スペルミジン-老化を遅らせる不思議な物質?

[スペルミジン・・・寿命が延びる?]

アメリカの学術誌「キャンサーリサーチ」に発表された「スペルミジン」という物質が注目されていることを存知でしょうか。新しく発見された物質ではなく男性の精液(sperma)に多く含まれていることから「スペルミジン」と命名され古くから知られていたものです。

2017年の春にアメリカのテキサスA&M大学の研究チームがマウスの飲み水にスペルミジンを添加して常時摂取させるとマウスの寿命が25%も伸びたという実験結果を発表しました。中年期にあたるマウスに投与しても同様の効果がみられることを示し、老齢期のマウスでは心機能が改善されることも確認されています。

なにか、すごそうな話しですね。マウスの寿命はなぜ延びたのでしょうか。人間の寿命も延びるのでしょうか。まずはスペルミジンとはどのようなものかみてみましょう。

[スペルミジンってなにものなの]

スペルミジンとは「ポリアミン」と呼ばれる物質の仲間の1つです。わたしたちの体の中には20種程度のポリアミンが存在します。代表的なものとしてはスペルミン、スペルミジン、プトレスシンなどがあります。ポリアミンは私たちの体の中で合成されて作られます。

ポリアミンはすべての生物の細胞の中に存在していて細胞分裂や細胞を正常な状態に保つ働きをするなど重要な物質です。

写真はイメージです。 photo by irasutoya

ポリアミンは生まれた時から存在していて生後10日目以降から2週間で一番多くなります。からだの成熟にかかわっていると考えられています。加齢するにつれて体内のポリアミンは減少します。

ポリアミンに関する研究は数多く行われています。そのなかでスペルミジンについては酵母、ショウジョウバエ、線虫といった単純な生物で寿命を延ばすことが分かっていました。なぜ、スペルミジンが寿命を延ばすのでしょうか。その前にみなさんはオートファジーをご存知でしょうか。

[オートファジーはリサイクルシステム]

 オートファジーは一言でいうと細胞内のごみをリサイクルシステムで「自食作用」ともいわれます。細胞内の古くなった不要なたんぱく質や細胞内に進入してきた細菌などの有害物質を元にしてアミノ酸に分解して新しい栄養素として細胞内で再利用することです。この働きによって細胞をクリーンで新鮮な状態に保ち、細胞の寿命を延ばすことなどがわかっています。

オートファジーが十分に機能しなくなったらどうなるでしょうか。細胞に不要な物質などがたまることでいろいろな病気や老化などと関連するといわれています。

写真はイメージです。 photo by pixaboy

スペルミジンの話に戻りましょう。このオートファジーにスペルミジンが関係していると考えられています。

[マウスの寿命の延びたのはなぜ?]

マウスの寿命が延びた理由は「スペルミジンがオートファジーを活性化させる作用」があるのではないかと考えられています。オートファジーに遺伝的欠陥のあるマウスについてスペルミジン投与を行っても有益な影響は認められなかったことからも示唆されます。

加齢によってスペルミジンは減少していきますが、スペルミジンを与えられたマウスが寿命を延ばしたのはオートファジーが活性化して細胞の寿命を延ばした結果だと推察されています。老齢期のマウスで心機能の改善がされたことはオートファジーが心臓の老化までも遅らせたことがうかがえます。

スペルミジンの摂取が人間に効果をもたらすかの実地調査がパリ第五大学のグループによって行われています。イタリアのブルーニコという町に住む約800人に対する食事調査を行いスペルミジンの摂取量が多いほど心不全などの心血管疾患のリスクの低下や低い血圧との関連がみいだされています。

写真はイメージです。 photo by pixaboy

[スペルミジンに期待されることはなに]

スペルミジンは研究途上の物質ですが期待されていることをいくつかあげてみましょう。

認知症

スペルミジンの効果で脳細胞を若々しく保つことによって記憶力や学習力といった脳にとって重要な働き維持することがマウスを使った実験で確認されています。認知症の予防に役立つとも考えられています。

動脈硬化

加齢やコレステロールなどの影響で血管の炎症が続くと血管が固くなったり、狭くなったりして動脈硬化の原因になります。スペルミジンには血管の炎症の原因となるLFA-1の発生を抑制することがわかってきました。スペルミジンによって血管の炎症を抑え動脈硬化を防ぎ血管をしなやかにする効果から心疾患や脳疾患の予防も期待されています。

がん

細胞内部にゴミが増えて細胞が損傷したりすると細胞がコピーミスを起こす可能性が高くなり悪性腫瘍の発生するリスクが高まります。細胞内をクリーンに保っておければリスクが低下すると考えられています。そのためにはオートファジーの役割が重要になります。スペルミジンにはオートファジーを活性化させるといわれるMAP1Sといわれる物質を増加させること働きがあることがわかっています。

若々しさ

写真はイメージです。 photo by pixaboy

血管が健康に保たれることで血液が身体の隅々までいきわたります。新鮮な酸素が全身にいきわたり新陳代謝が活発になって若々しさを保つことにもつながると考えられています。高齢でも元気な方の大便を調べるとスペルミジンが通常の2倍も含まれることが知られています。

スペルミジンの可能性は期待されるものがありそうですね。しかし、スペルミジンはいままで触れてきたとおりに加齢とともに減少します。

[加齢とともに減少するスペルミジンですが・・・]

わたしたちのからだの中でスペルミジンは酵素の力で作られています。加齢とともにスペルミジンを合成する酵素が活性を失うことがわかっています。活性を失うスピードには個人差がありますが失った活性は元に戻ることはありません。

低下していくスペルミジンを食物として取った場合にはスペルミジンは腸管内で分解されずに吸収され細胞に取り込まれることがわかっています。さらに、一部の腸内細菌がポリアミンを合成することもわかってきています。

スペルミジンを食物としてとる場合に多く含まれるものとしては「納豆や味噌など大豆製品、ナッツなど豆類、きのこ類、ナチュラルチーズ、ヨーグルト、しば漬けやぬか漬け、ブロッコリーやピーマンなど野菜類、柑橘系のフルーツ、一部の貝類や魚介類」などです。

加齢とともに不足するスペルミジンを食べ物から補うことが可能であるということになりますね。

写真はイメージです。 photo by pixaboy

スペルミジンについては多くの未知な部分があり現時点では「なんらかの効果がありそうだ」といったところでしょう。スペルミジンについては現在も研究はすすめられています。さらなる研究成果の発表が待たれています。

わたしたちは「バランスのよい食生活、規則正しい生活、適度な運動」をとることがまずは大事なことではないでしょうか。そのうえでスペルミジンが私たちに恩恵をもたらしてくれることがはっきりとわかれば素敵なことですね。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。