喘息とCOPDの合併症-ACOってなに

ACO-喘息とCOPDの合併症

息苦しさ、咳、痰などの似たような症状が共通する「喘息」と「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」。しかし、喘息とCOPDでは発生原因、症状の現れ方、治療方法、予後など異なる点がいろいろとあります。

似てるようで異なる喘息とCOPDが合併してしまう「ACO(asthma COPD overlap)-喘息COPDオーバーラップ」と呼ばれる病態があります。

ACOはおもに40歳代以降からみられ、とくに高齢者に多くみられます。COPDの患者さんでACOの方は20%~50%、喘息の患者さんの中でCOPDの方は20%~30%と報告されています。

写真はイメージです。photo by irasutoya


最初に喘息とCOPDについてみていきましょう。

喘息とCOPDとは


喘息とCOPDは広く知られている病気ではないでしょうか。簡単に整理してみましょう。

喘息


喘息は花粉、ダニ、ハウスダストなどによるアレルギー性のものと運動、風邪などの感染症、大気汚染など非アレルギー性のものがあります。気管支が可逆的(元に戻る)に狭窄する気道の慢性炎症性疾患です。

「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴、激しい咳が出る、呼吸が苦しくなるといった症状が現れます。年代に関係なく発症し気道の狭窄により命にかかわることもあります。

COPD


COPDは主に喫煙や職業上で有毒物質に長年にわたりさらさせることでゆっくりと進行していく疾患です。咳、痰、からだを動かしたときに息切れといった症状が現れます。

気道の閉塞や肺の肺胞という組織が破壊される肺気腫の状態になり治療で元に戻ることがありません。重度になると呼吸不全を引き起こします。

左が正常な肺、右がCOPDの肺photo by wikimedia

 

喘息とCOPDの特徴は


喘息とCOPDの特徴を簡単にまとめてみました。

 喘息COPD
発症年齢子供の時に発症することが比較的多いがどの年代にもみられる。40歳以上から。とくに高齢者に多い。
喫煙や有害物質の暴露必ずしもあるわけではない。ほとんどの場合にみられる。喫煙が多い。
呼吸器症状の現れ方一日の中や特定の期間内で症状の変化がある。夜間や早朝に悪化する。持続的な症状がみられる。特にからだを動かしたときに悪くなる。喘息のような変動はまれ。
症状の収まり方自然もしくは治療で症状が改善される。治療の有無にかかわらず慢性的にゆっくりと症状がすすむ。
胸部X線、胸部CT通常は問題ない。肺の過膨脹や特徴的な気腫病変など異常所見がみられる。
寛解もしくは治癒治療により期待ができる。場合によっては気道粘膜が肥厚化して元に戻らないことがある。治療を行えば進行を遅らせることができるが治癒は難しい。
合併症アレルギー性鼻炎を代表するアレルギー疾患など。心疾患、肺がん、骨粗しょう症など。


このような喘息の特徴とCOPDの特徴を両方持っているのがACOです。ACOについてもう少し詳しくみてみましょう。

ACOはどのような病気


ACOは喘息とCOPDが同時に発症するということではなく、たとえば喘息の方で長期間の喫煙歴があってCOPDを発症する場合やCOPDの方がなんらかのアレルギー感作を起こし喘息を発症するといったことがみられます。

喘息の患者さんは、気道過敏性の亢進(刺激によって容易に気管支が過敏に反応すること)や肺の発育が健常人より劣ることが報告されていて、COPDになる危険因子を持っています。

COPDの患者さんは肺気腫によって気管支が過敏に反応して咳だけの軽い喘息症状であっても気がつかずに経過して喘息が顕在化してくるなど喘息とCOPDはお互いに発症する危険因子が高いといわれています。

喘息とACOの両方の疾患の特徴を持っている患者の存在は目新しいことではなく以前より知られていましたが、同じような症状を示す喘息とCOPDからACOの診断は難しいといわれていました。

写真はイメージです。photo by pixaboy


喘息の治療とCOPDの治療は異なります。ACOの場合には喘息とCOPDの両方を考慮した治療が必要になります。喘息、COPD、ACOのそれぞれを区別して考える必要がありますよね。

このような中、2017年末に日本呼吸器学会は「喘息とCOPDのオーバーラップ診断と治療の手引き」の中でACOの診断手順を明らかにしました。

診断手順では喘息の特徴を4項目、COPDの特徴を3項目として喘息、COPD、ACOをそれぞれ診断できるように作られています。

特徴的なのは専門医でなくて使いやすいように特徴的な項目を絞り込んだことです。喘息では4項目中2項目、COPDでは3項目中1項目、ACOは両方の条件を満たすものとしています。

 診断項目
喘息1.変動制の発作

2.喘息の既往歴

3.呼気中の一酸化炭素濃度

4.アレルギー性鼻炎の有無、気道の可逆性、血液検査結果など

COPD1.喫煙歴など

2.胸部CTでの異常の有無

3.肺拡散機能検査結果

注:喘息と診断されるのは1から3のうち2項目もしくは1から3のうち1項目と4のいずれか2項目があてはまった場合です。


ACOを単独の喘息やCOPDと比較してみましょう。

・ACOは空気の通り道である気道や気管支が狭くなり息をうまく吐き出せなくなる気流閉塞が発作的かつ持続的に発生するためにQOLに大きな影響をもたらします。

・ACOは憎悪しやすさや重症化しやすさが2倍と高くて呼吸機能の低下が速いことも知られています。

診断手順が整理されたことで、より適切な治療を受けられるようになることが期待されます。

治療に使われる薬photo by pixaboy


喘息もCOPDも命に影響を及ぼす可能性がある病気です。とくに40歳以上の方で気になる症状があれば医療機関に早めに受診しましょう。

 

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