イスラム教にもとづいて食べるものを決めるハラール制度と医療用品 


photo by golo

最近、テレビでもよく耳にするようになった「ハラール」と言う言葉。

日本では「ハラル」という言い方で言われることもあり、スーパーの輸入食材コーナーに行ったとき、「ハラル認証」という印がついた商品を見たことがある人もいるのではないでしょうか。

今回は、ハラールと医療の関係について紹介します。

ハラールとは何か

ハラールとは、イスラム法で許された項目をいい、具体的にはイスラム法上で食べることが許されている食材や料理のことをいいます。

イスラム法では様々な戒律があり、食材においては豚とアルコールは絶対に口にすることができません。

その他の食材に関しても、イスラム法におけるルールに則り屠殺された肉は口にすることができますが、口にしてはならない調味料などに注意しながら調理する必要があります。

豚は食材としてだけでなく、豚由来の酵素やタンパク質も禁忌対象になっているため、医療にもハラールの適用範囲が及ぶことがあります。

ハラールと医薬品

イスラム法では、豚由来の成分が入った医薬品は使うことができません。

実際、豚由来のゼラチンが使用されているワクチンに対し抵抗を感じているイスラム教徒が多く、「ワクチンに対する詳細情報が必要だ」という考え方からイスラム教徒が多く住む地域ではワクチンの接種率が低下してきています。

こういった背景から、イスラム教徒の多く住む一部地域では感染症の集団感染の危険性が高まっていて、世界保健機関は「ゼラチンを使用したワクチンもハラールと認識されるべきであり、イスラム教徒は宗教的な理由でワクチン接種の拒否はできない」と主張しています。

日本においては、過去にゼラチン含有ワクチンを接種したことによるゼラチンアレルギーが発症したことから、現在のワクチンにはゼラチンが含有されていません。

ハラールの医療用品への浸透

イスラム教徒は世界に約16億人以上いると言われていて、医療現場においてもハラール認証医療用品の充実が求められています。

既にサウジアラビアの製薬会社は様々なハラールワクチンの開発を進めています。日本の製薬会社もハラール医療用品の生産を検討しているものの、まだまだ課題が山積しているのが実情です。

その大きな理由に、ハラール医療用品には製造するための国際的な基準が設けられていないことが挙げられます。

ハラール食品には明確な基準が設置されていますが、医療分野ではまだ設置されていません。食品の基準と医療分野での基準は同一にできないため、医療分野でも早急な基準の設置が求められています。

イスラム教徒の入院中の食事に関しても、口にできない食品を避けつつ、治療に効果的な食事を提供する必要があります。

国立国際医療研究センター診療運営管理部門栄養管理室長の河野公子氏は、入院受付時に記入する質問票に宗教上の配慮を尋ねる項目を設置し、「特別食では日本酒やみりんは使わないようにして、醤油や味噌といった調味料は、ハラル認証食品を用いてメニューを拡大した」と言っています。

ハラールの医療現場における基準が設置され、広く理解が浸透することが早急に求められています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました