男性の胸が女性のようにふくらむ!?-女性化乳房のはなし

男性が女性のように胸がふくらむのは


男性が女性のように胸がふくらむことを「女性化乳房」といいます。胸がふくらむことで「人前で裸になれない」、「服の上からでも目立つ」など学生生活や社会生活で困ってしまうなど悩んでいる方もいて、女性化乳房の影に病気がかくれている場合もあります。

女性化乳房は、大きく分けて乳腺の発達する「真正女性化乳房」と肥満によって胸部に脂肪がたまる「偽性女性化乳房」にわかれます。女性化乳房の9割は真正女性化乳房です。

真正女性化乳房
女性では発達している乳腺は、男性にもありますがほとんど発達はしません。なんらかの原因で女性ホルモンであるエストロゲンが増加して、男性でも乳腺が発達した状態を真正女性化乳房といいます。
偽性女性化乳房
乳腺の発達はみられずに、皮下脂肪が増えることで女性のように胸がふくらんだ状態を偽性女性化乳房といいます。肥満が原因なことがほとんどです。


高度の女性化乳房 photo by wikimedia


男性が女性のような胸のふくらみを持ってしまうのは男性にとっては深刻な問題ですよね。女性化乳房はどのような症状が現れるのでしょうか。

女性化乳房の症状

胸がふくらむ


ほとんどの女性化乳房にみられます。ふくらみ方はさまざまで左右とも膨らむ場合と片側だけがふくらむ場合もあります。ふくらむ程度も乳輪部分だけの場合もあれば、女性の胸のように大きくふくらむこともあります。

しこり


真正女性化乳房にみられる症状で、乳腺が発達することで「しこり」があらわれるようになります。偽性女性化乳房ではみられません。

痛み


なにもしていなのに胸がチクチク痛む、服に乳首が触れると痛む、手で胸を押したときや早歩き、走ったりするなどしたときに痛むなどの症状が現れます。かゆみを伴う場合もあります。女性化乳房の場合には、しこりと痛みの症状を伴う場合がほとんどです。

写真はイメージです。photo by pixaboy


このような症状を引き起こす女性化乳房の原因はなんでしょう。実は、いろいろな原因があります。

女性化乳房の原因はさまざまです

生理的な現象


生理的な現象とは、男性としてのホルモンバランスの乱れのことをいいます。大きく3つの時期があります。女性化乳房になる原因として多いもの一つです。

〇新生児期

生まれたばかりの赤ちゃんはお母さんの女性ホルモンが胎盤を通して赤ちゃんに取り込まれます。一時的に発達しますが、数週間程度でほとんどが軽快して心配はないといわれています。


写真はイメージです。photo by pixaboy


〇思春期

思春期の男の子は、男性ホルモンであるアンドロゲンと女性ホルモンであるエストロゲンの2つのホルモンの分泌が、活性化します。アンドロゲンの方がエストロゲンの100倍以上も分泌されて男性としてのからだが形成されます。

思春期初期の段階では、アンドロゲンよりエストロゲンの分泌が相対的に多く女性化乳房になる場合があります。

ほとんどの場合には、ホルモンのバランスが安定すれば自然に消失するもので心配はありません。痛みが強い、胸のふくらみが大きい、胸のふくらみが元に戻らないといった場合にはお医者さんに相談しましょう。

〇更年期~老年期

男性にも更年期があります。男性ホルモンは、30代ごろから徐々に低下していきますが更年期から老年期になると低下のスピードが加速します。男性ホルモンより女性ホルモンが相対的に高くなり、乳腺が発達しやすい状況になります。

肥満


偽性女性化乳房の原因となるのが肥満です。太っているだけだと気がつかない方もいるのではないでしょうか。

肥満につきもの脂肪に存在するアロマターゼという酵素が、女性ホルモンであるエストロゲンを作っているために、肥満によって女性ホルモンが増えやすくなることが知られています。そのために乳腺が発達して、偽性女性化乳房から真正女性化乳房になることがあります。

薬の副作用


特定の薬の副作用で、女性化乳房を引き起こす場合があります。前立腺肥大症治療薬、前立腺がん治療薬、利尿剤、高脂血症治療薬、胃潰瘍の治療薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、AGA治療薬などのそれぞれの薬の一部のものがあげられます。

