慢性的な多量飲酒で若年性認知症になりやすくなる?!

アルコールと病気の関係についての研究は盛んに行われていますが、今回フランスでの研究により、慢性的な多量飲酒が若年性認知症の主要な危険因子であることが報告されました。


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アルコールが健康にあたえる影響

アルコールと病気との関係は以前から注目されており、過量の飲酒は肝疾患だけでなく、膵炎、胃食道逆流症などの消化器系疾患や高血圧、心筋梗塞、脳梗塞・脳出血などの循環器系疾患、糖尿病、脂質異常症、抗尿酸血症などの生活習慣病、がん、神経・筋肉系疾患などさまざまな病気に関わっていることが知られています。

認知症もアルコールとの関連性が報告されている疾患のひとつです。現在までの研究で、多量飲酒は認知症のリスクを上昇させることや、中程度以上の飲酒により海馬を含めた脳への影響が見られること(詳しくはこちらを参照)などアルコールが脳に悪影響をおよぼすことが示唆されています。一方で、少量から中程度の飲酒は、認知機能に有益な効果をあたえるとの報告もされています。

認知症とは

認知症は,認知機能および活動能力が日常生活に支障をきたすほど失われる疾患の総称です。認知症は、最も患者数の多いアルツハイマー型認知症や、脳卒中が原因となりおこる血管性認知症のほか、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など原因となる病気によっていくつかに分けられます。

認知症というと、高齢者がかかるイメージが強いですが、比較的若い年代にもみられることがあり、65歳未満に発症するものを若年性認知症とよびます。


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多量飲酒と認知症

2018年2月、新たに「Contribution of alcohol use disorders to the burden of dementia in France 2008–13: a nationwide retrospective cohort study」により多量飲酒と認知症、とくに若年性認知症との関連性について報告されました。

対象となったのは、2008年から2013年までにフランスの病院を退院した20歳以上の患者さん31624156人のうち、認知症と診断された1109343人で、そのうち若年性認知症は57353 (5.2%)でした。

通常の認知症に比べ、若年性認知症はアルコールの影響を受けている割合が多く、若年性認知症の患者さんのうち半分以上が、アルコール関連脳障害またはアルコール使用障害の追加診断を受けていました。

また、アルコール使用障害は、認知症発症のもっとも強力な危険因子であり、リスクを3倍以上に上昇させる結果となりました。(補正ハザード比 女性;3.34、男性;3.36)

これらのことから、アルコール使用障害は、認知症の発症に著しく寄与しており、あらゆる種類の認知症と関連していること、中でも若年性認知症との関連性が強いことが示唆されました。

この結果を受けて、著者らは、認知症とアルコールの関連性は以前考えられていたものよりはるかに大きいとし、検査の実施や多量飲酒への介入、アルコール使用障害の治療、アルコール政策措置などを提案しています。


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今回の報告から、慢性的な多量飲酒は認知症、とくに若年性認知症の主要な危険因子であることが明らかとなりました。現在までの研究により、多量のアルコールは、さまざまな臓器に悪影響を与えることがわかってきています。これを機に、お酒の飲み方と健康について考えてみましょう。

 

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