インフルエンザに対する新機序薬 承認申請へ

インフルエンザは、おもに冬季を中心に流行する急性の呼吸器感染症です。まずは、手洗いやうがい、予防接種など予防に努めることが大切ですが、もし発症した場合には、適切な治療が必要となります。


写真はイメージです。 photo by photo AC

インフルエンザと治療法

インフルエンザは、インフルエンザウィルスを病原体とする感染症であり、咳やくしゃみなどによる飛沫感染や接触感染、空気感染により感染が拡大します。

感染すると、約1~3日間の潜伏期間の後、発症し、38度以上の高熱や倦怠感、食欲不振、頭痛、関節痛などの全身症状が強く発現します。また、合わせて鼻水や喉の痛み、咳などの呼吸器症状もみられます。通常、10日前後で症状は落ち着きますが、まれに肺炎やインフルエンザ脳症を合併し、重症化することもあります。

インフルエンザを発症した場合、まずは、休養や睡眠をとり安静にすること、脱水症状を起こさないように水分を補給することが基本となります。また、抗インフルエンザウィルス薬の使用や、解熱剤などの症状に合わせた薬の服用も有効です。

抗インフルエンザウィルス薬は、症状の軽減や、症状が出る期間を短くする効果があります。現在、日本では、経口薬であるオセルタミビル(商品名;タミフル)や、吸入薬であるラニナミビル(商品名;イナビル)、ザナミビル(商品名;リレンザ)、点滴薬であるペラミビル(商品名;ラピアクタ)といった、ノイラミニダーゼ阻害薬がおもに使用されています。ノイラミニダーゼは、インフルエンザウィルスが細胞外へ出る際に必要となる酵素であり、その過程を阻害することにより、ウィルスが細胞外へ放出され、増殖するのを防ぎます。発症後できるだけ早く服用することが大切です。

その他、インフルエンザの症状軽減効果が報告されている麻黄湯などの漢方薬が使用されることもあります。


インフルエンザウィルス photo by wikipedia

新しいインフルエンザ治療薬

初期段階(発症後48時間以内)のインフルエンザに対して有効性がみとめられているノイラミニダーゼ阻害薬ですが、薬剤耐性のウィルスが出現しているなどの問題もあり、現在、新薬の開発がすすめられています。

2017年10月には、新しい機序のインフルエンザ治療薬であるS-033188が、日本において先駆け審査指定制度下で承認申請されました。

S-033188は、インフルエンザウィルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼに作用し、ウィルス増殖に必須なRNA複製過程の最初の反応となるmRNA合成の開始を阻害し、ウィルスの増殖を抑制します。

成人および小児におけるA型またはB型インフルエンザウィルスを適応症として承認申請されており、1回のみの経口服用で治療が完結するため、服用方法が簡便で、確実なアドヒアランスが期待されています。

臨床試験では、オセルタミビルよりも高い抗ウィルス効果がみとめられており、投与翌日には50%以上の患者さんでウィルス力価の陰性化がみられています。感染の拡大にたいしても抑制効果をしめすことが期待されています。また、タミフルに比べて、薬剤との関係性が疑われる有害事象の発現率が有意に低く、従来の治療薬と同等以上の安全性をしめすと考えられています。


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今回、新機序薬であるS-033188が承認申請されたことにより、インフルエンザ治療の選択肢の拡大や、薬剤耐性インフルエンザウィルスや新型インフルエンザウィルスへの効果が期待されています。

 

 

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