ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬「エサキセレノン」 承認申請へ

高血圧は、30歳以上の日本人男性の約60%、女性の約45%が罹患していると推定されているほど、ありふれた疾患です。脳卒中や、心臓病、腎臓病などさまざまな疾患の重大な危険因子となるため、適切な治療を受け、血圧をコントロールすることが大切です。


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高血圧とは

血圧とは、動脈の内側にかかる圧力のことで、現在の日本高血圧学会のガイドラインでは、収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHg以上が高血圧の基準値となっています。高血圧の90%以上は、明確な原因がわかっていない本態性高血圧症です。

血圧が高いと、頭痛や頭重感、動機などの症状が現れることがありますが、ほとんどは自覚症状がありません。しかし、自覚症状は出ないものの、身体には確実に影響をあたえており、高い状態が長く続くと、脳や心臓、腎臓など全身の血管の動脈硬化を進行させ、心肥大や心不全、心筋梗塞などの心血管疾患を引き起こしたり、脳卒中、腎障害などの合併症が発現しやすくなります。

このように、高血圧は、さまざまな疾患と深く関連するため、適切な治療により血圧をコントロールすることが大切です。

まず、高血圧の基本的な治療となるのが、生活習慣の改善です。塩分を摂りすぎないように注意しバランスのとれた食事を摂取する、適度な運動を心がける、規則正しい生活を送る、禁煙・アルコールを飲みすぎないなど、日々の生活習慣に気をつけることが重要となります。

しかしながら、生活習慣の改善だけでは血圧が十分にコントロールされないことも多く、その場合には、降圧薬による薬物療法が追加されることがあります。

降圧薬は作用機序の違いによりいくつかの種類に分類され、患者さんにあった治療薬が選択されます。おもな降圧薬として、カルシウム拮抗薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、利尿薬が挙げられ、第一選択薬となっています。そのほか、β遮断薬、α遮断薬、直接的レニン遮断薬などがあり、必要に応じて用いられます。


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ミネラルコルチコイド受容体に作用する薬

現在、さまざまな降圧薬が臨床で使用されていますが、そのなかでミネラルコルチコイド受容体(アルドステロン受容体)を阻害し、降圧効果を発揮する薬があります。昔から使用されているカリウム保持性利尿薬のスピロノラクトンや、受容体にたいする選択性を高めたエプレレノンがこれにあたります。

2018年2月には、新たなミネラルコルチコイド受容体拮抗薬として「エサキセレノン」の国内製造販売承認が申請されました。

血圧が上昇する仕組みのひとつとして、レニン-アンジオテンシン系などで産生が調節されるアルドステロンによって、ミネラルコルチコイド受容体が活性化することにより、腎臓の尿細管での尿中ナトリウム及び水分の再吸収が促進され、血圧が上がると考えらえています。

エサキセレノンは、非ステロイド構造をもつ、選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であり、ミネラルコルチコイド受容体の過剰な活性化を阻害することで降圧効果を発揮します。

また、過剰なミネラルコルチコイド受容体の活性化は、心臓、血管、腎臓などの臓器障害を促進することが知られており、エサキセレノンは臓器保護作用を示すことも期待されます。

エプレレノンを対照にエサキセレノンの有効性・安全性を検討した国内臨床試験では、投与12週時の血圧の変化量において、エプレレノン(50mg/日)とエサキセレノン(2.5mg/日)の非劣性がしめされました。また、エサキセレノン2.5mg/日および5mg/日の降圧効果について用量反応関係が確認され、安全性上の新たな懸念は認められなかったと報告されています。

また、現在、糖尿病性腎症を対象とした第Ⅲ相臨床試験もすすめられています。


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臨床試験の結果を受け、2018年2月にエサキセレノンの承認申請がおこなわれました。今後、高血圧治療の選択肢のひとつとなり、患者さんの症状改善に寄与することが期待されています。

 

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