第109回看護師国家試験を解いてみた 問題解説 午前103~105 1型糖尿病の対応

A君(8歳、男児、小学3年生)は、父親(40歳、会社員)と母親(38歳、主婦)との3人暮らし。 
多飲と夜尿を主訴に小児科を受診した。尿糖4+のため、1型糖尿病の疑いで病院に紹介され、精密検査を目的に入院した。A君は身長123cm、体重27.5kg(1か月前の体重は29.5 kg)。入院時のバイタルサインは、体温36.9℃、脈拍100/分、血圧98/42mmHg。随時血糖300mg/dL、HbA1c 9.3%、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ〈GAD〉抗体陽性。尿糖4+、尿ケトン体3+。血液ガス分析pH 7.02であった。

103 入院時に確認する症状はどれか。2つ選べ。

  1. 咳嗽
  2. 腹痛
  3. 浮腫
  4. 発疹
  5. 意識レベル










1型糖尿病では、主に自己免疫学的機序により、膵臓にあるインスリンを分泌するβ細胞が破壊され、インスリンが出なくなるため慢性高血糖状態となり、糖尿病を発症します。

A君は抗GAD抗体が陽性なので、1型糖尿病と考えられ、入院時には糖尿病性ケトアシドーシスを発症しています。

糖尿病性ケトアシドーシスでは、血糖値は250mg/dL以上まで上昇することがあり、ひどい場合は意識がなくなる昏睡状態に陥ります。脂肪の分解によってケトン体という物質が血液中に増え、血液がアシドーシスになり、高度の脱水状態になります。

糖尿病性ケトアシドーシスでは、腹痛を認めることがあります。

よって答えは、2と5になります。




104 入院後、インスリンの持続点滴静脈内注射が開始された。入院後3日に血糖値が安定し、インスリンの持続点滴静脈内注射が中止された。ペン型注射器によるインスリン療法が開始され、看護師は母親とA君に自己血糖測定とインスリン自己注射について説明した。A君は「自分で注射するなんてできない」と言ってインスリン自己注射の練習が進まない。A君への看護師の対応で最も適切なのはどれか。

  1. インスリン自己注射の必要性を繰り返し説明する。
  2. A君が納得するまで母親にインスリン注射をしてもらう。
  3. インスリン自己注射ができるようになったら退院できると話す。
  4. インスリン自己注射をしている同年代の糖尿病患児と話す機会を作る。











8歳であり、自己血糖測定や自己注射が可能な時期であると考えられます。自己血糖測定や自己注射の手技が獲得できるように援助するため、自分で注射できない理由を確認します。できない理由として不安があるとしたら、自己注射をしている同年代の糖尿病患児と話す機会をつくることで、自分もできると思う効果があると考えられます。

よって答えは4になります。




105 A君と母親は、自己血糖測定とインスリン自己注射に関する手技を身につけて退院し、外来通院となった。退院後2か月、A君と母親が定期受診で来院した際、看護師がA君に生活の様子を尋ねたところ「学校では血糖測定もインスリン注射もやっているよ。給食は楽しみで好き嫌いなく食べているよ」と話した。母親は「帰宅時に時々手の震えや空腹感を訴え、血糖を測定すると60mg/dL台のことがあり、自分で補食を選んで食べています。なぜ日によって低血糖になることがあるのでしょうか」と話している。看護師がA君の低血糖の原因をアセスメントする際に優先して収集すべき情報はどれか。

  1. インスリン自己注射に対するA君の認識
  2. 学校内でインスリン自己注射を行う場所
  3. 学校での運動量
  4. 給食の摂取量











A君は、自己注射もできていると言っていますし、給食も好き嫌いなく食べていると言っています。血糖値のむらが出ている原因として、選択肢の中からは、学校での運動量が影響しているのではないかと最も考えられます。

よって答えは3になります。




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