Aさん(60歳、男性、元建設業)は、妻(57歳) と2人暮らし。 2年前に悪性胸膜中皮腫と診断され、化学療法を受けたが効果がみられず、外来通院していた。2週前から、胸痛、息苦しさ、倦怠感が増強したため、症状コントロール目的で入院した。
バイタルサイン:体温36.0 ℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧126/88mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉86~90%(room air)。
身体所見:両側下肺野で呼吸音が減弱しており、軽度の副雑音が聴取される 。
血液所見:赤血球370万/μL、Hb 8.8g/dL、白血球6,700/μL、総蛋白5.2g/dL、アルブミン3.8g/dL、CRP1.5mg/dL。
動脈血液ガス分析(room air):pH7.31、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉40Torr、動脈血酸素分圧〈PaO2〉63Torr。
胸部エックス線写真:胸膜肥厚と肋骨横隔膜角の鈍化が認められる。肺虚脱なし。
91 Aさんの呼吸困難の原因で考えられるのはどれか。2つ選べ。
- 胸水
- 気胸
- 貧血
- CO2ナルコーシス
- 呼吸性アルカローシス
胸部で部分的に呼吸音が減弱・消失しているときは、気胸、無気肺、胸水の貯留などが考えられます。Aさんの場合、胸部X線画像で、肋骨横隔膜角の鈍化が認められるため、胸水の貯留が疑われます。
採血上、赤血球370万/μL、Hb 8.8g/dLと貧血を認めています。
CO2ナルコーシスとは、呼吸の自動調整能が破綻し、二酸化炭素が体内に貯留することで意識障害が出現する病態の総称です。現時点で、意識障害はないので、 CO2ナルコーシスを認めていません。
pH7.31、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉40Torrで、 pHの低下、PaCO2の上昇を認めるため、呼吸性アシドーシスです。
よって答えは1と3になります。
92 入院後、症状緩和のためモルヒネの内服と経鼻カニューレによる酸素療法2L/分が開始された。経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉は95%前後で維持されるようになったが、Aさんは夜間の息苦しさを訴えている。Aさんの呼吸困難を緩和するための体位で適切なのはどれか。
- 半腹臥位
- 右側臥位
- 左側臥位
- セミファウラー位
ファウラー位とは上半身を45度程度上げた半座位のことで、この角度が15~30度の場合をセミファウラー位と呼びます。呼吸困難の改善が見込めます。
よって答えは4になります。
93 入院後2週、Aさんの身体状態は急激に悪化し、A さんは「息が吸えない。苦しい。何とかしてくれ」と訴え、眉間にしわを寄せて口呼吸をしている。軽度の喘鳴がみられ、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉は88~92%(経鼻カニューレによる酸素療法2L/分)である。また、頻繁に体位を変えて落ち着きがなく、つじつまが合わない訴えと場所の見当識障害もみられる。毎日面会に来ている妻は「どうなってしまったのでしょうか。苦しそうでかわいそう」と涙ぐみ、ベッドから離れたところで座っている。Aさんの妻への看護師の説明で適切なのはどれか。
- 「Aさんが場所を間違っても否定しないで下さい」
- 「口腔内吸引をするとAさんの呼吸が楽になります」
- 「タッチングをするとAさんの安心感につながります」
- 「Aさんの症状が落ち着くまで自宅で待機して下さい」
タッチングとは、「非言語的コミュニケーションの1つとして手や指で撫でる、さするなど肌と肌との触れ合いを通じた相互作用性のある行為であり、心の触れ合い、情緒的安定をもたらします。特に、終末期には欠かすことのない技術になってきます。
よって答えは3になります。
続き
コメント