コールドポリペクトミー 大腸ポリープの新しい切除方法が広がってます

[大腸がんとポリープ]

日本では、近年、大腸がんが増加しています。はっきりとした原因はわかっていませんが、食生活、喫煙、運動不足などの生活習慣やストレスなど関係すると言われています。

大腸がんは、大腸ポリープからがんが発生するものと直接粘膜からがんが発生するものに分けられます。

大腸ポリープは、小さい間は無症状で経過します。集団検診などの便潜血検査陽性、人間ドックもしくは血便などをきっかけに発見されます。大腸ポリープと言われて驚かれた方もいらっしゃると思います。この大腸ポリープについてみていきましょう。

[大腸ポリープとは]

大腸ポリープは大腸の粘膜からその内側に、主にいぼ状に盛り上がったものです。腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられます。

腫瘍性ポリープは腺腫性ポリープとも呼ばれ、大部分ものは良性で大きさは変わりません。徐々に大きくなるものもあり、大きくなるにつれてがん化する可能性が高くなります。また、腺腫であっても盛り上がらずに、平坦もしくは陥凹したタイプもあります。このタイプは一般的に悪性度が高いと言われています。

非腫瘍性ポリープには、炎症性ポリープ(炎症性腸疾患に起因するもの)や過形成性ポリープ(加齢に起因するもの)があり、ほとんどのものは良性とされています。

[大腸ポリープの対応は]

大腸ポリープはサイズが大きくなるにつれてがん化する可能性が高くなります。

放っておいてポリープが消失することはほとんどなく、大腸内視鏡を使用した治療になります。

切除する方法は、従来より、以下の方法があります。

ホットバイオプシー
鉗子(内視鏡検査で組織の一部を採取する時使用される器具)を使用してポリープをつまみ、高周波の電流を流して焼き切ります。5mm以下の小さなポリープが複数ある場合などに使われます。
ポリペクトミー
ポリープの下の粘膜下層に内視鏡の先端から注射針を出し、生理食塩水を注射してコブ状にします。ポリープの根本に内視鏡の先端から出したワイヤー(スネア)をかけて、高周波の電流を流して焼き切ります。

※これらの方法は、病変が粘膜に限定されているものに対する治療法です。粘膜の下層まで及んでいる場合には「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」などが用いられます。

※日本消化器病学会ガイドラインでは、5mm以上のポリープを切除対象、それ以下の大きさのポリープは経過観察としています(形状がいびつなものは大きさに関わらず切除対象になります。また、発見したポリープは、すべて削除するという考え方もあります)。

いずれの方法も高周波の電流を流して焼切り、出血を防ぐためにクリッピングなどを行いますが、高周波の電流を使用しますので切除した部分は火傷して傷ついたことと同じです。そのために偶発症(出血、穿孔)を起こすことがあります。

出血

傷は粘膜の下に位置する粘膜下層まで及びます。切除部分の粘膜下層に血管があると血管を傷つけ、「後出血(晩期出血)」を起こす場合があります。術後3日目ぐらいまでに起こすことが多いと言われています。頻度としては1%程度です。

穿孔

切除した部分が深くまでおよんでしまった場合などに発生します。術中~術後7日目までに発生します。施術者のテクニックに依存します。頻度としてはまれですが、腸穿孔を起こすと、腹膜炎、敗血症を起こし、最悪の場合には死に至ります。

高周波の電流を使用するために、心臓にペースメーカーを装着している、金属製のステントが体内にある場合に適応が難しい場合もあります。

また、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を使用している患者には、偶発症による出血の危険が高まることを考慮しなくてはなりません。

以上のような問題を解決する手段として、コールドポリペクトミーとういう手術(手技)が急速に広まりました。

[コールドポリペクトミーとは]

コールドポリペクトミーは高周波の電流を使用せずに、大腸の粘膜の皮一枚をはぎ取るように切除する方法です。粘膜下層を傷つけることはありません。

コールドポリペクトミーの適応となるポリープは大きさが1cm未満の腫瘍性ポリープです。大きさ1cm以上のポリープは取り残しや出血などの危険性が高くなるので対象外になります。また、大きさが1cm未満でも発生部位や形状により、対象とならない場合があります

コールドポリペクトミーには2つの方法があります。

コールドフォーセプス・ポリペクトミー
大きさが3mmから4mm以下のポリープが対象になります。検査用鉗子もしくはポリープ切除用の鉗子を用いて 摘み取ります。
コールドスネア・ポリペクトミー
ポリープの根本に内視鏡の先端から出したワイヤー(スネア)をかけて締め付けるように切除します。

術中に出血がみられますが、数分で止血します。粘膜のみの切除ですので、治りも早く、後出血や穿孔の危険性は、ほとんどありません。血液をサラサラにする薬を服用していても、粘膜層にある太い血管を傷つけることがないので、後出血の危険性は極めて低いとされています。

術後の偶発症発生などの観察のためなどに、高周波の電流を流して焼切る方法の場合には、入院の必要がある場合もあり(病院の治療方針により異なります)、術後の食事制限、運動制限、活動制限も1週間程度必要なります。コールドポリペクトミーは、原則、入院の必要がありません。また、いろいろな制限についても術後の3日間程度です。

施術する側も、手技時間(粘膜下層への局部注射、通電、クリッピングなどが不要)や準備時間が短縮されます。複数のポリープを切除する場合に、複数箇所での偶発症のリスクを冒すことなく、手早く、手術も可能です。

コールドポリペクトミーは、当初は、取り残しがないように十分に余裕を持って病変を切除することが求められ、時間がかかることがありましましたが、コールドポリペクトミー専用にデザインされた切除器具が開発され、効率的な切除が可能になっています。

[積極的に集団検診、人間ドックの受診を]

現在、コールドポリペクトミーは、多くの病院で実施されています。施術者、患者さんともに負担の少ない方法です。保険適用にもなっています。

大腸がんが発生する可能性あるポリープを小さいうちに切除してしまえば、大腸がん自体の予防につながります。それには、自ら進んで、集団検診や人間ドックをうけて、早期の発見を心がけることが大事になります。

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