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うつ病と生活習慣との関係〜日本での大規模調査より〜

うつ病で苦しむ方は、世界で3億人以上にのぼると推定されており、2005年から2015年のあいだで18%も増加したと報告されています。世界中で患者数が増加しているうつ病ですが、近年、うつ病と生活習慣との関係が注目されています。 写真はイメージです。 photo by pixabay うつ病と生活習慣 うつ病は、脳に何らかの機能障害が起こることで発症すると考えられています。症状は、人により異なりますが、抑うつ気分や意欲の低下、思考力の低下などの精神的な症状や、睡眠障害や食欲の低下または増加など身体的な症状がみられます(詳しくはこちらを参照)。 ストレスや環境の変化、疾患などさまざまな要因が重なることで発症すると考えられているうつ病ですが、近年では、食事や運動といった生活習慣や、それに基づく疾患との関連性が指摘されています。 11年間にわたりうつ病や不安障害の発症について追跡調査した大規模な国際調査(The Continue Reading ->

春のうつ 春になると体調がおかしくなる、気分が落ち込むことはありませんか?

[冬から春へ-始まりの季節へ] 春というと何が思い浮かびますか。寒い冬が終わって緑が息吹はじめ、桜の花が咲き、冬物から春物へと身に着けるものも変わります。 身も心も軽くなってウキウキするような明るいイメージがある春。春は木の芽が芽吹くことから「木の芽」の季節ともいわれています。始まりの季節というイメージもありますよね。 しかし、ウキウキするイメージなんかしない、気分がのらない、悲しさやさみしさを覚えてしまうなどと感じることはありませんか。それは春のうつ病かもしれません。 [春は変化の季節です] 春はわたしたちの身の回りにいろいろな変化がおきる季節です。この変化がうつ病のきっかけとなることがあります。どのような変化なのかみてみましょう。  -生活の変化- わたしたちが生活している中に訪れる変化です。いくつか例をあげてみましょう。 ・学生では進学、進級、通学のための引っ越しなど ・社会人では新入社、配置移動、昇進、転勤、転職など ・主婦では家族の生活が変わると自分の生活が変わる、子供の独り立ちなど ほかにもいろいろあるでしょう。複数の変化が同時に訪れることもあります。また、春はあらたな始まりの季節であると同時に別れの季節です。慣れ親しんできた生活環境が変わることになります。 このような変化は人により程度の差はありますが「ストレス」となって心身に影響を及ぼします。 -季節の変化- 春は季節の変わり目です。朝と夜の温度差が激しく、三寒四温といわれるように日によっても温度差もかなり違います。季節の変化は気がつかないうちにからだへのストレスになります。私たちが体調を崩しやすい季節ともいえます。 体調を崩さないように体のなかでがんばって対応してくれるのが自律神経です。自律神経は血圧や体温などからだのいろいろな機能が正常に働くための司令塔といわれています。自律神経が変化に追いつかなくなると心身の不調という形となって現れてきます。 このような変化が春のうつ病にどのように関連してくるのでしょうか。 [春のうつ病ってなに] 一般的にうつ病はなんらかの要因が引き金となって脳内の神経伝達物質になんらかの問題が起きて発症するといわれています。 脳内の神経伝達物質とはこころやからだのバランスを整えてくれる「セロトニン」、ストレスに反応してからだの集中力や判断力などを高める「ノルアドレナリン」、幸福感や意欲を高める「ドーパミン」などをいいます。とくにセロトニンとうつ病の関係は深いといわれています。 うつ病は通年で発症する可能性がある病気で春に多く、次いで秋から冬にかけて多いことが知られています。 春のうつ病と一般的なうつ病に違いはあるのでしょうか。春のうつ病は春の変化からくるストレスや自律神経の乱れが引き金となります。 うつ病が比較的発症しやすい季節が春であることから「春うつ」とか「春のうつ病」といわれています。春は「うつ病に注意しましょう」という意味でとらえるとわかりやすいでしょう。 うつ病とまでいかなくても春になるとなにか調子が悪くなることやなぜか落ち込むことなど経験したことはないでしょうか。 うつ病になると多彩な症状が出現してきます。どのような症状が現れるのかおもなものをみてみましょう。 ―うつ病の症状― ◇こころの症状 ・意欲、興味、集中力、やる気などが低下や消失する。 ・楽しみを感じない、気分が落ち込む、ものごとへの関心が薄れる。 ・イライラする、不安感を感じる。 ・遅刻や欠勤をしてしまう。以前できたことができない。学校や会社にいけない。 ◇からだの症状 ・頭痛、胃痛、肩こり、耳鳴り、おなかの調子が悪くなる。 ・動悸、過呼吸、生理不順。 ・寝つきが悪くなる、眠りが浅く目がすぐ覚めてしまう。 ・食欲が落ちるもしくは増加する。飲酒量や喫煙量が増える。 これらの症状が複数みられて2週間以上にわたり長引く場合にうつ病を疑います。 自殺者の統計を見てみると1年の中で5月が一番多いことが分かっています。春のうつ病との関連も疑われています。 -五月病とうつ病の違いはなに- うつ病と同じような症状がみられる「五月病」といわれる病気があります。よく耳にしますよね。五月病は正式な病名ではなく「適応障害」のひとつです。生活環境の変化にうまく適応できないことが原因になります。 五月病とうつ病は大きな違いがあります。五月病の多くは一過性のもので原因を自分でなく周囲に求めるのが特徴です。ゴールデンウィーク明けから6月ごろに発症します。五月病は適応障害なので環境に慣れると自然になおるといわれています。 うつ病の場合には原因を自分に求めてしまいます。自分を責めてしまうことからうつ病が重症化すると自殺につながっていくことが知られています。 たとえば、仕事がうまくいかなくて体調を崩したのは「仕事が自分にあわない」からだと考えるのが五月病、「自分がいけないんだ」と自分を責めてしまうのがうつ病です。注意しておきたいのは五月病がきっかけとなってうつ病に発展してしまうケースもあります。 春になってなにか気分がすぐれない、体調がいつもより悪いなと感じたらどうすればいいのでしょうか。 [なにかおかしいなと感じたら] 自分のからだがなにかおかしいなと感じたときにはからだの調子も戻すためにできることを試してみるのもいいかもしれません。一般的なことですができなくなっていませんか。 リラックスする お風呂にのんびりはいる、アロマを使用する、好きなことに没頭する、音楽を聴くなど自分がリラックスできることをやってみましょう。ゆっくりと腹式呼吸をするのもリラックスにつながります。 からだをうごかす 散歩やストレッチするなどの軽い運動で構いません。外にでて陽の光を浴びるのがいいといわれています。近所をのんびり散策してみるのがいいかもしれませんね。 睡眠をとる なかなか眠れないときは眠ろうとするほど眠れなくなっていろいろなことが頭に浮かんできますよね。とはいえ長時間の睡眠をとらなくてはいけないと考える必要はありません。 人間は横になって目を閉じているだけでもある程度の休息効果は得られます。どうしても睡眠に支障が出る場合にはお医者さんに相談しましょう。 食事を楽しむ かたよった食事や早食いはこころにもからだにもよくありません。いろいろなものをバランスよくゆっくり食べるのが大切です。食事を楽しんでみることも考えてみてください。 できそうなことからをやってみましょう。「〇〇しなくてはならない」のように無理はしないようにします。自分で抱え込まずにほかの人に頼るというのも一つの方法です。 うつ病が進んでしまうとなにもやる気が起こらなってしまいなにをするのもむずかしい状態になってしまいます。 症状が気になる、長引く、つらくてがまんできない、なにもやる気が起きないときには我慢せずに心療内科や精神科を受診しましょう。 なかなか行きづらいと思う方もいるとは思います。学校、会社、自治体ではこころの窓口のようなかたちでカウンセラーを設けているところが数多くあります。最初にカウンセラーの方と話してみるのもいいかもしれません。 お医者さんを受診する場合には心療内科や精神科の多くは予約制です。まずは病院に電話して相談してみましょう。 春のうつ病は春が過ぎれば治るという方もいますがうつ病が改善しないことや悪化してしまうことは少なくありません。そうならないためにも早めの受診をおすすめします。   Continue Reading ->

