虫歯の進行度を定量的に診断する新しい検査方法が開発 「削らない治療」に向けての新しい検査方法のひとつへ

虫歯になって歯医者さんにいったことはがあるかたは多いと思います。

歯の健康に保つことは私たちの生活の質(QOL)にかかわる問題です。いろいろな研究から歯がからだ全体の健康にも影響及ぼしていて、大きな病気などにつながる可能性があることがわかっています。

ところで虫歯ってなぜなるのでしょうね。甘いものを食べすぎると虫歯になるっていいますよね。

虫歯の原因となるのは、食後に歯についた食物の食べかすなどが口内細菌と共に歯の表層に付着することで歯垢が形成されることがきっかけになります。

歯垢内の細菌は、口に入ってきた糖などを分解して酸を作ります。この酸が歯を溶かして虫歯になっていきます。

もともと口内は中性から弱アルカリ性ですが酸が作られることで口内のpHは酸性に傾きます。だいたい数分から1時間程度で唾液が口内を洗浄することでpHは元に戻ります。

写真はイメージです。photo by misaki

とくに甘いものを食べると急激に口内は酸性となって酸性の状態の時間は長くなります。たとえば、糖分を10%程度含む炭酸飲料を飲むと口内は1時間程度の間は酸性の状態のままです。

このようにできてしまう虫歯の治療にあたって歯医者さんが頭を悩ますのは「虫歯をどの段階で削って治療するか、どこまで削って治療するか」という点です。

この判断をするために歯医者さんは虫歯の治療前や治療中などに歯の検査を行っています。

いろいろな歯の検査方法はありますが、従来の検査方法とは異なる新しい検査方法を2018年3月に東京医科歯科大学の研究グループが、「歯のpHマッピングによる虫歯の定量的検査技術を開発した」ことを国際科学誌「Analytical Chemistry」に発表しました。

[pHマッピングで定量的検査技術とは]

最初に虫歯の検査にはどのような方法があるのかみておきましょう。

視診歯医者さんが肉眼で確認。
触診歯科用の先の補足とがった「探針」をつかって確認。
X線診X線写真を用いて確認。歯科用CTが使われる場合もある。
う蝕検知液虫歯の部分が染まる検知液で判断。おもに虫歯を削るときに用いる。
カリエスメーター微量の電流を流して抵抗値から虫歯を判断。おもに虫歯の深さをなど調べるときに使用される。
ダイアグノデントレーザー光線を歯に照射して数値化された値で虫歯を判断。補助的に使用されることが多い。

いろいろな検査方法がありますね。それぞれの検査方法には長所と短所があります。

一般的に行われる視診、触診、X線視が基本となる検査方法です。これらの検査方法は歯科医師の経験や技術に左右されるといわれています。

このようなことに左右されずに実用性があり客観的、定量的、非侵襲的な診断方法が求められていました。

着目されていたのは、虫歯の進行が歯の表層の細菌の活動とpHが関連していることです。

これまでは歯の表層のpHについて詳細な評価を行うことができる機器は開発段階にとどまっていました。

このような背景を踏まえた上で、研究チームは、歯の表層のpHを実用的に計測するために普段から歯科医が用いる「歯科用探針」に実装することを目的にしてpHを定量的に計測するセンサの作製に至りました。

歯科用探針photo by pixaboy

歯科用探針に実装するために加工性に優れた直径300μm(0.3ミリ)と非常に細い「Ir/IrOx ワイヤ」を使用して室温で正確な感度にほぼ近い値を有するように作製されました。

※Ir/IrOx ワイヤはpH測定の基準となる水素イオンに対する感応材料としてイリジウムと酸化イリジウムを用いたセンサです。

このセンサは繰り返して使用することができ、使用後も高圧力で水蒸気を使う「オートクレーブ滅菌」にも耐えることが確認されています。臨床の現場でも十分に使用することができます。

研究チームは抜歯後の虫歯の表層のpH測定を行った結果から「健康な歯、非進行性の虫歯、進行性の虫歯」について「6.85 6.07 5.30」のpH値を有していることを明らかにしました。この成果によってむし歯の進行を定量的に評価することに成功しました。

作製されたpHセンサは、歯表層の凹凸や欠損などといった形態に左右されずに pH測定を行うことができ、今までの検査方法では識別がむずかしいとされている歯間の虫歯などについても評価することができます。これらのことから隠れた虫歯を診断することができると考えられます。

pH測定した結果に基づいて定量的に虫歯の有無や進行度の状況をマッピングすることで保存する場所と切除する場所を明確することができます。

[新しい検査方法に期待されることは]

写真はイメージです。photo by photo-ac

以前は、虫歯というとすぐに削って直すことが行われていましたが、昨今の傾向として虫歯を保存的に治療していく「削らない治療」という考え方が主流になっています。一度、削ってしまった歯は、元には戻りません。

このために治療が必要な歯かどうか、どこまでの治療が必要かの判断が必要になってきます。

この判断を今回の検査方法で定量的に診断することで「削らない治療」に向け歯科医師の診断をサポートするプラットフォームとなり普及していくことが期待されています。

 

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