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医療は日々進歩しており、手術による合併症により命を落とすことは少なくなってきました。しかし、いまだ完全には防ぎきれず、少しでも合併症を減そうと研究が行われています。
心臓手術のリスクと管理
世の中には様々な外科手術がありますが、その中で心臓の手術は高度な技術や知識が必要になると言われています。
私たちの意思とは関係なく心臓は常に動いており、全身に血液を送り出す大切な役割をしています。そのため、心臓に何らかの異常を生じた場合、健康な生活を送ることは難しくなります。心疾患はいくつかありますが、中には外科手術が必要となる疾患も存在します。
医療の進歩により手術のリスクは低くなり、術後は問題なく過ごされる方もたくさんいらっしゃいます。しかし、中には感染症や心不全などの術後合併症から命を落とされる方がいるのも事実です。
術後は循環動態が変化しやすく、急に心臓の働きが弱まることがあります。術後の心不全は、手術中の心停止や元々の疾患による心機能低下などさまざまなことが原因となり起こると言われています。
術後の心不全を防ぐため、強心薬や血管拡張薬など薬を用いて心機能の回復を促す場合があり、使われる薬は患者さんの状態などを考慮して決められます。
レボシメンダンとは
日本では承認されていませんが、最近レボシメンダンという薬が注目されています。
レボシメンダンはヨーロッパで主に使用される薬で、Ca2+増感作用を有する血管拡張性強心薬です。心筋酸素消費を増加させないことから心不全の予後に有用なのではと期待されていました。小規模試験のメタ解析では、心臓手術を行う患者さんにレボシメンダンを投与すると、他の強心薬に比べ生存率が高くなるという報告もされていました。
しかし、2017年5月に発表された論文「Levosimendan for Hemodynamic Support after Cardiac Surgery」では心臓手術後にレボシメンダンを投与しても生存率が改善しないことを報告しています。
心臓手術後に周術期循環補助を必要とした患者さんを対象に、標準治療に低用量のレボシメンダンを追加する群とプラセボを追加する群に分け、最長48時間または集中治療室退出まで投与を行っています。
その結果、30日死亡率みるとレボシメンダン投与群とプラセボ群では有意な差はみられませんでした。また、人工呼吸装着時間、集中治療室在室時間、入院期間、いずれにおいても有意な差はみられませんでした。低血圧、不整脈の発生率でも有意差はありませんでした。
このことから、心臓手術後に周術期循環補助を必要とする患者さんに対して、低用量のレボシメンダンを追加しても有効とはならないことが示唆されました。
研究が進むことにより、効果的な治療が誕生し、術後合併症により命をおとすことが少なくなるのが期待されます。
参照:NEJM
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