種々の抗うつ薬の効果と安全性の比較

うつ病の患者数は増加傾向にあり、16人に1人が生涯でうつ病を経験するともいわれるほど身近な疾患です。早めに治療を始めるほど回復も早いといわれており、無理せずに専門機関に相談し、適切な治療を受けることが大切です。 写真はイメージです。 photo by photo AC うつ病とは 誰しもが、気分の落ち込みや意欲の低下を感じることがありますが、うつ病は、そのような日常で感じる一時的な感情の起伏とは異なります。 発現する症状は人によって違いますが、言葉では表現しようのないほど気分が重い、何に対しても興味がわかない・楽しくないなどの状態が、ほぼ一日中感じられ、2週間以上続くことが、うつ病と診断するめやすとなります。精神的な症状以外にも、睡眠障害や食欲の低下、倦怠感、動悸などを感じることもあります。 うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレス、環境の変化などさまざまな要因が重なり、脳の機能障害が起きている状態です。 脳内の情報伝達には、多くの神経伝達物質が関わっていますが、うつ病では、何らかの原因で神経細胞間のセロトニンとノルアドレナリンの量が減少していることが報告されています。これらの神経伝達物質は、気分や意欲、記憶などの人の感情にかかわる情報をコントロールしていると考えられており、減少することで情報が上手く伝達できず、さまざまな症状があらわれると推測されています。 写真はイメージです。 Continue Reading ->

