パーキンソン病の新しい治療薬「デュオドーパ®配合経腸用液」

現在、日本では1000人に1人がパーキンソン病を患っていると言われています。50~60歳代に発症することが多く、60歳以上では100人に1人が罹患しています。高齢化が進む現代では、患者数がさらに増加することが予想されている難病です。


写真はイメージです。 photo by pixabay


パーキンソン病とは?

パーキンソン病は、神経変性疾患のひとつです。

原因はいまだ解明されていませんが、脳内の黒質と呼ばれる部分に存在するドパミン神経細胞が変性、減少することにより症状がでると考えられています。手足のふるえやこわばり、動作が緩慢になる、転びやすくなるなどの運動症状が主にみられ、その他、気分の落ち込みや意欲の低下、便秘、頻尿などの非運動症状が発現する場合もあります。

パーキンソン病の治療では、薬物療法が基本となります。主に、減少したドパミンを補うレボドパ(ドパミン前駆物質)と、消化管や血液中でのレボドパの分解を防ぐ、カルビドパなどの末梢性脱炭酸酵素阻害薬が含まれた製剤が用いられます。その他、ドパミン受容体刺激薬や抗コリン薬など数種類の薬剤が患者さんに合わせて用いられます。


パーキンソン病治療の難しさ

パーキンソン病は、病気が進行し治療期間が長くなると、さまざまな症状が発現し、治療が難しくなっていきます。

治療を開始した時には、薬の効きが良好で症状をコントロールできていても、治療期間が長くなるにしたがい、薬の効果が徐々に長続きしなくなり、頻回な薬の服用が必要となる状態(ウェアリングオフ)や、薬が効きすぎてしまい、身体が意図せずに動いてしまう状態(ジスキネジア)などの症状があらわれることがあります。

このような症状が発現する原因として、症状の進行により、シナプス間隙のドパミンの量の調整や再取り込みがうまく行われなくなることや、胃排出能低下により吸収部位である空腸にレボドパが到達するのが遅れ、血中レボドパ濃度の変動をきたすことが考えられています。


写真はイメージです。 photo by pixabay

パーキンソン治療薬の新たな投与方法

そこで、このような問題点を解決するために2016年9月に発売されたのが、「レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(商品名デュオドーパ®配合経腸用液)」です。

今までの薬は経口投与でしたが、経腸用液にすることにより、空腸での安定した薬の吸収が可能となり、血中濃度の変動を抑える効果が証明されています。既存の薬物療法で十分な効果が得られない患者さんが適応対象です。

本剤は専用のポンプとチューブを用い、胃瘻を介して、空腸に薬が持続投与される仕組みとなっています。患者さんに合った用量や投与速度を設定し、持続投与を行います。血中濃度が安定することにより、ウェアリングオフ症状の改善やジスキネジアの発現防止に効果がみられています。

一方で、胃瘻造設や常に機器を携帯しなければいけないなどの患者さんの負担増大も指摘されています。

高齢化により、今後もパーキンソン病患者さんが増加すると予想されています。病状の進行にともない、症状のコントロールも難しくなると言われるパーキンソン病ですが、今回、経腸用液が開発され、既存薬の欠点が克服されることが期待されています。今後も研究がすすみ、パーキンソン病患者さんがよりよい生活を送れるようになることが望まれます。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました