オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症とは

先日、紹介した医師国家試験にでてきたオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症についてどういった病気か最近の動向について今回、みていきたいと思います。

以下、難病情報センターの情報を参考にしています。

オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症とは

人間は普段の生活で、タンパク質、炭水化物、脂質を摂取しながら生きています。

摂取したタンパク質は、アミノ酸に分解されますが、その際に副産物として生じたアンモニアは、有毒な物質です。アンモニアは、肝臓の尿素サイクルという解毒システムによって尿素に転換され、解毒されます。この過程に異常があり、アンモニアの解毒が出来ず、血中のアンモニアが上昇することを高アンモニア血症といいます。

オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症は、この尿素サイクルに異常をきたしている病気のひとつで、尿素サイクル異常症の過半をしめています。尿素サイクル異常症に属する各疾患あわせて約8000人に一人、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症は約14000人に一人の有病率と考えられています。

原因は、アンモニア解毒のステップであるカルバミルリン酸とオルニ チンの結合を触媒するオルニチントランスカルバミラーゼの遺伝子異常にあります。遺伝子異常によってオルニチントランスカルバミラーゼの酵素活性が低下し、アンモニアの解毒が阻害されます。

症状としては、新生児期には、生後早期に急速に進行する哺乳不良、過呼吸、傾眠、昏睡を伴う脳症がみられ、重篤な高アンモニア血症の発作は致死的となりえます。慢性的な経過では、精神発達遅滞、慢性神経学的症状、嘔吐、摂食障害などをみとめます。

診断方法は、採血の所見 とX染色体上に局在するオルニチントランスカルバミラーゼ遺伝子の解析により確定診断されます。

気になる治療法ですが、高アンモニア血症にならないようにすることに主眼がおかれます。食事療法(蛋白制限、充分なカロリーの補充)、アルギニン、安息香酸ナトリウム・フェニル酪酸、L-カルニチン、ラクチュロースの内服。急性期は、グルコース大量静注による異化亢進状態の阻止、アシドーシスの補正、タンパク摂取 の中止、有害代謝物の血液浄化療法による除去。一部の症例では肝移植が行われています。

以上、難病情報センターの情報改変参照。


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オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症の最近の動向

このように、タンパク質分解の際に生じるアンモニアをうまく処理できないことで生じる遺伝的疾患のオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症ですが、2010年に難病に指定されたばかりの病気であり、まだまだ医療従事者の間でも馴染みのない病気ですが、徐々に新たな研究が進んでいます。

2012年に、尿素サイクル異常症の治療薬として、フェニル酪酸ナトリウム(商品名ブフェニール錠500mg、同顆粒94%)が薬価収載されました。この薬は、生体内で速やかにフェニル酪酸となり、尿素サイクルとは異なる代替経路によって、アミノ酸のひとつであるグルタミンを尿中に排泄させることで、血中アンモニアの上昇を抑制する作用があります。

2017年には、生後間もない赤ちゃんに先天性の病気がないかを調べる血液検査「新生児マススクリーニング」で、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症の検査方法が見つかっています。

また、肝臓疾患をもつ患者さんのヒト肝細胞をマウスに移植することで、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症のモデルマウスの作成に成功したとの発表もあり、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症の根本的な治療の開発につながるのではないかと期待されます。

 

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