ムカデに噛まれたときに有効な処置法とは?

ムカデは温かくなると活動し始め、夏には多くの被害が報告されます。命に関わることはほとんどありませんが、噛まれた場合には適切に処置することが大切です。


写真はイメージです。 photo by pixabay

噛まれたときに出る症状

ムカデは、頭部の毒爪に毒をもっており、この毒をつかって他の昆虫などを捕食する節足動物です。おもに、湿った場所に生息しています。

ムカデは昆虫だけではなく、人間にも噛みつくことがあるため注意が必要です。鋭いアゴで噛みつくだけではなく、毒を注入するため、様々な症状が発現します。

ムカデの毒にはヒスタミンやセロトニンなどが含まれており、これにより激しい痛みが生じます。また、患部が熱感をもって腫れあがり、痒みが出ることもあります。症状が重い場合には、患部がただれたり、壊死を起こすことも報告されています。

一番注意しなければいけないのが、アナフィラキシーショックです。稀ではありますが、人によっては、ムカデの毒に対して身体がアレルギー反応を起こし、アナフィラキシーショックが起こる場合があります。アナフィラキシーショックは命に関わる危険性があるため、発熱や頭痛、吐き気などの全身症状が出たら、なるべく早く受診することが大切です。


写真はイメージです。 photo by photoAC

有効な処置法とは

ムカデに噛まれたときの応急処置として、毒は熱に弱いため、43度以上の温水で患部を数十分洗い流すことや、抗ヒスタミンやステロイドが含まれた外用薬を塗布することなどが推奨されています。しかし、どの処置がもっとも有効であるのか、はっきりとはわかっていません。

そこで、「Comparisons of ice packs, hot water immersion, and analgesia injection for the treatment of centipede envenomations in Taiwan」では、冷却する方法と温水に浸す方法、鎮痛剤の注射の3つの処置について有効性を比較しています。

この研究は、台湾で行われており、ムカデに噛まれた60人の患者さんを対象に、氷を使い冷却する群と、温水に浸す群、鎮痛剤を注射する群に分け、処置前と処置後15分の痛みの変化について解析しています。痛みの評価には、視覚的評価スケールであるVASを用いています。

全患者さんが処置前に痛みを訴え、腫脹、紅潮、熱感、水疱形成のみられた患者さんもいました。処置15分後の痛みの改善(⊿VSA)を比較したところ、冷却群で⊿VSA =2.55±1.88、温熱群で1.55 ± 1.68 、鎮痛剤注射群で2.33 ± 1.78 となり、3群間で有意差はみられませんでした。

このことから、冷却、温熱、鎮痛剤投与のどの方法でも、ムカデに噛まれたことによる痛みをほぼ同等に改善することが示唆されました。筆者たちは、安価で安全、非侵襲的な処置法であるとして、氷を使った冷却を勧めています。

 

しかし、日本では、患部を冷やすと腫れや痛みが長引く傾向があると報告されていることや、ショック症状が起こる危険性があるとして、冷却療法は推奨していません。また、台湾と日本では、ムカデの種類や、温熱の方法など、いくつか違いがあることが考えられ、今回の結果をみて一概に冷却が効果的であるとは言えません。今後、日本でも同様の研究がされることが望まれます。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました