ウイルス学に立脚した創薬会社オンコリスバイオファーマ社 主力製品は腫瘍溶解ウイルスと腫瘍検査ウイルス

2019年1月に17日に、オンコリスバイオファーマ株式会社がアメリカのコーネル大学と「テロメラシン・抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用の医師主導臨床治験フェーズII」の契約を締結したとニュースが流れました。この治験は、進行性食道がんの有効性と安全性を検証するためのものです。

オンコリスバイオファーマ社は、ウイルス学(Virology)に立脚した創薬をコンセプトに「がんや重症感染症」に対する新薬の開発に力を入れている製薬会社です。

[イノベーションとファブレス経営]

オンコリスバイオファーマ社は、ウイルス学の見地から「がんと重症感染症」に重点をおき、ウイルスの遺伝子改変技術を生かした新しく安全性と有効性の高い治療方法に観点を置いた創薬を目指しています。

同時に新しい検査サービスの開発にも力を入れ、これまで確立された治療法がなかった領域へのイノベーションをもたらすことをビジョンとしています。

写真はイメージです。 photo by pixaboy

オンコリスバイオファーマ社は、「がん及び重症感染症」などの難病について大学などの研究機関や企業から対象となる医薬品候補を導入、創薬プランを「企画、研究、開発」、製造および臨床試験をアウトソーシングして医薬品開発を行う「ファブレス経営」というビジネスモデルをとっています。

ファブレス経営の大きな特徴は、「企画、研究、開発」などに集中して投資できる、大規模な設備投資が不要、市場の変化に柔軟に対応できる、なるべく短いライフサイクルで製品化することが可能なことです。

オンコリスバイオファーマ社は、「開発途上の段階で開発および販売権を大手製薬会社へ導出、大手製薬会社が持つ開発資源や販売網を活かすことが医療にイノベーションをもたらす最短経路である」と述べています。

このようなビジョンとビジネスモデルを持っているオンコリスバイオファーマ社のパイプラインをみてみましょう。

[オンコリスバイオファーマ社のパイプラインは]

◇テロメライシン(OBP-301) ・OBP-702・OBP-405

テロメライシンはアデノウイルス5型を用いて、がん細胞を溶解させる抗腫瘍活性を示すように遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスです。

※アデノウイルス5型は自然界に存在しています。感染して発症した場合には風邪の症状が出現します。耳にすることがある「咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎」なども同じアデノウイルスですが5型以外のウイルスが原因です。

アデノウイルス photo by wikimedia

対象疾患は、「食道がん、悪性黒色腫(メラノーマ)、肝臓がん」などの固形がんです。

テロメライシンは、テロメラーゼ活性が高いがん細胞で増殖する特性をもっています。がん細胞内で増殖することでがん細胞を破壊し、増殖したウイルスがほかのがん細胞へ感染していくことでがん自体が縮小していきます。

※テロメラーゼは、細胞内の染色体の末端の領域にある「テロメア」に存在する酵素です。テロメアは細胞分裂を繰り返すたびに短くなっていき細胞分裂はやがて停止します。テロメラーゼは生殖細胞や体細胞の存在しテロメアを長くする働きがあります。しかし、多くの種類のがん細胞内にもテロメラーゼが存在することがわかっていて無制限にがん細胞が増殖する要因の一つになっています。

また、ウイルスが分解したがん細胞の特徴を免疫細胞へ異物の特徴を提示する役目を持っている「樹状細胞」が察知し、免疫をつかさどるリンパ球に知らせて全身の免疫活動の活性化にもつながり、治療対象領域以外に効果があらわれるアブスコーパル効果の期待が期待されます。

アメリカのメラノーマに対する臨床試験では治療対象の原発巣以外の転移巣でもがんの縮小例が複数確認されています。

テロメラーゼ不活性な正常な細胞に対しての増殖能力はなく、いままでの臨床治験の結果から重篤な副作用は報告されていません。FDA(米国食品医薬品局)でも安全性が認められています。

テロメライシンと放射線療法や化学療法剤との併用によって、より強力な抗腫瘍活性が導き出せることも報告されています。

臨床治験の状況は、国内で食道がんについて岡山大学と医師主導臨床治験第I相終了、今後は自社主導で放射線療法との併用療法について臨床治験第II相準備中です。

台湾では肝臓がんの臨床治験第I相/第II相実施中、アメリカでは切除不能または転移性メラノーマについての臨床治験第I相完了、FDAに臨床治験第II相の実施計画書提出中です。

さらに、新しい第二世代のテロメライシンとして、構造を一部改変した新たな腫瘍溶解ウイルス「OBP-702」及び「OBP-405」をあらたなパイプラインとして開発しています。

OBP-702は、がん化した細胞を自然死(アポトーシス)させるがん抑制遺伝子である「p53」を組み込むことによって有効性をより高めたものです。本来持つがん細胞の攻撃性にアポトーシスを組み合わせることで強力な抗がん活性が期待されています。

OBP-405は、腫瘍溶解ウイルスが持つ感染力をより高めたもので特定の細胞への感染力を高め、幅広いがんへの強い抗がん活性が期待されています。

◇OBP-401(テロメスキャン)・OBP-1101(テロメスキャンF35)

OBP-401はアデノウイルス5型の基本構造を持ったテロメライシンにクラゲの発光遺伝子を組み入れた検査用ウイルス、OBP-1101はアデノウイルス35型を用いて感染率の向上とがん細胞への特異性を高めた改良型の検査用ウイルスです。

これらの検査用ウイルスは、テロメラーゼが活性化しているがん細胞に感染して特異的に蛍光発光します。各種固形がんの早期発見や病状の進行度予測など「CTC検査」に応用するために開発されたものです。

※がんは血管を新生することで血液から栄養分を確保します。がんの成長が進むとがん細胞は新生した血管を通って血液中に流れ出します。これを循環がん細胞(CTC-Circulating Tumor Cell)といいます。CTCを検査することで画像検査では確認できない微細がんの超早期発見などが期待できます。

CTC検査 photo by 内藤メディカル・クリニック

OBP-401とOBP-1101を比較すると、OBP-401は発光輝度が高く検出がしやすいものの白血球に反応して若干発光してしまうために前段階で白血球を取り除く工程が必要、OBP-1101は発光輝度が若干弱いもののがん細胞のみを発光させるために白血球を取り除く工程は不要という特性があります。

2種類のテロメスキャンを用いることで、幅広いがん種での検出を行い「がんの超早期検査や悪性度の判定、がん患者の予後予測、がん患者に適した治療薬の選択、痛みなどを伴う生検を行わない」などがん治療の応用の位置づけとして考えられています。

現時点において臨床性能試験中でアメリカと韓国など会社とライセンス導出契約と事業提携をおこなっています。

オンコリスバイオファーマ社は、テロメスキャンをファーストプライオリティとしてとらえています。

テロメスキャンでがんを早期発見、テロメライシンで治療、予後の確認をテロメススキャンで行うといったサイクルも想定しています。

◇OBP-801

アステラス製薬から導入した分子標的薬のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤です。

がん細胞内でがん抑制遺伝子の発現をうながし、がん細胞の増殖抑制や細胞死を誘導するといった効果などが期待されている治療薬です。

対象疾患は、「肺がん、腎臓がん、中皮腫、婦人科がん」などです。

がんの中にはがん細胞内でHDACの異常な活性化がみられます。この活性化により腫瘍化が促進するとされると考えられています。

※ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)とは、ヒストンとDNAの結合を変化させる酵素です。ヒストンは染色体中にみられるたんぱく質のひとつでDNAと結合して染色体の形を作ったり、遺伝子の活性を制御したりします。

アメリカでは、すでにHDAC阻害剤についてT細胞リンパ腫を適応症としていくつかの治療薬が販売されています(そのなかで日本では「ゾリンザ」が販売されています)。

OBP-801の前臨床試験では、既存のHDAC阻害剤より強い抗腫瘍効果が認められると報告されています、

臨床治験の状況はアメリカで各種固形がんの臨床治験第I相中、国内では京都大学と共同で緑内障手術後の瘢痕(はんこん)形成に対する抑制効果などの眼科領域への応用を研究中です。

◇OBP-601(センサブジン)

アメリカのエール大学から導入したHIVウイルスの複製を阻害する抗ウイルス作用のあるHIV感染症(AIDS)治療薬です。

既存のHIV感染症治療薬に耐性を持ったウイルスに対しても効果あると期待されています。HIVウイルスは「逆転写酵素」の仕組みによって増殖を繰り返します。QBP-601は逆転写酵素を阻害する働きをもっています。

HIVウイルスの感染から増殖まで 赤枠が逆転写酵素 photo by wikimedia

臨床治験の状況は、アメリカでは臨床治験第Ia相完了、フランスでは臨床治験第Ib/IIa相完了、用法用量設定を目的とした臨床治験第IIbを17か国94施設で実施してほぼ完了しています。

アメリカの製薬会社と開発・製造・販売権のライセンス契約を結びましたが、相手方会社の事業戦略変更に伴い解除されています。

国内においては、武庫川女子大学と共同でOBP-601の徐放製剤としての可能性を検討しています。

※除法製剤とは、有効成分の徐々に放出するようにして「服用回数の低減、血中濃度を長時間一定に保つ、副作用を軽減する」といった作用がある薬剤です。

みてきたパイプライン以外に、新規B型肝炎治療薬として「OBP-AI-004」を鹿児島大学と化合物スクリーニング中です。そのほかでは、ジカ熱ワクチン開発ベンチャーのアメリカのプレシジョン社と新規腫瘍溶解アデノウイルス開発バイオベンチャーのアメリカのアンリーシュ社に出資しています。

写真はイメージです。 photo by pixaboy

オンコリスバイオファーマ社は、「がんを切らずに治す」という時代を作ることを大きな目標として掲げています。

外科手術の技術はいろいろな形で進歩していますが、どのような形にしても患者さんのからだへ少なからず負担があり、外科手術にも限界があるのが現状です。

オンコリスバイオファーマ社の技術力がどのように進んでいくか注目されるところですよね。

現在は、がん領域に力を入れていますが、将来的には希少疾患の分野へ拡充する計画を持っていて候補となる医薬品を探索中です。

オンコリスバイオファーマ社の沿革、資産状況、売上高

〇沿革

岡山大学の消化器腫瘍外科教授であった田中紀章医師と藤原俊義医師(現特別顧問)がテロメライシンの開発と事業化のために企業設立を模索、現代表取締役である浦田泰生社長と出会ったことで、2004年に腫瘍溶解ウイルスの研究開発を目的に東京都港区にオンコリスバイオファーマ社が創業されました。

テロメライシンとテロメスキャンをメインにビジネスを展開しています。2006年10月に京都に研究センター設立(のちに神戸へ移転)。2013年12月東京証券取引所マザーズ市場に上場。2016年9月にアメリカに子会社設立。

〇資産状況、売上高

総資産額33億4500万円、純資産額28億5600万円、自己資本比率85.0%。2017年12月期の売上高は2億2900万円、経常利益は▲10億7800万円、今年度の予想売上高は1億6000万円、経常利益▲12億5000万円です。時価総額は173億6300万円です。

※2019年1月の発表では、当初の予想売上高2億3千万円を想定していましたがライセンス契約の減収などで減少、研究開発費が予定より下回ったために当初の予想経常利益▲14億円から上方修正しています。

 

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