「手術」は、患者さんにとって人生における、一大イベントです。もちろん、自身の身体へメスを入れることは、不安・恐怖でもあり、同時に、病院や医師への信頼が必要になってきます。
手術前の患者さんの発言の中で、最も多いのが「私はまな板の鯉。先生にお任せするしかないよ。」と言う発言です。医師を信頼する、患者さんの気持ちがよく分かります。きっと、病院や医師を信頼している気持ちは、全ての患者さんやそのご家族にあるのではないでしょうか。
写真はイメージです。 photo by flickr
しかし、その中で、驚くようなニュースもテレビや新聞で報道されている事実があります。「手術部位の誤認」「患者さんの取り違え」という医療事故です。「そんなことありえない」と、きっと驚く方のほうが多いニュースですが、実際に医療の現場で起きてしまっているのが現実です。
なぜそのような医療事故が起こるのか
患者さんの誤認の原因
・名前をフルネームで確認しなかった
・患者さん自身には名乗ってもらわなかった
・リストバンド(手術部位に装着する)の確認不足
・同姓同名、氏名・発音の類似
・同じ疾患を持つ患者さんがいた
・患者さんの前で、別の患者さんの指示が出た
・記録記入、転記ミス
・患者さんが難聴であり、無関係なことに対して「はい」と返事
・患者さん自身の思い込み、勘違いなどが挙げられています。
患者さん誤認の場面
・病棟から手術室への移送時の誤認
・手術室受付での申し送りの誤認
・各手術室への移送の際の誤認
・手術担当者交代の際の誤認などが挙げられています。
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手術部位誤認が起こり得る場面
・手術部位へのマーキングする際
・手術室受付での患者さん申し送りの際
・手術の体位をとる際
・執刀時などが挙げられています。
以上のことから、何も知らない間に起きている、医療者側の事故であることが分かります。患者さん自身の思い込みなども挙げられていますが、これも、医療者側が防げることなのです。
このような、起きてはならない事故を防止するため、WHO(世界保健機関)では、「WHO手術安全チェックリストの実施マニュアル」というものが作成されています。内容は・麻酔導入前・皮膚切開前・患者手術室退室前の段階で、患者本人であるか、手術部位、安全に行われるかなどが確認されるものになっています。
病院での対策
1、病棟看護師は、患者さんを手術室に送り出す前に、病院のルールに基づいて作成されているチェックリストに従って、(カルテ・承諾書・リストバンド)を用いて患者名と本人を照合し、左右含めた手術部位、術式を確認します。また、チェックリストに署名した看護師が、患者さんを手術室に移送します。
2、患者さん本人、手術部位の左右を確認する方法として、リストバンドを用います。
3、手術を受けるすべての患者さんに関し、手術前、部位にマーキングを行うことが必要です。また、患者さんが覚醒状態にあるときに行い、本人と一緒に確認することが望ましいとされています。
4、執刀医の責任下で、麻酔前・執刀前に執刀医・麻酔医・看護師がカルテなどを用いて、「患者氏名・手術部位・術式・感染症の有無・手術野に出ているガーゼの枚数」を確認する「タイムアウト」を施行必要があります。また、医師から指示があった器械やインプラント、そのメーカーもタイムアウト時に確認します。
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手術を受けられる際、疑問や不安があれば、事前に主治医や看護師に質問しましょう。そして、患者さん自身も、医療者と共に確認作業に加わりましょう。
現在、相次ぐ患者さんの誤認・手術部位の誤認事故を踏まえ、すべての患者さんが安心して手術に挑むため、二度とこのような事故が起こることのないよう、全ての医療機関では医療安全対策の強化が行われています。
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