日本で、「身体のなかに隠された異物」という言葉を聞くと漫画のなかの物語を連想するかもしれませんが、ときどき耳にする貴金属や薬物の密輸から考えてみると、案外ひとごとではないかもしれません。
写真はイメージです。 photo by pixabay
今回は、サランラップとコンドームに包まれたコカインを飲み込んだ20歳の拘留中の白人男性が、身体からなんとか出そうとしたもののどうすることもできずに、医者に助けをもとめたお話です。
Biomedcentralの症例報告からです。
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今回紹介する患者さんは、スイスのジュネーブに収容されていた20歳の白人男性です。彼には、2人の兄弟がいて、若いときに学校をやめ、収容されていたときには、母親といっしょに暮らしていました。
彼には、左の手首に最近みとめた外傷があったため、検査のために大学病院に連れていかれました。
検査の際に、みずから違法薬物の摂取をみとめ、伝えられたところによるとこのように話しています。
サランラップとコンドームによって包まれた、コカインを飲み込んだあと、仲間のアドバイスをもとに
「毎日3リットル以上の水を飲んだり、オリーブオイル、下剤を摂取して、肝臓に温かいタオルをあてたり、しまいには押し出すのを期待してリンゴの塊を食べた」
それにも関わらず、普段の排便以外には、認められなかったそうです。
その際に、認めたCT画像がコチラ
photo by Biomedcentral
矢印のさきに、のみこんだ異物を認めています。
5日間胃液にさらされていたため、ゴムの破損を心配したため、制酸剤を投与したのちに、安全性を考慮し、手術に踏み切りました。
腹腔鏡の手術をおこない、一命をとりとめています。
photo by Biomedcentral
異物は、ゴムに包まれたまま丸ごと摘出されています。手術4日後に退院して、また、刑務所に戻ったそうです。
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こういった患者さんは英語でbody stufferと呼ばれます。
Body stufferの治療においては、異物除去後も十分な観察期間をもって退院すること、十分な画像検索で身体のなかの異物がどこにどれくらいあるのかを確認すること、今回のように異物がラテックスに包まれている場合には、破損のリスクに十分気をつけることなどが指摘されています。
写真はイメージです。 photo by photo AC
医療的な問題のみに焦点をあてて考えてみると、こういったなかなかあらかじめ想像できないことが、実際の医療現場ではまったく起きないとはいいきれません。
どんな状況であれ、安全で安心な医療を提供することが、医療従事者にはもとめられます。今回のような事態が起きないことが望ましいですが、念のための対応方法は頭の片すみに置いておくのがいいかもしれませんね。
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