単極性うつ病の再発防止に対する薬物療法 リチウムの単独投与が有効

写真はイメージです。photo by Mateus Lucena うつ病は年々増加しており、現在15人に1人は人生の中でうつ病にかかることがあると言われています。治療により回復することが多い疾患ですが、中には再発や重症化して入院が必要となることもあります。 うつ病は単極性障害と双極性障害にわかれる うつ病は単極性障害と双極性障害に分類されます。一般的に単極性障害のことをうつ病、双極性障害を躁うつ病と呼びます。 単極性障害は気分が沈む、眠れないなどのうつ状態がみられるのが特徴です。脳が上手く働かなくなるため、物事を否定的にとらえてしまいます。 発症の原因はいまだ解明されていませんが、様々な因子が影響しあい発症すると考えられています。仮説はいくつかありますが、うつ状態の脳内ではセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が欠乏し、神経細胞間で上手く働かなくなっていることが原因のひとつと考えられています。 このことから、単極性うつ病の治療にはセロトニンやノルアドレナリンが神経細胞間で増えるように働きかける抗うつ薬が主に使用されます。また、症状に合わせて抗不安薬や睡眠導入薬が用いられることがあり、患者さん一人一人に合った治療法が選択されます。 双極性障害には躁状態がある 一方で双極性障害ではうつ状態に加えて、躁状態がみられます。躁状態では気分が高まり、まったく眠らずに活動を続ける、散財をする、誰かれ構わず話しかけるといった症状がみられることがあります。双極性障害では躁状態とうつ状態が繰り返しみられるのが特徴です。 双極性障害の発症にもストレスや遺伝などさまざまな因子が関わると考えられていますが、詳しくは解明されていません。脳内での変化もいくつか仮説がたてられていますが、どれも明確には解明されていない状態です。 双極性障害は治療を放置すると再発する危険が高い疾患のため、長期的な治療が必要となります。双極性障害の治療にはドーパミンなどの神経伝達物質を遮断する作用のある抗精神病薬や気分の波を抑える作用をもつと言われる気分安定薬が主に使用されます。また、気分安定薬には再発を抑える作用もあると言われています。 特にリチウムは近年、双極性障害の再発予防だけではなく、重度単極性障害の再発予防にも効果があるのではと期待されています。 単極性障害の再発予防治療 双極性障害と同じく、重度の単極性障害でも再発が問題となります。しかし、単極性障害の再発予防における薬物治療についてはあまり研究がされていませんでした。 そこで2017年6月に発表された論文「Pharmacological Continue Reading ->

マウスの実験でうつ病を改善する新たな可能性

  長期間ストレスにさらされ続けていると、知らず知らずのうちに心に大きな負担がかかって身体的にも影響が出てくることがあります。 今まではできていたことができなくなり、楽しかった趣味にも関心を持てなくなってしまったら本当に辛いものです。 今回、マウスを用いた実験でうつ病を改善する新たな可能性を示唆する結果が、明らかになりました。 セロトニン3型受容体があらたな治療のカギに 現在、うつ病患者さんの治療の1つに選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Continue Reading ->

セロトニントランスポーター遺伝子とうつ病は関係していない

毎朝の満員電車、失敗できない仕事、人間関係など、日々の生活の中でストレスを感じることは多いと思います。 「ストレスを感じると甘いものを食べたくなるのは脳の中のセロトニンが不足するからだ」 と聞いたことがある人も多いかと思いますが、今回、セロトニンとうつ病の関係を大きく見直すことになる研究結果が発表されました。 セロトニントランスポーター遺伝子とうつ病に関係性なし うつ病の患者さんに「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」と呼ばれる抗うつ薬を投与すると、うつ病の症状を緩和できることから、これまで多くの研究者たちは「セロトニントランスポーター遺伝子がうつ病の発症リスクと関連している可能性が高い」と考えていました。 しかし、過去10年あまりのデータをワシントン大学医学部の研究者たちが分析したところ、セロトニントランスポーター遺伝子とストレス、うつ病に明確な関係性を認めませんでした。 今回間違いを指摘された論文は、2003年から現在まで4000回以上も引用されています。 この研究論文を引用した「セロトニントランスポーター遺伝子」「ストレスのかかる生活習慣」「うつ病リスクとの関連性」といったテーマの論文が100件以上発表されたことが原因と考えられています。 今後のうつ病の治療に変化が 今回の研究では、これまで考えられてきた「セロトニントランスポーター遺伝子がうつ病と関係している」ということを否定していますが、「ストレスとうつ病は関係していること」「遺伝学がうつ病に関係していること」は分析からも明らかです。 特定のセロトニントランスポーター遺伝子がうつ病と関係ないという研究結果が出されたことで、「うつ病発症に影響を与える可能性のある他の遺伝子や環境に焦点を当てることができるようになる」と考えられています。 参照:Nature Continue Reading ->