アドラー心理学 過去と他人は変えられないけど未来と自分は変えられる

突然ですが、心理学の3大巨頭といわれれば、誰だかご存じですか。

夢や無意識の解析でよく知られたフロイト。

個人の無意識では説明できない、民族や人類の「集合的無意識」に着目したユング。


フロイト、ユングの名前まではでてきても次の名前はなかなか挙がらないかもしれません。

今回の記事では、3人目のアドラーについて取り上げてみます。

心理学の三巨頭の1人・・・アドラー

ジークムント・フロイト  
私たちが、隠し持つといわれる「無意識」に着目した「精神分析」の創始者。

カール・グスタフ・ユング
「分析心理学」を提唱。個人の無意識では説明できない、民族や人類の「集合的無意識」に着目した。

アルフレッド・アドラー
人間の隠し持つ「目的」を重視した、「個人心理学(Individual Psychology)」の創始者。
日本では「アドラー心理学」と呼ばれている。


まずは、アドラー先生のお写真からです。

アルフレッド・アドラーphoto by wikimedia


頭が良さそうで、なんとも説得力のありそうな顔をしていますね。

次は、アドラー心理学とはどういったものか、についてみていきます。


アドラー心理学は、個人心理学と呼ばれていますが、なぜそう呼ばれているのでしょうか。

「個人という存在は、それ以上に分割できない。個人という存在全体が、目的に向かって行動している」という考え方です。


なかなか分かりづらいかもしれませんが、まずはそういったものであると、頭のなかでボンヤリとイメージしてみてください。

具体的な話しに少しうつってみましょう。

アドラー心理学は勇気の心理学


アドラー心理学の大きな特徴をいくつかあげてみます。心に刺さることがあるかもしれません。

・私たちは変われないのではなく、変わらないという決心を下しているだけである。

・すべての悩みは対人関係の悩みである。どんな悩みにもどこかで他者が介在する。

・自分は他人の期待を満たすため、他人も自分の期待を満たすために生きているわけではない。

人生におけるあらゆる失敗の原因は、自分のことしか考えていないことにある。


フロイトは、「原因」を重視しましたが、アドラーは、「目的」を重視しました。フロイトとは、対極をなす考え方です。


過去に、どのようなことがあっても、これからどう生きていくかとは関係なく「変わろうとする勇気が足りない」とアドラーは主張しました。

そういったところから、アドラー心理学は、「勇気の心理学」ともいわれています。

アドラーは、「過去のトラウマ」を否定します。

このように聞くと乱暴に聞こえますよね。アドラーは、何をいいたかったのでしょうか。

アドラー心理学は、大きく分けて5つの考え方があります。一つずつみていきます。

アドラー心理学の特徴-目的論

人の行動には必ずなんらかの目的がある。


問題がおきた場合に、フロイトは問題となる原因を取り除くことで解決しようとしましたが、アドラーは、問題とは「なんらかの目的を果たすために行なわれた結果」と考えました。

写真はイメージです。photo by patakusoya


「わたしは、子供の頃から内気だったから、いまでも人前で話すとあがってしまう」という悩みはいったいどうやって、解釈できるでしょうか。


アドラー心理学では、この悩みを子供の頃にあった原因を持ち出して、「人前で失敗したら恥ずかしいという目的に向けた行動を果たした結果である」と解釈します。

いいかえると、

内気な性格は、人前で失敗しないようにするための結果であるという考え方です。


問題を解決するには、「どうしてそうなるのか」ではなく、「どうやったらそうなるのか」という進む方向を手がかりにして、問いかけていくことであらたな目的を見出しています。

それでは、いったいどうしたら、この悩みは解決できるのでしょうか。


このケースの場合には、「どんな目的のためにこの行動をしているのか」「どうやったら、人前で失敗しないのか」という部分に眼をむけて、目的に向けた行動の変化をうながします。

アドラー心理学の特徴-課題の分離

自分の課題と相手の課題を切り分けて考える。


あなたの友人が、仕事のことで何かあって機嫌が悪く、あなたに愚痴をこぼしてきたらどうしますか。「聞かないとおさまらない」、「聞かないと悪い」とか思ったことはありませんか。

話を聞いてあげて気が済むならと思うかもしれません。

写真はイメージです。photo by irasutoya


しかし、仕事のことでなにかあったことはあなたの友人の課題であり、あなたの課題ではないですよね。あなたが聞かなかったからどうなるかは、友人の問題です。


聞くことであなたは、相手の課題に踏み込むことになります。相手の課題を抱え込むことにもなりかねません。自分が相手の課題に関わってしまうと、相手の甘えを生んだり、相手が成長する機会を奪うことになるかもしれません。


