単極性うつ病の再発防止に対する薬物療法 リチウムの単独投与が有効


写真はイメージです。photo by Mateus Lucena

うつ病は年々増加しており、現在15人に1人は人生の中でうつ病にかかることがあると言われています。治療により回復することが多い疾患ですが、中には再発や重症化して入院が必要となることもあります。

うつ病は単極性障害と双極性障害にわかれる

うつ病は単極性障害双極性障害に分類されます。一般的に単極性障害のことをうつ病、双極性障害を躁うつ病と呼びます。

単極性障害は気分が沈む、眠れないなどのうつ状態がみられるのが特徴です。脳が上手く働かなくなるため、物事を否定的にとらえてしまいます。

発症の原因はいまだ解明されていませんが、様々な因子が影響しあい発症すると考えられています。仮説はいくつかありますが、うつ状態の脳内ではセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が欠乏し、神経細胞間で上手く働かなくなっていることが原因のひとつと考えられています。

このことから、単極性うつ病の治療にはセロトニンやノルアドレナリンが神経細胞間で増えるように働きかける抗うつ薬が主に使用されます。また、症状に合わせて抗不安薬や睡眠導入薬が用いられることがあり、患者さん一人一人に合った治療法が選択されます。

双極性障害には躁状態がある

一方で双極性障害ではうつ状態に加えて、躁状態がみられます。躁状態では気分が高まり、まったく眠らずに活動を続ける、散財をする、誰かれ構わず話しかけるといった症状がみられることがあります。双極性障害では躁状態とうつ状態が繰り返しみられるのが特徴です。

双極性障害の発症にもストレスや遺伝などさまざまな因子が関わると考えられていますが、詳しくは解明されていません。脳内での変化もいくつか仮説がたてられていますが、どれも明確には解明されていない状態です。

双極性障害は治療を放置すると再発する危険が高い疾患のため、長期的な治療が必要となります。双極性障害の治療にはドーパミンなどの神経伝達物質を遮断する作用のある抗精神病薬や気分の波を抑える作用をもつと言われる気分安定薬が主に使用されます。また、気分安定薬には再発を抑える作用もあると言われています。

特にリチウムは近年、双極性障害の再発予防だけではなく、重度単極性障害の再発予防にも効果があるのではと期待されています。

単極性障害の再発予防治療

双極性障害と同じく、重度の単極性障害でも再発が問題となります。しかし、単極性障害の再発予防における薬物治療についてはあまり研究がされていませんでした。

そこで2017年6月に発表された論文「Pharmacological treatments and risk of readmission to hospital for unipolar depression in Finland: a nationwide cohort study」では入院歴のある単極性障害患者さんの再発予防における薬物治療の有用性について報告しています。

このコホート研究では入院歴のある単極性障害患者さんの入院や死亡率、服用薬などのデータをもとに解析を行っています。

その結果、リチウムを服用していた群では服用していなかった群に比べて再入院のリスクが低下していました。一方で抗うつ薬、抗精神病薬の服用は再入院のリスクには影響を及ぼしませんでした。また、リチウムを単独で服用している群の方が、リチウムと抗うつ薬を併用している群に比べて再入院のリスクは低くなりました。死亡率をみると抗うつ薬の使用中が最も低い結果となりました。

このことから、リチウムの単独投与が再入院のリスクが最も低い薬物療法となることが示唆されました。

今後も研究が進み、うつ病の再発を抑える治療法が確立することが期待されます。

参照:The Lancet

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