若いころから抗うつ薬やAGA治療薬を飲んでいると、女性化乳房になる場合が報告されています。

写真はイメージです。photo by pixaboy


薬の副作用で、必ずしも女性化乳房を引き起こすわけではありません。いくつかの薬では5%未満というやや高めの数値が報告されていますが、ほとんどの薬は0.1%未満か頻度不明です。

なお、麻薬である大麻が原因で女性化乳房がみられる場合もあります。

アルコール


アルコールを長期間に渡って多飲した状態が続くと、体内の男性ホルモンが低下することがわかっていて、女性化乳房の原因となる場合があります。

長期間の多飲によるアルコール性肝炎から肝硬変になってしまう場合も女性化乳房の原因の一つになります。

疾病


〇肝臓疾患

男性でも微量の女性ホルモンが分泌され、肝臓で分解されています。肝硬変や肝臓がんなどの重い肝臓疾患にかかると、女性ホルモンが分解されずに蓄積され、女性化乳房を発症する場合があります。

女性化女房を発症して、肝硬変が発見されたというケースもあります。疾病を原因とする女性化乳房の中では肝硬変を原因とするものが一番多いです。

〇腫瘍

精巣腫瘍により男性ホルモンの産出が抑制される、下垂体や甲状腺に腫瘍ができて乳腺刺激ホルモンであるプロラクチンが過剰に分泌されて女性化乳房を発症することがあります。

副腎腫瘍、hcg産生腫瘍の胃がんや肺がんなどでも女性化乳房を発症することが知られています。

〇甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、女性に多い病気ですが男性でも罹患します。

男性患者のなかで10%~40%程度の割合でホルモンバランスの崩れから女性化乳房がみられるといわれています。

これらの疾病以外にも先天性の疾病であるクラインフェルター症候群や遺伝性女性化乳房(アロマターゼ過剰症)、精巣炎、精巣の外傷、慢性腎不全などでも女性化乳房がみられる場合があることが知られています。

特発性


特発性とはあきらかな原因となる要因が除外された原因不明の女性化乳房のことです。女性化乳房の中で、特発性のものは多く見られます。

原因についてまとめてみましょう


写真はイメージです。photo by irasutoya


ほとんどの女性化乳房自体は悪性のものではありません。いろいろな原因がありましたよね。みてきた原因以外にも筋肉増強剤などが原因になる場合もあります。

原因のなかで多いのは生理的なものと特発性のものです。次に薬剤やアルコールなどの外的なものが多いと報告されています。

このような女性化乳房の治療がどのようにおこなわれるのでしょうか。

女性化乳房の治療の基本は経過観察


生理的なホルモンバランスの乱れなどは一時的なものが多いので経過観察を優先します。薬剤が疑われる場合には一時的に休薬、減量、薬剤の変更をして経過観察します。経過観察中に自然と軽快するケースが多くみられます。

疾病のように原因がわかっている場合には、原因の除外が優先されます。疾病の改善が女性化乳房の改善にもつながります。

肥満が原因となる偽性女性化乳房の場合には、ダイエットなど肥満の改善に努めることが必要になります。

女性化乳房(左)/消失後(右)photo by wikimedia


経過観察しても改善されない場合には外科的に乳腺組織を除去します。

皮下脂肪が多くみられる場合には脂肪吸引を行う場合があります。生活に支障がでる、外見が気になるなど困っていなければ必ずしも手術が必要ということではありません。

女性化乳房は心配ない?


念のために注意しておきたいのは男性の乳がんです。女性化乳房ではないのに痛みを伴わない胸のしこりがある場合と、女性化乳房で乳腺が発達して乳がんになる場合があります。

男性の乳がん患者さんは、女性の1/100といわれて年間で600人ほどが発症しています。男性の乳がんは女性に比べて進行が速いことがわかっています。

大半の女性化乳房は胸がふくらむ以外の心配ありません。しかし、疾病が原因で胸がふくらむ場合があります。また、胸のふくらみが気になって普段の生活に支障を覚えてしまうこともあるでしょう。

大人になってからの胸のふくらみ、しこり、痛みなどの女性化乳房の症状を感じる場合には原因を突き止めるために受診されることをおすすめします。とくに、がん年齢といわれる世代の方は受診することが望ましいとされています。

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