大人にとって身近な飲み物であるお酒ですが、からだにさまざまな影響を与えることがわかっています。リスクも理解しつつ、上手にお酒と付き合うことが大切です。
アルコールの身体への影響
アルコールを摂取すると、胃や小腸から体内に吸収されます。吸収されたアルコールは肝臓へおくられ、頭痛や吐き気などを引き起こす原因となるアルデヒドに分解され、その後さらに酢酸へと分解されていきます。酢酸になると、全身をめぐり二酸化炭素と水に分解され、汗や尿、呼気中に排出されます。
このようにアルコールの主な分解は肝臓でおこなわれるため、肝臓はお酒の影響を受けやすい臓器となります。
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アルコールを大量に続けて摂取すると、肝臓での中性脂肪の合成が高まることが知られており、脂肪肝の原因となります。また、肝硬変や肝線維症などの肝障害にもつながる危険性もあり、アルコールにより肝臓の正常な働きを失う可能性もあります。
その他、長期の多量飲酒により、肝臓以外にも高血圧や脳神経障害など、さまざまな症状が発現するため注意が必要です。
その一方で、適量のアルコール摂取が身体に良い影響を与えるとの報告もされており、心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスク低下や善玉コレステロールの上昇を促す作用などがあると言われています。
アルコールの推奨値
推奨されているアルコールの上限摂取量については国により異なり、たとえばイギリスでは男女とも週14ユニット以下(ワイン1杯180mlが約2ユニット)を推奨しており、アメリカでは男性が週に24.5ユニット、女性では12.3ユニットが上限とされています。
アルコール摂取量別にみた身体への影響はいまだ解明されていないことも多く、さらなる研究が必要とされています。そこで、「Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study.」では、アルコールの摂取量別に脳の構造や機能におよぼす影響について報告しています。
550人の男女(平均年齢43歳)を対象に、1週間あたりのアルコール摂取量のちがいによって、認知機能の変化や脳の構造(MRI検査にて解析)に変化がないか30年間にわたり追跡し調査しています。
調査結果とまとめ
その結果、アルコール摂取量に比例して、海馬萎縮がみられ、特に、週30ユニット以上飲酒する高程度飲酒群では、お酒を飲まないひとに比べリスクが5.8倍となりました。
週14~21ユニット飲酒する中程度飲酒群でも、お酒を飲まないひとに比べて、右海馬萎縮がみられるリスクが3倍となりました。軽く飲酒(週1~7ユニット)をする人はお酒を飲まないひとを比較しても、脳の保護作用はみられませんでした。また、アルコールを多く消費する人では海馬萎縮に加え、脳梁の微細構造の変化や、流暢に話をする能力の急速な低下がみられました。
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これらのことから、週14~21ユニット中程度の飲酒であっても海馬萎縮を含む脳への影響がみられることが示唆され、イギリスの上限飲酒量を支持する結果となりました。
お酒とうまく付き合うには、適度な量に抑えることが必要となります。今回の研究から、週14ユニットを超える飲酒は、脳へ影響をおよぼす可能性があることが報告されました。今回の結果を参考に、日ごろの飲酒について見直してみましょう。
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