ドイツでの取り組み 肥満対策として消費税の改正を提案

多くの国では、肥満または過体重の割合が増加しており、世界中で問題となっています。肥満は、さまざまな疾患の原因ともなるため、各国で肥満にたいする早急な対応が必要となっています。

写真はイメージです。 photo by photo AC


肥満の推移


Health Effects of Overweight and Obesity in 195 Countries over 25 Years」によると、1980~2015 年における子どもと大人の過体重・肥満の有病率は、1980年以降に70を超える国々で倍増し、2015年には、子供1億770万人・大人6 億370万人が肥満であることが明らかになりました。

また、2015年では、肥満が関連する疾患で400万人もの方が亡くなっており、その大部分は心血管疾患によるものであったと報告されています。その他にも、肥満は、糖尿病や腎臓病、がん、筋骨格障害など、さまざまな疾患と関連することが示唆されています。

肥満人口の増加をうけ、世界保健機関(WHO)では、今後10年間で取り組むべき栄養指導の目標として、肥満の成人の増加を抑えること、成人の高カロリー飲料の消費を30%以上減らすこと、野菜と果物を食べる成人の人口を17.8%増やすことをかかげています。

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ドイツでの対策案 ~消費税と肥満~


ドイツで行われた研究(Mit Steuerfreiheit für Obst und Gemüse gegen Übergewicht)では、今日まで健康的な食生活が世間に浸透していないのは食料品の価格設定が原因であると指摘しています。

このことをうけて、ドイツの専門家たちは消費税システムの改正を提案しています。現在、ドイツでは、ほとんどの食料品は7%、ミネラルウォーターやフルーツジュース、嗜好品などは19%の課税がされていますが、改正案では、信号色に分類されるポピュラーな等級制度を基盤とした、4つの方式が提案されました。その提案は、以下の通りです。

① 果物や野菜は消費税が全額免除され、その他の食料品はすべて19%課税される(リストラクチャリング方式)
② 果物と野菜は全額免除され、他の食料品はそれぞれ条件によって信号色に分類される。そのうち「緑」と「黄」に分類されたものは7%、「赤」に分類された食料品やコーラのようなソフトドリンク類は19%課税される(信号方式)
③  ②の案と類似しているが、ソフトドリンク類の税率が更に28%に増加する(信号プラス方式)
④ 野菜や果物は全額免除され、信号分類された食料品のうち「緑」及び「黄」に分類されたものは7%課税される。また、「赤」に分類された食料品及びソフトドリンク類は29%課税される(信号スター方式)


※ 信号プラス方式での段階区分
・「緑」カテゴリー 税率0%…果物及び野菜類
・「黄」カテゴリー 税率7%…麺類や牛乳、肉類といった一般的な食料品
・「赤」カテゴリー 税率19%…インスタント製品やチップス類、菓子類といった糖分・塩分・油分が大量に添加されている製品
・「プラス」カテゴリー 税率29%…砂糖や甘味料などの添加物を含んだソフトドリンク類

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ドイツと日本


ドイツ糖尿病協会では、信号プラス方式の税率の段階区分が最も有望かつ現実的としています。この方式に従うことで、男性は平均で1.75~4Kg、女性は平均1~2.5Kgほど体重を減少させることができると予測されています。肥満の男女は、それぞれ最大4Kgほどの体重減少が見込め、肥満率も減少させることが可能であると発表しています。

また、税制上最も抜本的な方式である信号スター方式では、施行した場合、1年後には、肥満関連の医療費を13%(38億ユーロ)にまで削減することが出来るといわれています。

今回の提案を構想したEffertz氏は、他に肥満予防策として、食に関する教育や講習などを行ったとしても、これほどの成果を挙げることはできないだろうと述べています。

日本は、世界的にみると肥満率は低いとされているものの、日本人男性の約3割、女性の約2割が肥満であるといわれています。国民の健康維持や医療費の削減のためにも、日本でも肥満にたいする有効な取り組みが必要とされています。

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