イマチニブによるKIT阻害が難治性気管支喘息に及ぼす影響


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現在、日本には気管支喘息に罹患している患者さんが数百万人いると言われています。気管支喘息というと子供が発症するイメージがありますが、大人になって初めて発症する場合もあり、年代問わず発症する可能性のある疾患です。気管支喘息の発症人数は年々増加傾向にあり、今後さらなるメカニズムの解明および治療の開発が望まれています。

気管支喘息 病態と治療

気管支喘息では、気道の過敏性亢進を伴う慢性炎症がみられます。

気道に炎症が継続して起こり、刺激に対して過敏になることで、少しの刺激に反応し発作的に気道が狭くなります。このことにより、呼吸困難や喘鳴、咳症状が発現します。

どのように気道に炎症が起きるのかについては、いまだはっきりとはわかっていませんが、アレルギー反応により発症する場合とそうではない場合に分けられると言われています。

発作を繰り返すと、気道の内側が傷つき、不完全な修復(リモデリング)が不可逆的に進行すると言われています。リモデリングが起こると気道が常に狭まった状態となり、発作が出やすくなるだけではなく、薬も効きづらくなることが知られています。

気管支喘息では、発作が起きてから薬を使うだけではなく、炎症をしっかりと抑えてリモデリングを起こさないように長期的に治療でコントロールすることが大切になります。

気管支喘息の治療は主に薬物療法を行います。基本的には抗炎症作用の強い吸入ステロイド薬が第一選択となりますが、症状によりテオフィリン製剤、長時間作用型β2刺激薬などの気管支拡張薬を組み合わせて使用することもあります。また多くの場合、発作が起こった場合の対処として短時間作用型のβ2刺激薬が一緒に処方されます。

気管支喘息では発作が起きないよう症状をコントロールすることが必要であり、症状がなくても医師の指示通りしっかりと継続して治療を行うことが大切です。

難治性気管支喘息の治療

多くの患者さんは吸入ステロイドなどの治療薬によりコントロールができますが、中には治療を行っても発作を頻回に繰り返したり、息切れがみられたりと生活に支障をきたす難治性気管支喘息の患者さんもいらっしゃいます。難治性気管支喘息患者さんの場合、ステロイド投与を行っても気道内にマスト細胞が存在し続けることが確認されており、マスト細胞がコントロール不良、QOL低下に関与することが有力視されています。

しかし、難治性気管支喘息のメカニズムはいまだ不明なところも多く、詳細なメカニズムの解明が求められています。

そこで、2017年5月に発表された論文「KIT Inhibition by Imatinib in Patients with Severe Refractory Asthma」ではKIT(幹細胞因子受容体)阻害作用を有するイマチニブが難治性気管支喘息患者さんの気道過敏性と気道内マスト細胞にあたえる影響について報告しています。

薬物療法をうけているにも関わらずコントロール不良な難治性気管支喘息患者さんを対象に、イマチニブまたはプラセボ投与群に分け、24週間投与を行い解析しています。

その結果、イマチニブ投与群ではプラセボ投与群に比べて、大幅な気道過敏性の低下がみられました。また、気道内のマスト細胞数は両群ともに低下がみられたものの、マスト細胞活性化のマーカーとなる血清トリプターゼのレベルをみるとイマチニブ投与群で大幅な低下がみられました。

このことから、難治性気管支喘息にはKIT依存的なマスト細胞の活性が寄与していることが示唆されました。

今後さらに研究がすすめられ、新しい治療法が確立されることが期待されています。

参照:NEJM

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