発展途上国においてのロタウィルスワクチンの有効性

ロタウィルス感染症は子供におおくみられる感染症で、急性胃腸炎を引き起こす主要な病原体です。

先進国ではワクチンの接種や適切な治療などにより命に関わることは稀ですが、発展途上国では十分な治療が施されず命を落としてしまう子が少なくありません。発展途上国においてのロタウィルス感染症は大きな問題となっています。

ロタウイルス感染症とは

ロタウィルス感染性胃腸炎は、免疫力の低い乳幼児によくみられます。ほとんどの子供が5歳までにかかると言われています。

ロタウィルスにより汚染された飲食物を口にすることや、吐しゃ物や便に含まれるウィルスを吸い込んでしまうことが原因となり感染すると考えられています。

感染力がとても強いため、衛生環境が良い先進国であっても感染を防ぐことは難しいとされています。

ロタウイルスの症状と治療

ロタウィルスが体内に入ると潜伏期間1~3日を経て激しい下痢や嘔吐、高熱が発現します。特徴として、多くの場合白い便がみられます。

ロタウィルスは腸に感染し水の吸収を阻害することから大量の水様便を引き起こすと言われています。そのため脱水症になりやすく、注意が必要です。

治療は症状に応じて整腸剤や補液が用いられますが、現在のところウィルスに直接働く薬は存在しません。

日本では、予防としてロタウィルスワクチンが使用されており(任意接種)、重症化の抑制などに効果をあらわしています。

前述した通り、医療の進んでいる日本ではロタウィルス感染により命を落とすことはめったにありません。

しかし、発展途上国に目を向けると話は違います。世界ではロタウィルス感染による5歳以下の小児の死亡数が50万人以上にのぼると報告されており、その80%以上は発展途上国で起きていると言われています。

そのため、低コストで効果のある対策が必要となっています。

ロタウイルスワクチン接種の有効性

2017年3月に発表された論文「Efficacy of a Low-Cost, Heat-Stable Oral Rotavirus Vaccine in Niger」では、発展途上国での低コストの耐熱性経口ロタウィルスワクチン接種の有効性について報告しています。

この解析はニジェール(西アフリカに位置する国家)で行われており、6週令・10週令・14週令の3回ワクチン接種を受けた群とプラセボ投与群に分けてワクチンの有効性を解析しています。

その結果、プラセボ投与群では重症のロタウィルス感染が87例みられたのに対し、ワクチン投与群では31例と66.7%のワクチン有効性がみられました。ワクチン投与群で27例、プラセボ群で22例の死亡がみられましたが、有害事象のリスクに有意差はありませんでした。

このことから、今回使用された低コストの耐熱性経口ロタウィルスワクチンは重症ロタウィルス感染の減少に対して有効な手段となることが示唆されました。

 

ロタウィルス感染により命を落とす子供を一人でも減らすためにコストのかからない効果的な予防・治療が求められています。今後、ワクチンの普及によりロタウィルス感染で亡くなる子供が少なくなることが期待されます。

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