WHOのアルコールの政界戦略 アルコール問題-ドイツの現状は 

[世界のアルコール事情]

世界183ヶ国の国民1人当たりの年間アルコール消費量(2016年)のランキングでは、アルコールの消費量が多い国はというとヨーロッパ諸国になります。ベスト10は全てヨーロッパ諸国、ベスト20では19ヶ国、ベスト30まで拡げても26ヶ国がヨーロッパ諸国です。とくに東欧、中欧諸国の消費量の多さが目立ちます。ちなみに、日本は59位、アジアで一番多い国は韓国の35位です。

それぞれの国の文化、歴史、慣習、宗教、アルコールに対する体質、飲まれるお酒の種類などにも影響されるので、それぞれの国を同じラインの上に並べて考えられるものではありません。しかし、アルコール消費量の多い国ではアルコールが原因の犯罪、自殺、健康被害が多く発生しているのが現状です。

[ヨーロッパでの取り組み]

このような状況から、53のヨーロッパのWHO加盟国は2011年に「アルコールの有害な使用を減らすための欧州行動計画/2012-2020」を採択しました。

これは2010年にWHOの総会で承認された「アルコールの有害な作用を低減するための世界政略」で示された「10の分野」を受けて作られたものです。

行動計画は10の具体策からなっています。おもに、価格政策、自動車運転者へのアルコール制限、アルコールが購入できる年齢制限や販売制限、アルコールに関するマーケティングへの規制強化などの手段によって問題に取り組んでいこうというものです。

[取組結果が検証された結果]

WHOは推奨されている10の具体策が各国でどれほど施行されているかの最初の検証を行いました。

2017年7月に「ArzteZeitung」に検証結果の一部としてアルコール問題におけるドイツの現状が公表されています。

写真はイメージです。photo by pixaboy

検証の結果、ドイツが多くの分野において平均以下もしくは最下位に位置していることが明らかになりました。

ドイツは10の具体策の中で、

飲酒運転に対する対策分野で30ヶ国中26位、アルコールの違法生産への対策分野で53ヶ国中52位、アルコール問題の啓発分野で29ヶ国中23位、職場内や地域内における予防への取り組み分野においても最下位付近です。アルコールの供給制限分野にいたっては最下位という結果でした。

比較的よかった項目はアルコールの販売活動の制限で30ヶ国中12位、アルコール消費時にもたらされる悪影響の削減で31ヶ国中15位のみでした。

ドイツ非伝染性疾病連合の議長Dietrich Garlichs医師は「この報告書により、アルコール消費量削減に対して早急に政治的対策を講じる必要があることが明確になった」と述べ、ドイツがん研究センターのがん予防部門責任者Ute Mons医師は「アルコールに対する税金の増額、アルコールの販売および消費における年齢制限を18歳以上に統一する」などの具体的な対策を求めています。

※ドイツで飲酒が認められる年齢は?
公共の場所におけるビール、ワイン、シャンパンの購入と飲酒は16歳から、アルコール度数の高いスピリッツ類の購入と飲酒は18歳から認めらています。親と一緒の場合にはビール、ワイン、シャンパンの飲酒は14歳から認められています。州法によって異なる場合があります。

ドイツではアルコール依存症患者を約180万人抱えています。予備軍はその数倍近くいるとされています。この対策としてアルコール依存症患者に対して必要と判断された場合に患者自身が通院できたり、リハビリ施設に入院し禁酒に向けて取り組めるというスムーズな対応が望まれています。

写真はイメージです。photo by pixaboy

ドイツの病院協会、年金保険組合、健康保険組合といった各団体が「再発リスクの軽減」を目標とした行動喚起をおこなっています。実施に向けての具体的な取り決めは各団体と国家レベルで進められる予定になっています。

WHOは報告書の中で、各国のアルコール防止を援助するための分析ツールの開発することを公表しています。2017年10月にリスボンで行われる依存症対策会議においても取り上げることになっています。

この結果は、単純に、ドイツが取り組みに遅れていると言うことではなく、先に述べたような文化、歴史、慣習などが大きく関わっていることが考えられます。

ヨーロッパでは欧州行動計画にもとづいて取り組みがおこなわれていますが、日本ではどのように取り組まれているのでしょうか。

[日本での取り組みは]

写真はイメージです。photo by ASHINARI

日本では、WHOによる世界戦略を受けて、アルコール関連問題の発生・進行・再発などを予防するための「アルコール健康障害対策基本法」を推進する取り組みが行われています。活動の取り組みについては「アルコール健康障害対策基本ネットワーク-略称:アル法ネット」で確認することができます。

ほかにも、厚生労働省が中心となり進めている「第ニ次健康日本21(厚生労働省ホームページ)」の中で、WHOによる世界戦略を指針として示す10の分野を踏まえて、アルコールが引き起こす健康問題から社会的問題までの広い範囲をカバーできるように対策として取り込まれています。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました