MRSA感染 蜂巣炎に対してST合剤を併用することは有益か


写真は蜂巣炎です。 photo by John Campbell

蜂巣炎(蜂窩織炎)という疾患はあまり聞き馴染みのない方も多くいらっしゃると思いますが、救急外来を受診する皮膚疾患の中では最も多い割合を占めると言われています。重症化した場合、入院が必要となることもある軽視できない疾患です。

蜂巣炎とは 原因と治療

皮膚は表皮、真皮からなり、その下に皮下組織が存在します。通常、皮膚はバリアとして働き、外界から体内へ細菌などが侵入しないようにブロックしています。

しかし、湿疹や乾燥、傷などにより皮膚バリアが弱くなってしまうと、弱った部分から細菌が侵入し感染することがあります。真皮から皮下組織にかけて感染がみられる疾患を蜂巣炎と呼びます。

蜂巣炎は主に黄色ブドウ球菌とレンサ球菌が原因菌となります。

感染した皮膚は熱を持って赤く腫れ、痛みが伴う場合もあります。また、全身症状として発熱や倦怠感、関節痛などが出る場合もあります。蜂巣炎を放置すると細胞壊死が起きてしまうこともあるため、しっかりと治療することが必要です。

蜂巣炎の治療には原因菌に有効な抗菌薬の投与が行われます。主にβラクタム系の抗菌薬が使用されることが多く、その他メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感染が疑われる場合にはST合剤やテトラサイクリン系、クリンダマイシンなどが投与されることがあります。

服用期間は症状によって異なり、再発を防ぐためにも自己判断で中断せず医師の指示に従うことが大切です。

蜂巣炎とMRSA

近年、MRSAの増加がみられることから、救急外来を受診した蜂巣炎患者さんに対してMRSA感染を考慮にいれた薬物治療が必要となるか議論されています。

2017年5月に発表された論文「Effect of Cephalexin Plus Trimethoprim-Sulfamethoxazole vs Cephalexin Alone on Clinical Cure of Uncomplicated CellulitisA Randomized Clinical Trial」ではMRSAを標的とした抗菌薬の使用が蜂巣炎の治癒に与える影響について報告しています。

救急外来を受診した12歳以上の単純蜂巣炎患者さんを対象に、セファレキシン単独投与群とセファレキシンとST合剤を併用した群に分け、服用7日間の治癒率について解析しています。その結果、セファレキシン単独群とST合剤併用群での治癒率の有意な差はみられませんでした。また、再発率や有害事象についても2群で差はみられませんでした。

このことから、多くの蜂巣炎はMRSAを標的とした治療は必要としないことが示唆されました。しかし、ST合剤併用が有益となる可能性は残されており、今後もさらなる研究が期待されます。

参照:JAMA

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