疹後神経疼痛は、発疹・水疱が治癒した後も続く痛みのことで帯状疱疹の合併症としては最も頻度が高いものです。

持続的な焼けるような痛みや刺すような痛みを繰り返し、感覚が鈍くなることや触れるだけで痛みを感じることなどもみられる難治性疼痛のひとつです。

MRX-5LBTは、局所麻酔薬などとして幅広い用途で使用されている「リドカイン」を帯状疱疹後神経疼痛治療薬として経皮吸収型製剤にしたものでアメリカにて開発が進められています。

先行販売されている帯状疱疹後神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤「Lidoderm」の市場をターゲットにしています。

※パップ剤とは一般的な湿布剤様の貼付剤のことを指します。

2018年6月にLidodermとの比較臨床試験で生物学的に同等性の結果を得られました。臨床治験第III相まで終了しており、2020年に新薬承認申請(NDA)を行うことを計画しています。

Lidodermと比較すると、MRX-5LBTは対経費吸収率が高く、テープ剤の性質からパップ剤より粘着性に優れ、臨床試験の結果から皮膚への安全性の高いと考えられています。

◇MRX-7MLL アルツハイマー治療薬(メマンチン含有貼付剤)

MRX-7MLLは、中度および高度アルツハイマー型認知症における症状の進行を抑制する治療薬「メマンチン(メマリー)」を経皮吸収型製剤にしたものです。

2018年7月から非臨床治験を開始、2018年12月にはFDA(アメリカ食品医薬局)から実施中の非臨床治験内容で臨床治験第I相を開始するのに十分であると答申があり、2019年にはFDAに臨床治験申請提出予定です。

新薬承認向けては、メマンチンと生物学的同等性を示すことができれば臨床治験第II相及び第III相が必要ないことも確認されていて早期の新薬承認申請が可能です。

◇第一三共との共同開発、武田薬品へのライセンス付与

第一三共とNCTSを用いた共同開発、武田薬品へILTSとNCTSのライセンス付与を発表しています。薬物名、適応症については非公開です。

 

◇経皮吸収型製剤以外には「マイクロニードルアレイ」を開発

マイクロニードルアレイは、特殊な樹脂でできている長さ500~600μm(0.5mm~0.6mm)、直径10~30μm(0.01mm~0.03mm)の微小針の集合体です。

注射しか投与手段のない「ワクチン、核酸医薬、タンパク医薬」などの無痛経皮投与システムです。からだの表皮に効果的に垂直に刺せるように開発されていて提携先の模索と交渉を進めています。

 

写真はイメージです。 photo by photo-ac

皮膚に貼るだけの経皮吸収型製剤については、より効果や安全性が高くい経皮吸収型製剤や対応されていない医薬品の経皮吸収型製剤について世界中の製薬会社および研究機関が研究・開発をおこなっています。今後、いろいろな経皮吸収型製剤がでてくるでしょう。

経皮吸収型製剤を使って皮膚が赤くなった、かゆみがある、はがれてしまった、はがし忘れたなどあったらかかりつけのお医者さんや薬剤師さんに相談してくださいね。

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