ダイエットをしても痩せない病気〜クッシング症候群について

健康的に痩せることは本当に難しいですね。

「食べてるからでしょ」

「運動が足りないんじゃないの」

「もう歳なんだから」

「代謝が落ちてるのよ」

いろいろな言葉に悩んでいる方もいらっしゃると思います。

今回は、実際にあったお話を交えて、珍しい病気「クッシング症候群」と言う病気を知ってもらいたいと思います。


写真はイメージです。 photo by photo AC

何もやっても痩せなかったAさん

 

Aさんは40代前半まではスリムな体型を維持していました。毎日8キロ走っていましたし、食事にも気をつけていました。ところが徐々に太り、3年後には10キロ増加していました。

ジムもバーベルをあげながら有酸素運動をするハードなものに変え、プロテインも飲みました。しかし体重は増え続けました。

甲状腺や膠原病の検査もしましたが異常はなく、体重はまた5キロ増えました。生理も止まり、目は腫れて別人のようでした。

転んでパンダのような青あざを作ったり、物忘れをすることが多くなりました。白目の血管が切れて真っ赤になることもありました。物をよく落とし、顔はパンパンにむくみ、靴も入りません。お腹は出て鎖骨や肩甲骨は厚い脂肪に覆われ、まるで野獣になってしまったかのようでした。

そんな時、国立病院で受けた血液検査でAさんは「内分泌代謝内科」に回されたのです。CTスキャンの結果、右の副腎に腫瘍があると言われ、すぐに検査入院となりました。

2週間の入院の結果、Aさんは「クッシング症候群」と診断されたのです。

 

クッシング症候群とは

 

副腎…聞きなれない臓器です。腎臓の上に位置する小さな臓器ですが、生命維持に欠かせないホルモンを作っています。


副腎の位置(Adrenal gland;副腎 Kidney;腎臓)
photo by wikipedia

副腎に腫瘍ができたり腫れたりして機能が亢進し、さまざまなホルモンを作りすぎてしまうことが原因です。クッシング症候群はそのうち「副腎皮質」で作られるコルチゾールというホルモンを大量に出します。

コルチゾールとはステロイドのことです。ステロイドは、体が受ける様々なストレスを解消したり、炎症を抑える大切な働きをします。

しかし、副腎が過剰なホルモンを出すと、高血圧、骨粗鬆症、筋肉減少、精神病、糖尿病、満月様顔貌(顔がまんまるに腫れ、赤ら顔になる)、野牛肩(首の後ろに硬い脂肪がつく)、中心性肥満(顔と体だけ太り、手足は痩せ細る)、多毛症、月経不順、感染症などの症状が出ます。

 

クッシング症候群の種類

 

クッシング症候群とは原因を問わず、体にたくさんのコルチゾールが回ってしまうことで様々な症状を引き起こす臨床的な異常です。

Aさんの場合は副腎にできた腫瘍が原因でしたが、良性の副腎腫瘍はとてもポピュラーです。「機能性腫瘍」と言われる、腫瘍自体がホルモンを出す場合が問題となり、切除の対象となります。


写真はイメージです。 photo by pixabay

クッシング症候群は、副腎の異常が原因ですが、同じ症状を示すものに以下のようなものもあります。

○クッシング病
脳の奥にある下垂体が腫瘍などの原因により副腎を刺激するホルモンを大量に出すため、副腎がホルモンを過剰生産します。難病に指定されています。

○肺小細胞癌、カルチノイド腫瘍など
副腎や下垂体以外の腫瘍が副腎刺激ホルモンを出す場合もあります。

○副腎癌
副腎にできる悪性腫瘍です。非常にまれな癌です。

○原発性色素性結節性副腎異形成、大結節性過形成
非常にまれですが、上記の原因で起こることもあります。

 

早期発見がとても大切

 

この病気の当初の特徴は高血圧、糖尿病、肥満等なので、「年のせい」「更年期障害」などと誤診されている場合があります。

Aさんの場合、右の副腎に腫瘍があり、手術で副腎を取り除きました。一年後、体はほぼ元どおりになりました。

その後、萎縮していた左副腎が回復し、自分の体がコルチゾールを出せるようになるまで、服薬して毎日を送っています。

180あった高血圧も正常になりました。骨粗鬆症や糖尿病は幸い発症していませんでした。

しかし、背骨の圧迫骨折で背が何センチも縮んでしまった例もあります。

クッシング症候群の特徴的な顔つきや脂肪のつき方は、一般的ではありません。早期発見はとても難しいでしょう。腫瘍ができてから典型的な容姿になるまで数年かかります。

しかし、なかなか痩せない、鎖骨が見えなくなった、顔や足がむくんでいる、怒りっぽくなった、生理が止まった、高血圧が治らないなど、小さな変化を見逃さないでください。


写真はイメージです。 photo by photo AC

症状が当てはまる人は、ホルモンの専門である「内分泌内科」などを受診することをお勧めします。

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました