リボミック社の加齢黄斑変性症治療薬の「RBM-007」 既存の加齢黄斑変性症治療薬「抗VEGF薬」を超えられるか

2019年1月24日に、アプタマー医薬の創薬をおこなっている「株式会社リボミック」が滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性症治療薬の「RBM-007」について、アメリカでの第I/IIa相臨床試験で第1コホート(低用量群)における安全性を確認したとの発表がありました。 リボミック社は、2003年8月に東京大学医科学研究所の中村義一教授がファウンダーとなって設立された会社です。東京大学とアプタマー創薬に関する研究を目的とした共同研究契約を締結しています。 現在、アプタマー医薬品はアメリカのアルケミックス社が開発した加齢黄斑変性治療薬の「マクジェン」のみです。まだ、ほかのアプタマー医薬品は出てきていません。 リボミック社が開発している「RBM-007」はどのような医薬品なのでしょか。 [RBM-007はどんな治療薬なの] -アプタマー医薬ってなに- 最初に、アプタマー医薬からみていきましょう。聞きなれない言葉ですよね。アプタマー医薬ではRNAを利用します。 わたちたちのからだの細胞の中に存在するRNAは一本の鎖のような塩基の配列から構成されています。 RNAは、塩基の配列によってさまざま立体構造を形成します。この形成する力を使って標的となるタンパク質に結合することで、タンパク質の働きを阻害や調節するRNA分子を「アプタマー」といいます。 アプタマーは、たんぱく質の形状に応じてフィットするように立体構造を作って結合するという特徴があります。この特徴を生かして目的となる標的たんぱく質に人工的に強く結合させて医薬品として応用していくのが「アプタマー医薬」です。 リボミック社は、アメリカのアルケミックス社が開発したSELEX法(試験管内人工進化法)を利用したリボミック社独自技術「RiboARTシステム」で創薬に最適なアプタマーを作製しています。 アプタマー医薬品は、抗体医薬品と同じ分子標的薬のひとつですが抗体医薬品と作用機序が異なります。 抗体医薬品と比較すると「強い標的結合力、標的の制限が少ない、化学的な改変が容易、化学合成によって製造可能」などといった利点があります。 リボミック社が、この技術から作製したもののひとつがRBM-007です。RBM-007はいくつかの疾患をターゲットにしています。もっとも開発が進んでいるのが「加齢黄斑変性症」という眼の病気です。 -加齢黄斑変性症は失明に至る眼病です- 加齢黄斑変性症は、年齢を重ねるとともに網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積することで網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の小さな黄斑部に障害がでる病気です。 症状は、「ものの中心部が歪んで見える、中心部が黒く見える(中心暗点)、視力が低下する、色がわからなくなる」といった形で進んでいき、悪化すると失明に至ります。 加齢黄斑変性症には、網膜色素上皮が徐々に萎縮していき視力が悪化していく「萎縮型」、脈絡膜新生血という異常な血管が形成されて異常な血管から血液成分の漏出や血管が破れて網膜がはれる、液体がたまることから視力が悪化する「滲出型」の二つのタイプあります。 現在、萎縮型の治療法は残念ながらありません。滲出型は、薬物療法として比較的新しい治療薬である血管新生阻害薬(抗VEGF薬)や光線力学的療法などがあります。 この血管新生阻害薬(抗VEGF薬)のひとつがアメリカのアルケミックス社のアプタマー医薬品「マクジェン」です。 加齢黄斑変性症にみられる新生血管の成長や血液成分の漏出に関与している「血管内皮増殖因子(VEGF)」の働きを抑えて、脈絡膜新生血管を退縮させて視力の低下を抑制する治療薬です。 ※マクジェン以外に抗体医薬品の抗VEGF薬「ルセンティス」と「アイリーア」があります。作用機序はマクジェンと異なりますが薬理作用は同じです。 しかし、抗VEGF薬に「効果が得られない患者さんが相当数存在する、2~3年程度経過すると効果が低下してくる」といったケースがみられるようになりました。 これらの要因として病変による網膜の瘢痕化(線維化)が関与していると考えられています。抗VEGF薬には瘢痕化を抑制する作用はありません。 -RBM-007はどんな薬なの- RBM-007は、さまざまな生理機能を持っていて血管新生や瘢痕化などにも関与している「FGF2(線維芽細胞増殖因子2」の働きを阻害するアプタマーです。 動物試験において網膜の血管新生と瘢痕化を抑制することが証明されています。この二重作用が既存の抗VEGF薬にはない新しいメカニズムで、加齢黄斑変性症の根本治療につながる可能性があると考えられています。 リボミック社は、RBM-007の加齢黄斑変性症の臨床試験をアメリカで実施するために2017年8月にアメリカへ子会社を設立、2018年10月からアメリカにおける臨床試験第I/IIa相試験を開始しています。 臨床試験では、眼球にある硝子体に注射をおこなうために通常は健常人で行う第I相臨床試験は実施していません。少数の患者さんを対象にして第I/IIa相試験を少量から段階的に増量しながら安全性や忍容性などの確認をおこなっています。 第I/IIa相試験の第1コホートの少量投与の結果において安全性の確認がされました。現在は、投与量を増やした第2コホートにおける患者さんへの投与が行われています。第I/IIa相試験の完了予定は2019年です。 第IIb相試験は、抗VEGF薬で奏功がみられない200名規模の患者さんを対象として有効性の確認を行う予定です。2019年開始で2021年完了予定となっています。 [加齢黄斑変性症治療薬RBM-007以外のパイプラインは] リボミック社は、加齢黄斑変性症治療薬を対象にしたRBM-007以外にいくつかのパイプラインを抱えています。 これらのパイプラインは動物モデル試験中もしくは終了している段階です。いずれの動物試験でも有効性が見いだされています。 ◇RBM-007(軟骨無形成症、がん性疼痛) RBM-007は、加齢黄斑変性症以外に四肢短縮の低身長を引き起こす希少疾患である「軟骨無形成症」、進行がん患者で骨転移による強い疼痛を引き起こす「がん性疼痛」なども対象疾患にしています。 軟骨無形成症については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業-希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」になっています。 ◇RBM-004(神経障害性疼痛) 末梢または中枢神経系の損傷や機能障害によって引き起こされる「神経障害性疼痛」が対象疾患です。NGF(神経成長因子)を阻害するアプタマーです。藤本製薬に導出しています。 ◇RBM-003(心不全) 心筋梗塞直後に、キマーゼという酵素が肥満細胞と心筋細胞等の組織損傷部位から分泌されることで心筋に悪影響を及ぼします。RBM-003はキマーゼを阻害するアプタマーです。大阪医科大学と共同研究しています。 ◇RBM-001(非開示) RBM-001は、サイトカインのひとつであるミドカインを阻害するアプタマーです。動物試験では、自己免疫性脳脊髄炎や神経芽腫の増殖に対する抑制作用が確認されています。大塚製薬に導出されていますが対象疾患は非開示です。 ◇RBM-006(肺線維症) 「特発性肺線維症(IPF)」は進行すると肺の繊維化が起こります。RBM-006は、肺線維症で亢進することがみられるオートタキシンという合成酵素を阻害するアプタマーです。 これら以外に、RBM-002(血小板減少症)、RBM-005(敗血症)、RBM-008(糖尿病性網膜症)、RBM-009(重症喘息)なども研究・開発中です。 現時点において、リボミック社はRBM-007(加齢黄斑変性症、軟骨無形成症)およびRBM-003(心不全)を重点課題としています。 また、科学技術振興機構(JST)の「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」の公募に、早稲田大学との共同研究として「人工知能技術を用いた革新的アプタマー創薬システムの開発」が採択されています。 加齢黄斑変性症は欧米では成人の失明原因の第1位、日本でも人口の高齢化と生活の欧米化により近年著しく増加していて失明原因第4位です。将来的には日本における失明原因の第1位になるといわれています。 失明という転帰になることない加齢黄斑変性症の治療薬として上市されることが待たれるところではないでしょうか。   リボミック社について ○売上高や資産状況 総資産額29億7700万、自己資本18億4300万円2、自己資本比率61.9%。2017年12月期の売上高は6億4千万円、経常利益は▲7億5100万円、今年度の予想売上高は5億円、経常利益▲8億5700万円です。時価総額は66億3400万円です。 ※今年度の売上高減少と経常利益増加はRBM-007を積極的進めているためです。 ○ビジネスモデル リボミック社独自の創薬技術「RiboARTシステム」を活用して大学や研究機関と共同研究をおこない、創薬事業においては自社創薬もしくは製薬会社との共同研究をおこなっています。自社で臨床試験を実施してPOC(Proof Continue Reading ->