児童養護施設における食の管理

児童養護施設でも一般家庭と同じく食物アレルギーの子どもがいます。施設に入ってくる前にお菓子とカップ麺ばかり食べていた子が、施設で手作りの食事を口にしたとたんにアレルギーが出ることもあります。また、アレルギーが出ているのにお父さんお母さんが症状に気づかず、治療がされてこなかったケースもあります。

アレルギーで多いのは卵と牛乳です。それから小麦大豆という場合もあります。新規入所の子どもは体調全般についてしばらく見ていくことになります。アレルギー対策は医師のアドバイスに基づいて摂取を避けるか、あるいは量をコントロールするかします。

 


写真はイメージです。 photo by WIKIMEDIACOMMONS

子どもの摂取する栄養素やカロリーは、栄養士によって計算されて作られていますので、ただ抜けば良いということにはなりません。一般家庭であればその子ども専用の食事が用意されるでしょうが、数十人あるいはもっと多くの子どもが暮らす施設では、完全に専用のメニューを出すのは難しく調理のアレンジを工夫して対応します。

なるべくいろんな食事をバランスよく食べてもらえるように、主任栄養士、調理担当、そして子ども担当の職員とで話し合って食事内容を決めていきます。また、必要に応じて子どもが通う学校、幼稚園にもアレルギー配慮のお願いをすることになりますが、これは一般家庭がやられていることと同じです。

施設では、たいてい子どもがアクセスできるところに冷蔵庫があります。部活動などで帰りが遅くなり食事を後から取る子もいますから食材をしまっておきます。牛乳も冷蔵庫に入っているのですが、牛乳アレルギーの子どもでも牛乳が好きな子がいます。どうしても飲みたくなります。我慢してもらうしかありません。卵が好きな卵アレルギーの子もいます。どうして自分の食事に卵焼きがないのと不満顔になります。よく理由を話してわかってもらいます。これも子どもと大人のコミュニケーションになります。

さてアレルギーも重要な問題ですが、子どもたちの食事において一番大切なのは安全です。食中毒は絶対に避けなければいけないことです。細心の注意が必要となります。夕食の時間にいる子どもは皆一緒に食べますが、帰りが遅くなって後から食事をすることも多いですし自室でぐずって食事に出てこない子どももいたりします。

その結果、食事の保存状態が悪ければ危険です。基本的には、時間を決めて廃棄することになります。一方食材を捨てるということは、子どもの教育上もあまり好ましいとは言えません。そこはいかに子どもたちに完食してもらうか職員と子どもとのコミュニケーションが大切になります。嫌いなものでも少しだけでも食べようね、と子どもには働きかけます。

 


写真はイメージです。 photo by flickr

食中毒で特に注意しないといけない食材はやはり生ものです。お刺身が好きな子どもも多いのですが、児童養護施設で積極的に刺身などを提供するところはあまりなく、まったく生ものを食事に出さないという施設もあります。

残念なことですが、食事の予算も限られていますので無理して出してそれで廃棄となっては勿体ないという面もあります。施設でもイベントで外食をする機会は年に何度かありますが、その場合の一番人気はお寿司です。もちろん回転寿司ですが、その時子どもたちはびっくりするような食欲を披露します。

施設では基本的に調理担当者が食事を作りますが、調理担当が休みの場合、また病気の子どものうどんお粥など、職員が食事を作ることもあります。職員も調理の際にはエプロン帽子など定められた服装をして、手洗い励行して調理を行います。食材にさわる可能性がある職員は毎月検便の義務もあります。日本の児童養護施設で、食中毒を出したという実例はほとんど聞かなかったのですが、昨年九州で一件出ています。大事には至りませんでしたが、一層の注意が必要と思われます。

食事は、こどもと職員と一緒に取ります。食事中はテレビは消して会話をしながら食事をします。学校での部活とかイベントの話題が多く、子どもたちに学校の話してもらう良い機会でもあります。職員は聞き役で子どもたちになるべく自由に話してもらうようにしています。

児童養護施設は食育という言葉を大切なテーマとしています。楽しく美味しく食事をするというのはささやかな幸福感を得る方法です。家ではテレビを見ながら出来合いのものを黙って食べていた子どもたちに、手作りの料理を毎日提供して楽しいと感じる食事の時間を持ってもらえたら、そして子どもたちに自分は大切にされていると考えてもらえれば食育は成功です。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました