もし、銃で撃たれたらどうなるの? 貫通銃創と盲管銃創

銃社会といわれるアメリカ、銃規制が厳しい日本では

アメリカは銃社会といわれていますよね。年間で3万人以上が銃による犯罪や自殺などによって命を落としています。単純計算しても1日100人近くに及びます。

日本では銃規制が厳しいこともあり、年間10人前後の方が銃によって亡くなられています。

社会が国際化しているということで、日本人が海外で銃による犯罪に巻き込まれるケースも聞くことがありますよね。

銃で撃たれて死亡したというニュースを聞いて疑問に感じたことはありませんか。

「銃に撃たれて簡単に死ぬの?」、「頭や心臓など急所を撃たれなければ大丈夫なの?」とか思ったことはないでしょうか。

写真はイメージです。photo by pixaboy


最初に「銃で撃たれるとは」どのようなことかみていきましょう。

銃で撃たれるとどうなるの


銃で撃たれるとどうなるのでしょうか。

撃たれることによって生じた傷を一般的には「銃創」、医学的には「射創」といいます。銃弾がからだに入った傷を「射入創」、体内を貫通した場合にできた傷を「射出創」といいます。

たとえば、警察などで使用されるのは38口径(直径約9.6ミリ)の銃の場合には、射入創は銃弾とほぼ同じ大きさの1センチ程度です。

射出創がある場合にはそれよりも大きくなります。なぜ、大きくなるのでしょう。

弾頭が硬質の金属でできていればそのようなことはありません。だいたいはからだの中をそのままの形で貫通します。これを「貫通銃創」といいます。


しかし、一般的な銃弾の頭はやや柔らかい金属できています。からだにあたると銃弾が頭から押しつぶされ変形することで、傷は大きくなり体内の広い範囲に影響を及ぼします。

このために銃弾が貫通せずにからだの中に留まることが多く見られます。これを「盲管銃創」といいます。

9.6ミリの弾丸の時速は1450キロメートルです。その衝撃をからだが受け止めるわけです。弾丸が命中していない部分もダメージを受けます。

弾丸自体はからだの中を回転しながら引き裂くように進んでいきます。骨などにぶつかると弾道が曲がる場合があり、思わぬ方向に弾丸が進むことがあります。


狩猟などで使われる散弾銃では、素早く動く獲物にたいして確実に被弾させるために広範囲に銃弾が飛び散ります。散弾銃を被弾した場合には多数の射入創ができます。

おもに皮下や筋肉組織まで達するものがほとんどで貫通することはまれです。

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銃による死因は失血死が多い


アメリカのレポートでは銃弾が「脳や心臓」といった即座に生死にかかわる部分に命中せずに病院で治療を受けた場合の生存率は80%以上、脳や心臓に被弾した場合の生存率は9%とされています。

ただし、脳や心臓以外にも損傷を受けると致命的な臓器もあります。

手や足など臓器に関係しない部分なら大丈夫ということはなく、手や足の大動脈に命中した場合(体内の大動脈も同じです)、失血死する場合があります。

一般的に銃撃を受けたことによる死因の多くは失血死です。

そのために、銃で撃たれた場合に、最初にやることは止血が最優先とされています。また、胸部の場合には緊張性気胸や肺の虚脱が起きる可能性があるので銃創をテープなどで密封します。

ところで、「よし、弾が抜けているから大丈夫だ」、「からだの中に弾が残っていないから大丈夫」などのセリフを映画やドラマで聞いたことはありませんか。貫通銃創は盲管銃創より危なくないということでしょうか。

盲管銃創って危ないの? 銃創の治療は


使用された武器、弾丸の種類、被弾した場所、出血量によりますが、貫通銃創も盲管銃創も同じです。ただし、貫通銃創は創傷が最小限で済む可能性があります。

盲管銃創の場合には体内での損傷が一般的に大きく、骨、筋肉、肝臓など密度の高い部位ほど損傷が大きくなります。

銃創の治療は通常の外科治療は同じで傷口の洗浄、血管や神経の破損箇所の処理、臓器損傷の修復、化膿や細菌性の感染症を防ぐ為の抗生物質や破傷風などのワクチンの投与などを行います。

くわえて、盲管銃創の場合には弾丸の摘出を行います。弾丸を摘出する必要はなんでしょうか。

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盲管銃創は弾丸を取り出す必要は?


盲管銃創では弾丸の摘出を行うのは、弾丸の材質である鉛やアルミニウムには表面にきわめて小さな穴が開いていて雑菌がつきやすく、創傷部が汚染されて感染症を引き起こす場合があるからです。

場合によって敗血症になることもあります。

臓器損傷、神経障害、制御不可能な出血などでも弾丸の摘出が必要になります。なお、汚染による感染症を防ぐために表面を銅でコートした弾丸もあります。

弾丸の摘出が見送られる場合もあります。

摘出によってからだが大きなダメージを受ける可能性がある場合、弾丸が摘出困難な場所にある場合です。散弾銃も盲管銃創になりますが、弾丸の数が多くて摘出しきれないことがままあります。


弾丸に使用されている鉛によって鉛中毒を引き起こすことも知られています。

鉛中毒の症状は「疲労感、倦怠感、食欲不振、悪心、便秘、下痢、頭痛、不眠、末梢神経障害、腎尿細管障害」などです。血中の鉛濃度で判断します。

鉛中毒を起こしやすいのは、弾丸が関節の骨と骨の間にある空間である関節腔(滑膜腔)や感染巣にある場合です。とくに関節腔内の滑液は鉛を溶かしやすいことが知られています。

鉛中毒発症時期は受傷後2日から40年までと長期間におよびます。

皮下や筋肉などの軟部組織に留まっている弾丸は表面が酸化鉛の被膜で被われて、周囲に肉芽から線維性瘢痕組織へと半跏して弾丸を取り囲み、鉛中毒を引き起こしにくいといわれています。


からだの中に弾丸が残っているからといって、必ずしも鉛中毒を起こすわけではありません。また、鉛中毒によって死亡するような状態になることは珍しいとされています。


からだの中に弾丸を残したまま寿命をまっとうする人は少なくありません。多くみられるのは戦争や紛争関連の負傷や狩猟中の事故で散弾銃の銃弾がからだの中に残ってしまうことです。

不幸な症例では脊椎に弾丸がめり込んで摘出ができずに半身不随になってしたっま症例もあります。

非常に珍しい症例では心臓を包んでいる心膜に弾丸がささり、摘出すると大出血を起こして死亡するといわれ、弾丸を摘出できないまま62年間のあいだ生存し続けた症例も報告されています。

写真はイメージです。photo by irasutoya


わたしたち日本人にとって普通に生活している限り、銃は身近な存在ではありません。

銃について知らない方がほとんどでしょう。海外で観光やビジネスで渡航される方も多くなりましたが、銃の心配をしないで生活が送れることが一番ですね。

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