開発が進められているパーキンソン病のオフ症状治療薬アポモルヒネの舌下投与フィルム製剤とは

パーキンソン病は、運動障害がみられる進行性の神経変性疾患です。50才以上に発症することが多く、日本での有病率は1000人に1~1.5人といわれています。予後は悪くありませんが、運動症状や非運動症状の発現、介護が必要となる場合があることなど、QOLの低下をまねくため、継続して適切な治療が必要となる疾患です。

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、ふるえ(安静時振戦)や筋肉の緊張が強くなり、手足の動きがぎこちなくなる筋固縮または筋強剛、動作が遅くなる、または少なくなる動作緩慢・無動、バランスを取るのが難しくなる姿勢反射障害の4つの症状がおもにみられます。


パーキンソン病のおもな症状 photo by illust-ac

患者さんにより発現する症状は異なりますが、運動症状のほかにも、便秘や排尿障害、睡眠障害、抑うつ、疲れやすい、起立性低血圧などの非運動症状がみられる場合もあります。

パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン神経細胞が減少することで発症すると考えられています。神経伝達物質であるドパミンが減少することで、脳内で指令がうまく伝達されず、運動症状や非運動症状があらわれます。

黒質の神経細胞が減少する原因については、明確にわかっていませんが、ひとつとして、αシヌクレインという異常なタンパク質が神経細胞にたまり、それが原因となり神経細胞が障害され、減少すると考えられています。

パーキンソン病の治療

パーキンソン病の治療は、薬物治療が中心となり、不足したドパミンを補う薬や、その作用を補助する薬などが使用されます。

治療薬は作用の違いにより数種類に分類されますが、治療の基本となるのは、脳内に取り込まれ代謝されるとドパミンとなるレボドパと、脳内のドパミン受容体を刺激し、不足したドパミンの作用を補うドパミンアゴニストです。

そのほか、ドパミンの分解を抑制する薬や、ドパミンが不足することで優位になっているアセチルコリンやアデノシンの作用を抑える薬などが必要に応じて用いられます。薬の効果が十分ではない場合や、副作用がでる場合などには、外科的治療が行われることもあります。


写真はイメージです。 photo by photo AC

オフ症状とアポモルヒネ

多くの場合、レボドパによるパーキンソン病治療の初期は、薬がよく効き、症状が緩和されますが、進行するにつれて運動合併症が問題となります。

運動合併症には、薬の効く時間が短くなるウェアリング・オフ現象や、レボドパの服用時間と関係なく症状が良くなったり悪くなったりするオン-オフ現象、レボドパの効果が出るまで時間がかかるまたは効果が見られなくなる現象、体の一部が勝手に動くジスキネジアがあります。

運動合併症が発現した場合、レボドパの服用回数を頻回にする、または併用薬を増やすなどの治療が必要となりますが、オフ症状に対して適応をもつアポモルヒネを使用するのも方法のひとつです。

アポモルヒネは、ドパミンと似た構造を持っており、ドパミンD1およびD2様受容体を刺激して、ドパミン神経伝達を促進します。現在、レボドパ含有製剤の頻回投与および他のパーキンソン治療薬の増量を行っても十分な効果の得られない場合のオフ症状改善に適応を持ち、レスキュー薬として有用とされています。

しかし、現在まで、アポモルヒネを含む製剤は皮下投与の注射薬しかなく、投与は簡単ではありませんでした。

そこで、開発がすすめられているのが、アポモルヒネを含有する舌下投与のフィルム製剤です。舌下投与にすることで、投与が簡便になり、患者さんや介護者の負担を減らすことが期待されています。

オフ症状を伴う成人のパーキンソン患者さんを対象とした臨床試験では、投与開始から12週後における投与後30分後の運動能力の評価指標(MDS-UPDRS Part Ⅲスコア)が、プラセボ群に比べて有意に改善し、効果は投与後90分まで持続したことが報告されています。

また、投与後30分以内におけるオン症状患者さんの割合は、アポモルヒネ舌下フィルム投与群で35%、プラセボ群で16%となり、有意差がみとめられました。吐き気や眠気、めまい、あくび、頭痛などの有害事象はみられたものの、重大な有害事象はみとめられず、良好な忍容性をしめしたと報告されています。


写真はイメージです。photo by photo AC

オフ症状は、パーキンソン患者さんの40~60%が経験していると言われており、患者さん個々人に合った治療が必要となります。現在、オフ症状のレスキュー薬であるアポモルヒネの舌下投与型フィルム製剤の開発が進んでおり、オフ症状で苦しむ方々の新たな治療の選択肢となることが期待されています。

 

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