相手の課題は、あなたが解決すべき課題ではなく、あなたの課題は相手が解決するものではありません。

わたしたちの人生は、それぞれで異なります。


アドラー心理学では、自分の人生の課題は自分だけのものと考えます。課題を分離することで、自分と他人がそれぞれ独立した存在で対等な関係だと考えます。

ただし、他人を切り捨てることではありませんので勘違いしないことが必要です。

アドラー心理学の特徴-劣等感

主観的に自分の理想に達していないと感じること。


世の中に完璧な人はいると思いますか。

誰しもが、なにかしらの形の劣等感を抱いていると思いませんか。

劣等感は、自分と他人を比べることから生まれます。他人が、自分の理想になっているとも言えるでしょう。


アドラー心理学では、理想があるからこそ劣等感があると考えます。

劣等感があるからこそ、劣等感を克服しようとするエネルギーもしくは刺激が存在し、劣等感は、誰にでもある自然なことであると考えます。


劣等感から目をそらすと、「劣等コンプレックス」におちいります。「自分は劣っているから、何をやってもダメなんだ」とあきらめている精神状態のことをいいます。

写真はイメージです。photo by patakuso


劣等コンプレックスの特徴は、「攻撃、嫉妬」、「自慢」、「不幸のアピール」で、コンプレックスゆえの、赤面恐怖症や引きこもりなどになる場合もあります。

コンプレックスを原因にして、やるべきことから逃げようとすることから発生しています。目的論にも通じるはなしですね。


アドラーは、劣等感について「自分の不完全さを認める勇気こそが大切だ」と述べています。

劣等感を解決するには、不完全な自分を認め、それを行動につなげます。いきなり100点を目指すのではなく、50点や60点でも構わない。


とにかく、前を向いて行動することが重要だとしています。

アドラー心理学の特徴-共同体感覚

自分が共同体の一部として感じること。


共同体は家族、学校、会社、地域、国家などのことで、自分が共同体の一部として、共同体の中で生きている感覚を認識することです。

アドラー心理学では、共同体感覚をもつために必要なことして3つのことをあげています。

○他者信頼-ほかの人をいっさいの条件をつけずに無条件で受け入れること。

自分が不完全であることを受け入れ、ほかの人も同じように不完全であること認識して、自分を含めたすべての人が不完全だからこそ前に進むことができるんだ、と対等に他人を受け入れることです。

○他者貢献-ほかの人のために役に立ってみる。「自分が誰かの役に立っている」ということを感じること。

共同体の中で、最大の不幸はなんでしょうか。自分が、みんなから必要とされてないと感じてしまう孤立感です。自分がみんなに必要とされていると感じることができれば、大きな幸せにつながりますよね。

どうすればいいのでしょう。


簡単にいうと、他人から「ありがとう」といわれることをするだけです。ただし、見返りを求めていけません。


○自己受容-ありのままの自分を受け入れる。受け入れる勇気を持つ。

自己受容は他者信頼と他者貢献と密接に関係します。

誰かのやくに立っていると感じることで自分に自信が持て、自分の価値を実感でき、自分の居場所を感じ、ありのままの自分を受け入れることができるようなります。

写真はイメージです。photo by pixaboy


他人を信頼して、お互いに対等な関係をもち、敬意を払い合うことで人間関係が好転し、劣等感などといったネガティブな感覚も希薄になっていくと考えます。

ここまで長くなってしまいましたが、お付きあい、ありがとうございます。次が、最後の項目です。

アドラー心理学の特徴-ライフスタイル

その人の行動のくせ、考え方、人生観などのこと。


あなたは、自分の性格を簡単に変えられると思いますか。

「性格はそう簡単に変わらないから・・・」とか聞きませんか。

それでは、自分のライフスタイルを変えてみる、と考えるのはどうでしょうか。「ライフスタイル」を変えてみたという話を聞くことがありますよね。


アドラー心理学では、「性格」は「ライフスタイル」としてとらえます。


性格は、「目的論」と対極にある「原因論」の考え方としています。

「ひとりひとりに性格は存在しない。違うのはライフスタイルである」

として、ライフスタイルは幼いころから自分自身でつくりあげてきたもので、今からでも変えることができると考えます。

たとえば、「○○○な性格だから△△△できない」と考えてしまうのなら、○○○は作り上げてきたライフスタイルのことです。

○○○は変えられると考え、△△△するにはどうしたらいいだろうと考えてみることが、ライフスタイルを変えることにつながっていきます。

アドラー心理学のまとめ


アドラー心理学を簡単に整理してみましょう。

写真はイメージです。photo by pixaboy
自分で変えられないのは「過去と他人」。人を変えることはできない。

しかし、自分で、「未来と自分」は変えることができる。いままでなにがあっても、どのような立場にあったとしても関係はない。だからこそ、大事なのは「いま、ここ」になる。

「いま、ここ」にいる自分が、行動し始める勇気を持ち、行動をすることが重要なことである。勇気をもつことや行動することとは5つの考え方を実行するということになります。この5つの考え方は関連を持ってつながっている。


アドラーの心理学はポジティブな心理学ともいえます。自己啓発によく用いられることがあります。

しかし、もともと前向きな考え方をする人でなければ、なかなか、難しい気がしますよね。そのような方は、目的論と課題の分離から少しずつ入るのがよいといわれています。

また、心の状態が不安定な方はかえって悪い方向に進むかもしれません。まずは、自分のことを受け入れてみることをするのがいいと考えられています。

心理学にはいろいろな考え方があります。

どの心理学が優れているとはいうことはできません。今回はアドラー心理学を紹介してきましたがいかがだったでしょうか。わたしたちの生活の中に活かせるところがあるかもしれませんね。

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