米FDAがコデインおよびトラマドール含有製剤の小児への使用を制限


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成人と小児では身体の作りが違うため、薬の有効性や副作用のリスクが異なる場合があります。現在、数多くの薬が発売されていますが、その中には成人は服用できても、小児の服用は避けた方がいいとされている薬がいくつもあります。

小児用の薬については研究も進み、安全性の高い薬が発売されていますが、中には服用時注意しなければいけない薬も存在します。2017年4月、医薬品の規制を行うFDA(アメリカ食品医薬品局)はコデインおよびトラマドール含有製剤の小児への使用を避けるよう、添付文書の改訂(原文英語)を求めました。

FDAは2013年にも扁桃摘出術またはアデノイド切除術の施行、あるいは両方を施行した小児に対し、術後疼痛の軽減を目的としたコデインおよびトラマドールの使用を制限する警告の追記を行っています。

コデイン製剤は強い鎮咳効果を表す

コデイン含有製剤は鎮咳、鎮痛薬として用いられています。日本では鎮痛より鎮咳作用を期待して用いることが多い製剤です。

コデイン製剤は中枢に作用する麻薬性鎮咳薬です。異物が喉に侵入すると、その刺激が脳に伝わり、咳中枢に作用して咳を引き起こしますが、コデインは咳中枢を抑制することで強い鎮咳効果をあらわします。また、コデインはオピオイド受容体に作用し、痛みのシグナルが伝わるのを抑える作用もあり鎮痛効果も発揮します。ちなみに鎮咳薬として使用されるコデインは濃度がとても低く、依存性などの心配はほとんどないとされています。

日本では、咳症状が重度のときにコデイン製剤が短期で処方されることがあります。

また、医療用医薬品だけではなくコデイン含有OTC薬も発売されており、ドラッグストアでも目にすることが比較的多い成分です。

トラマドールは非麻薬性の鎮痛剤

トラマドールは鎮痛薬として使用される薬です。日本では小児への投与は承認されていません。トラマドールは非麻薬性の鎮痛剤ですが、コデインと同様オピオイド受容体に作用することで鎮痛効果をあらわす薬です。

OTC薬はありませんが、医療用医薬品として単剤または合剤として発売されています。

FDAは重篤な副作用を認めたと発表

今回FDAは、小児がコデイン、トラマドールを服用した場合、呼吸抑制や呼吸困難、死亡などの重篤な副作用が発生しやすい傾向にあるとして、この2成分の12歳未満の服用を禁忌とするなどの添付文書改訂を求める安全性情報を発表しました。

FDAが行った安全性評価によると、12歳未満の小児がコデインまたはトラマドール含有製剤を服用したところ、重篤な呼吸障害が数例みられました。この2成分はCYP2D6と呼ばれる酵素により代謝され効果を発揮しますが、この酵素の働きには個人差があることが知られています。CYP2D6の活性が高いと有効成分の血中濃度が急速に上昇し、副作用が出やすくなることが報告されています。コデイン、トラマドール製剤服用時の小児にみられる副作用はCYP2D6活性が一因となっていると考えられています。

また、FDAの発表では、授乳婦が服用することにより授乳を通じて乳児に薬が移行し、呼吸器障害を起こすケースも報告されており、授乳婦の服用に対する警告をより一層強化することも挙げられています。

その他、12歳未満の小児だけではなく、12~18歳の肥満や閉塞性睡眠時無呼吸、肺疾患を有する場合にも重篤な呼吸器障害リスクが高まる可能性があるとして、警告の追記をもとめています。

 

今回の報告をうけて、日本でも小児用鎮咳薬について見直されることが予想されます。服用する側も情報を把握し、薬を選択していくことが大切です。

参照:FDA

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