侮れない人獣共通感染症ーアニサキス症を例に

もうすぐ夏も終わり食欲の秋に入りますね。食欲の秋と言えば秋刀魚や栗に茄子、暑い時期に食べにくかった寿司も捨てがたいところです。ところで、皆さん昨今問題となっている「アニサキス症」と言う病気が秋に多い人獣共通感染症だと言うことを知っていましたか?今日はこのアニサキス症をとっかかりに、人獣共通感染症について考えてみたいと思います。

人獣共通感染症って一体何?

一言でまとめると人獣共通感染症は、人と動物(脊椎動物に限る)の間で感染が成立する感染症です。人から人または動物から動物にしか感染しない感染症は、含まれません。

では、例であげたアニサキスは何から何に感染しているのでしょうか?そうです、お気付きの通り脊椎動物である魚から人に感染する病気ですね。ただアニサキスの感染環に人は含まれていないので、あくまで迷入という形での感染になります。

暴れる寄生虫 アニサキス

 

どんな種類の感染症があるの?

人獣共通感染症は感染様式で大きく4つに分けられています。

1.ダイレクトズーノーシス(direct zoonosis)

これは名前の通り、人と動物の間で感染が成立する感染症のことをさしています。多くの方が人獣共通感染症と聞いた時に最初に思いつく形の感染様式です。

この感染様式には、よく知られている狂犬病や最近話題のA型鳥インフルエンザ、結核などが含まれており、比較的重篤な病気が多いです。

2.サイクロズーノーシス(cyclo-zoonosis)

病原体の感染が成立するために複数の脊椎動物を必要としている感染様式で、寄生虫が多く当てはまります。アニサキス症は、人間に感染するまでに複数の魚類への感染を必要としているため、このカテゴリーに含まれます。他には北海道のキツネで有名な、エキノコックス症があります。

3.メタズーノーシス(meta-zoonosis)

人以外に他の脊椎動物と無脊椎動物で感染が成立する人獣共通感染症です。有名どころとしては、昔よく日本で感染がみられた日本住血吸虫症があります。これは、貝の中で寄生虫が成長し経皮感染的に人や他の動物に感染する感染症です。

4,サプロズーノーシス(sapro-zoonosis)

病原体が発育増殖するために動物以外の環境を必要とするもので、食中毒菌であるウェルシュ菌やボツリヌス菌が含まれます。これらの病気は動物に感染した際に人に感染する可能性があるため、人獣共通感染症のカテゴリーに含まれています。

アニサキス症のおさらい

さて、冒頭に出て来たアニサキス症は、平成26年度厚生労働省発表の食中毒統計資料によれば、カンピロバクター、ノロウイルスに続いて3番目の発生件数(124件)となっている感染症で、最も発生件数が多いのは9-10月になります。

魚の切り身で見かける虫体は2-3ミリ白色透明で丸まって寄生していることが多く、冷凍や加熱をすることで容易に死滅します。

もともとは、複数の魚類とクジラやイルカなどの哺乳類の間で感染環が成立している寄生虫ですが、人間が誤って食べることにより胃壁や腸壁に侵入し非常に激しい腹痛を引き起こします。また、一部の人ではアニサキスの虫体に対するアレルギー症状を呈することが知られています。ただ残念ながら人間は、アニサキスの適合宿主ではないため、虫体は寄生しても成長することはできません。


写真はイメージです。 photo by Wikipedia

まとめ

今回は、アニサキス症を例に挙げて人獣共通感染症を説明しましたが、他にも恐ろしい人獣共通感染症はたくさんあります。平成18年に、二人の狂犬病に感染した帰国患者が亡くなったのは記憶に新しいニュースですし、今年の3月には低病原性鳥インフルエンザウイルス(H7N9)亜型が日本の野鳥でも検出されました。

日本は、島国といえど今後外国の感染症が持ち込まれる可能性も十分にありえます。しっかり人獣共通感染症の危険性を把握しておくことが大事ですね。

 

 

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