自閉症スペクトラム障害と統合失調症の見分けは難しい!事例を挙げて解説します

自閉症スペクトラム障害(ASDと略されます)は65~100人に1人、統合失調症は100人に1人の発生率と言われており、どちらも珍しくありません。また、インターネットや書籍から多くの情報が得られるようになっており、注目度としては高いものと言えます。

自閉症スペクトラム障害と統合失調症はまったくの別物ですが、時に見分けが難しく、医師も診断に迷うことがあるのが現状です。まずは、自閉症スペクトラムと統合失調症の主な症状を紹介します。

 

自閉症スペクトラム障害とは

自閉症スペクトラム障害は、発達障害のひとつであり、以前の診断基準では、自閉症やアスペルガー症候群など、複数の障害に分けられていました。現在では、これらを統合したものが「自閉症スペクトラム障害」となっています。

主な症状には、「社会性の障害」、「コミュニケーションや言葉の障害」、「限定的な興味・こだわり」、「想像力の乏しさ」といったものがあります。これらは、対人関係の築きにくさや熟語の不自然な使い方、興味のあるものへの執着の強さ、相手の意図を察せないなどとして日常生活に表れます。

 

統合失調症とは

統合失調症は、以前は精神分裂病と呼ばれていました。思考や感情、行動をまとめる力が低下します。

主な症状には、「幻覚」、「幻聴」、「自閉」、「感情の平板化」、「被害妄想」などがあります。これらは、見えるはずがないものが見えたり、聞こえたり、引きこもりがちになったり、感情が乏しくなるなどの症状として表れます。また、「盗聴されている」などの妄想的な発言をすることがあります。

一見まったく違う症状にみえますね。では、どのようなところに見分けの難しさがあるのでしょうか。


写真はイメージです。 photo by flickr

見分けが難しい事例

「誰かが僕を見ている」

この一文から、自閉症スペクトラムと統合失調症のどちらを思い浮かべますか?おそらく後者だと思います。盗聴されている、見られているというのは統合失調症の症状のひとつなので、妄想的になっているのでは?と考える方が自然でもあります。しかし、自閉症スペクトラム障害でもこのような発言をすることがあります。実は、自閉症スペクトラム障害の中には感覚が過敏なタイプがあり、「被注察感(見られている感覚)」がある人も少なくありません。見られていると思われる方向を何度も振り向くパターンもあります。

もうひとつ事例を挙げてみます。

「わたしの考えていることが母に伝達されている」

こちらはいかがでしょうか。こちらも、統合失調症で妄想的になっているのでは?と考えるかもしれません。こちらの発言も統合失調症の症状の一部です。しかし、自閉症スペクトラム障害でもこのような発言をすることがあります。統合失調症との大きな違いは「ニュアンス」です。統合失調症の場合は、現実にあるものとして生々しい体験をしていることがほとんどですが、自閉症スペクトラム障害の場合は、独特の表現方法であることが多いです。この例でいうならば、思考の情報がそのまま伝わっている体験をしているのか、自分の思考が母親にはよく分かられていると表現したいのかという違いがあります。

似たような症状ですが、「ニュアンスが違う」ことがポイントになります。

 

具体的な見分け方は?

具体的な見分け方は、診断をする医師によって異なります。経験や知識から診断する医師もいますし、臨床心理士に心理検査を依頼し診断の手がかりにする場合もあります。

自閉症スペクトラム障害のかたが、ストレスなどによって統合失調症を発症するケースもありますので、併発している可能性を視野に入れるとさらに診断が難しくなる場合もあります。


写真はイメージです。 photo by pixino

患者さんと医師との情報交換や話し合いが正しい診断、正しい治療へ繋がります。

 

 

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