ラクオリア創薬の「テゴプラザン」が導出された韓国で承認 第2のP-CAB薬になるか

ラクオリア創薬株式会社が開発した「テゴプラザン」の導出を受けた韓国のCJヘルスケア社が、「逆流性食道炎」及び「非びらん性胃食道逆流症」の治療薬として2018年7月に韓国食品医薬品安全処(MFDS)の認可を得たとの発表がありました。

テゴプラザンは、P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)の薬として「非びらん性胃食道逆流症」の治療適応となった世界で最初です。

ラクオリア創薬は、消化器疾患の領域を中心に独自の創薬技術を用いて研究、臨床開発をおこなって国内外の製薬企業に導出するビジネスモデルを展開している会社です。

※導出とは:製薬業界において、特定の医薬品を研究、開発、販売するために必要な知的財産権を相手に使用許可することを指します。知的財産権の使用の許可を得たことを導入といいます。

テゴプラザンとはどのような薬なのでしょうか。最初に「P-CAB」についてみてみましょう。

P-CABは強力に胃酸を抑制する薬です

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃食道逆流症などには胃酸が深くかかわっています。通常は過剰に胃酸が分泌されることが原因になります。

写真はイメージです。photo by pixaboy

胃酸は、胃の壁細胞内で3種類ある酸分泌刺激物質が特定の受容体と結合すると細胞内伝達物質が放出されます。放出された細胞内伝達物質の刺激によってタンパク質の一種であるプロトンポンプが活性化して胃酸が産生されます。

薬局などで市販されている「H2ブロッカー」は、酸分泌刺激物質のひとつであるヒスタミンが受容体と結びつくのを阻害して胃酸の分泌の抑制するものです。

より強力に胃酸の分泌をコントロールするために、プロトンポンプの活性化自体を抑制する作用を持つ薬として開発されたのが「プロトンポンプ(PPI)阻害薬」です。PPI阻害薬としては、「タケプロン、パリエット、ネキシウム」などがあります。

これらのPPI阻害薬には、作用に不安定な部分あることが知られています。それを補うもの形として開発されたものが「P-CAB」です。

P-CABは、同じようにプロトンポンプの活性化を抑制するPPI阻害薬ですが作用機序に違いがあります。

日本ではP-CABの薬としては、2017年2月から武田製薬から「タケキャブ」が販売されています。

適応となっている疾患は、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」などです。非びらん性胃食道逆流症は適応外とされています。

PPI阻害薬とP-CABの違いはなに

タケキャブphoto by hakucyou

◇PPI阻害薬は効果が現れるまで3日から4日程度かかります。P-CABは投薬1日目から効果をあらわします。

◇PPI阻害薬は酸によって活性化します。反面、酸性環境下で不安定なために血中濃度が下がると十分な効果を発揮できません。P-CABは酸による影響を受けません。酸性環境下でも安定しているので血中濃度が下がっても効果が期待できます。

◇PPI阻害薬は、日中の胃酸分泌を抑制する効果は優れていますが夜間はその作用は弱くなることが知られています。P-CABは1日を通じて効果が持続します。

◇PPI阻害薬は体質によって効果が人によって差がでる場合があります。P-CABは効果が人によって差が出るが少ないのも特徴です。

テゴプラザンはどのような薬なの

テゴプラザンも薬理作用はタケキャブとほぼ同じP-CABです。今回、注目されたのが、タケキャブでは適応となっていない「非びらん性胃食道逆流症」も適応とされたことです。

胃食道逆流症(GERD)は、食道に炎症がある「逆流性食道炎」と症状があるものの炎症がみられない「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」にわかれます。炎症がなくても症状が強く現れる場合があります。

写真はイメージです。photo by photo-ac

胃食道逆流症のなかで逆流性食道炎の患者は約30%程度で、非びらん性胃食道逆流症の患者数のほうが多いことが知られています。

今後、日本でテゴプラザンが承認された場合に、非びらん性胃食道逆流症も適応になる可能性が考えられています。

テゴプラザンに関する特許査定があります

ラクオリア創薬は、2016年5月にP-CABについて食間伝播性収縮運動(IMC)Phase IIIにおける収縮の発生から起きる胃食道逆流疾患、機能性消化不良、胃部不快感などに関連する症状を改善する薬剤として特許査定の権利が認められています。


※食間伝播性収縮運動(IMC):胃腸は、空腹時でも90分から120分間隔で収縮運動を繰り返します。Phase IIIでもっとも収縮が大きくなります。空腹時にお腹がなるのは食間伝播性収縮運動が関与しています。

特許査定については、いますぐになんらかの影響がでるというものはありません。今後、P-CAB全体でみてみるとなんらかの影響を及ぼしていくかもしれません。

テゴプラザンの今後は

今後、ラクオリア創薬は日本、欧米、CJヘルスケア社に導出済みの韓国・台湾・中国及び東南アジア地域以外のアジア諸国などについてテゴプラザンの導出を目指しています。

写真はイメージです。photo by pixaboy

現在、中国では第三相の臨床試験が行われています。日本では、2015年に第一相までの臨床試験は終了しています。

日本で、販売が認可されればタケキャブに続くP-CABの薬になるかもしれません。今後の動きが注目されるところですね。

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