児童養護施設に入所している子どもたちの医療

日本には児童養護施設と称する施設が602ヶ所あり、2歳から18歳まで約3万人の子供たちが収容されています。この時代、入所理由で一番多いのは親や保護者からの虐待です。直接的な暴力だけでなく、育児放棄、育児怠慢、いわゆるネグレクトも多くあります。きちんとした健康ケアを受けさせないのも立派な虐待となります。

児童養護施設の子どもたちはどんな暮らしをしているのだろう? ちゃんと健康のケアはされているのだろうか? そうお考えになる方もいるかと思います。児童養護施設の子どもたちの健康ケアは基本的に一般家庭と同じです。


写真はイメージです。 photo by marines.mil


子どもたちは施設で暮らしてそこから学校に通いますから、学校の健診を受けて必要とあれば医療施設に通います。歯科と眼科は多いです。もちろん法令で定められた予防接種なども受けます。インフルエンザの予防接種も受けます。

熱を出すとか病気になれば、近隣の医療施設に一緒にいきます。ただそれをするのは一般家庭であれば親ですが、児童養護施設では当直の職員が行います。体調が悪ければ普通の食事でなくうどんやお粥なども調理担当や職員が作って出したりします。児童養護施設はなるべく家庭に近いケアを目指しています。

一般家庭と比較してどちらかと言うと頻繁に医者に連れて行きます。親であれば自分の子どもですから責任問題にはなりにくいですが、施設の職員は仕事として子供のケアをしているわけですので、勝手な判断で「大丈夫だろう。」では万が一の場合に責任も取れません。医師の判断を仰ぐのが基本になります。

発熱で言うと施設ごとに決まりはあると思いますが、概ね38度を超えたら医者に連れて行くと思います。その他異常が見受けられればまずは医者に、ですね。

それと児童養護施設の子どもたちの医療費は負担ゼロとなっています。児童相談所から受診券というものが交付されていて医療費は公的に賄われていますので、適当に市販薬を飲んで済ますよりは医者に行ったほうが安上がりという側面もあります。受診券は保険診療すべてに適用されますので、医療施設は担当職員なり施設が適宜選択しています。


写真はイメージです。 photo by marines.mil


ということで、ある程度長く施設に暮らしているのであれば職員も子どもの体調面を把握していますので、不当な扱いを受けることはまずないのですが、難しいのは新規入所の子どもです。

親元にいてけっしてよろしいとは言えない環境にあった子ども達が、健康面でもどのような扱いを受けてきたのか、それがよくわからないことが多いのです。例えば母子手帳が残っていないとかですとちゃんと予防接種を受けているのかどうかもわかりません。今までどんな病気をしていたかもわからないケースが多いのです。

もちろん児童養護施設に来る前に児童相談所では親からできるだけ聞き出しますが完全ではありません。そもそも親から聞き取れないケースも多くあります。実際施設で暮らしだして様々な体調面の問題が知られることも多々あります。

ですから新規入所の子どもに対しては施設職員は慎重な対応をする必要があります。万が一にも知らない病気があって急な発作が起きたなどとなったら大ごとです。基本的には子どもの様子をよく観察することから始まります。妙な癖はないかとか、姿勢はどうかとか、運動面でおかしな動きはないかとか。目とか耳も怖いです。ちゃんと両目両耳見えているのか聞こえているのか、これは幼児であれば絵本の読み聞かせなどでさりげなく判断をしていきます。

子どもを注意深く見る。まともな親であれば当たり前のことですが、実は親元にいた時に親が気づかずに手遅れになって失明してしまったという例も実際あるのです。もっと早い段階で発見できていたらなんとかなっていたのではないか? そういう実例に接する度に施設の職員は暗澹たる気持ちになります。

大切にされてこなかった子どもたち。負を背負ってマイナスからスタートの子どもたちに幸多かれと願います。少なくとも児童養護施設では後悔することのないような早め早めの医療ケアを目指しています。


写真はイメージです。 photo by pixabay


以上、児童養護施設での医療ケア全般について触れてきました。それ以外にアレルギーの問題も多くあります。カップ麵ばかり食べていた子が施設でまともな食事を取り出したとたんにアレルギーの症状が出たりすることもあります。

また児童養護施設に入所する子どもたちの多くは身体面だけでなく精神面でのケアも必要としています。大切にされずに育った子どもたちの心の傷はとても深いものがあります。これらの点についても機会があれば触れて行きたいと思います。

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