電子鼻(Electric nose)を気管支喘息の診断にもちいる

指先の特徴を指紋(fingerprint)といいますが、においにも特徴があり、その名を臭紋(smellprint)または呼気指紋(breath-print)といいます。その特徴を用いて、気管支喘息の診断にもちいることができるのではないかというのが、今回のお話しです。


写真はイメージです。 photo by photo AC

電子鼻とは

電子鼻(Electric nose)とは、なかなか聞きなれない言葉ですが、はいた時のガスに含まれた揮発性の有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOCs)を測定分析する装置を電子鼻といいます。

ヒトが、はいた息には1000種類以上の化合物が極めて低い濃度で含まれています。

そのなかには、ホルムアルデヒド、メタノール、エタノール、硫化水素、ベンゼン、アセトアルデヒド、アセトン、トルエンなどのVOCsが含まれています。

電子鼻のしくみと現状

複数の電子鼻の開発、臨床応用がここみられていて、VOCsの特徴を多次元データとしてプロファイルし、アルゴリズムをもちいて、呼気指紋として認識していきます。

特定の呼気指紋と、呼吸器疾患を結びつけることで、はいた息を電子鼻で解析して、診断に結びつけていこうという仕組みです。

2007年に、はいた息のVOCsを解析することで、喘息患者さんと健常人との鑑別に有用ではないかと、2013年にはステロイドを投与した喘息患者さんのはいた息のVOCsを解析をすることは、従来の検査方法にくらべて、ステロイドの反応性を評価するのに有用ではないかと報告されています。

喘息以外の疾患としては、気道の炎症がどういったものよるものか、具体的には、「好中球による炎症なのか、好酸球による炎症によるものなのか」の判別や「気道にどういった細菌が生息しているのかの同定」、「呼吸状態が悪いのが、感染によるものなのか、そうでないのか」といった判別にも有用ではないかと報告されています。


写真はイメージです。photo by photo AC

これらの同定、判別は、実際の臨床においても採血や一般的な検査だけではなんとも判別するのが難しいことがあり、より早く、正確な検査の実用化が待たれている分野です。

電子鼻の今後

まだまだ実用化にむけた検査精度の向上がもとめられているのが現状で、また、実際の臨床現場では、検査結果の解釈において呼吸器以外の影響(喫煙、消化器疾患、全身性疾患)を考慮することがもとめられるため、幅ひろい人に応用していくためには、呼吸器疾患以外の患者さんたちのデータの検証も必要になっていきます。

まだまだ歴史の浅い電子鼻ですが、今後、人工知能やすべての物がインターネットとつながるIoT(Internet of Things)の世界においては、人間の吐く息さえもが、インターネットの世界でデータとして解析され、より迅速で正確な診断・治療へとつながっていくのかもしれませんね。

 

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