TRF-ブデソニドがIgA腎症の治療に有効という報告

IgA腎症は、糸球体に慢性的な炎症がみられる腎臓の疾患であり、難病に指定されています。

決して予後がいいと言える疾患ではなく、より効果的な治療法が望まれています。

2017年3月に発表された論文で、ブデソニドがIgA腎症に有効な治療薬となる可能性を報告しています。

 

ブデソニドは気管支喘息、クローン病の治療に使われている

 

 

ブデソニドは現在、気管支喘息の治療に用いられており、吸入薬であるパルミコートやシムビコートに配合されています。

ブデソニドは合成副腎皮質ステロイドの一種であり、免疫抑制作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用をもちます。

初回通過効果を受けやすく、局所で強い効果を発揮しますが、全身への作用は弱いことが特徴です。

最近では、腸溶性の内服薬として活動期のクローン病の治療にも用いられるようになりました。

IgA腎症の病態と検査

 

 


IgA腎症は、本来からだを守るために働いている免疫グロブリンA(IgA)が、

免疫グロブリンG(IgG)と複合体を形成し何らかのきっかけで腎臓の糸球体に沈着することで発症する疾患です。

詳しい原因についてはいまだ解明されていません。

初期の段階では自覚症状が出ないため、多くは検尿などがきっかけでタンパク尿や血尿が指摘され判明します。

自覚症状がない一方で、沈着した複合体は炎症を引き起こし、上手く働かなくなる糸球体がゆっくりと増えていきます。

IgA腎症の経過と治療


上手く働かない糸球体が増えると腎臓の働きも低下するため腎不全となり、命をも脅かす病気へと進行していきます。

発見されたときの腎状態によりますが、

発症後10年で末期腎不全にいたる確率は15~20%、20年では40%弱が末期腎不全にいたると報告されています。

IgA腎症の治療では、通常、レニンアンジオテンシン系阻害薬、ステロイド薬、免疫抑制剤などの治療薬や

生活習慣の見直し(禁煙、減塩など)が行われますが、いまだ治療法は確立していません。

IgA腎症にブデソニドが有効という結果


今回の論文では、回腸遠位部に到達するよう設計されたブデソニド(TRF-ブデソニド)を用い、IgA腎症に対する効果を解析しています。

レニンアンジオテンシン系阻害薬を服用しているにも関わらず、タンパク尿やIgA腎症所見のみられる18歳以上の患者を対象に、

レニンアンジオテンシン系阻害薬服用下においてのTRF-ブデソニドとプラセボの効果を比較しています。

服用から9カ月後の尿たんぱくを測定した結果、

TRF-ブデソニドを16mg/日服用した群、8mg/日服用した群いずれも25%前後の尿たんぱくの減少がみられました。

一方、プラセボを服用した群では2.7%の尿たんぱくの増加がみられる結果となりました。

有害事象はTRF-ブデソニド服用群において約85%の患者に発現しました。

TRF-ブデソニドがIgA腎症患者のタンパク尿を改善


今回の結果から、レニンアンジオテンシン系阻害薬併用下においてTRF-ブデソニドがIgA腎症患者のタンパク尿を改善することがしめされ、

末期腎不全への進行を抑制する効果があることが示唆されました。

TRF-ブデソニドが、腸粘膜の免疫をターゲットにIgA腎症の症状を改善する最初の特異的治療薬となる可能性がしめされました。

今後さらなる研究により、IgA腎症に効果的な薬が患者のもとに届くことが期待されます。


参照:The Lancet

 

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