世界に先駆け承認された結節性硬化症にともなう皮膚病変治療薬 ラパリムスゲル0.2%

結節性硬化症は、全身のさまざまな部位に腫瘍性病変を生じる遺伝性の疾患です。難病に指定されており、1万人に1人の割合で患者さんがいると推定されています。

結節性硬化症とは

結節性硬化症は、脳や腎臓、肺、皮膚、心臓など全身のさまざまな臓器に過誤腫(良性腫瘍の一種)が生じやすい遺伝性疾患です。


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細胞増殖に関わるタンパク質であるmTORのはたらきをコントロールしている遺伝子(TSC1遺伝子またはTSC2遺伝子)に異常が生じることが原因となり、mTORを抑える力が弱まる結果、腫瘍ができやすくなり、てんかん、発達障害などさまざまな症状が発現すると考えらえています。

症状には個人差があり、年齢によっても現れやすい症状が異なります。年齢別にみると、新生児期には心臓の腫瘍、乳児期にはてんかん発作や知的障害・発達障害、学童期からは顔面血管線維腫などの皮膚症状や脳腫瘍、思春期では腎臓腫瘍、成人期からは肺のリンパ脈管平滑筋腫症が問題になることが多いといわれています。

治療は、それぞれの症状にたいする対症療法が行われます。また、最近では、mTORの働きを抑える薬も使用されるようになってきています。

結節性硬化症にともなう皮膚病変にたいする新規外用薬

皮膚病変は、結節性硬化症の9割以上の患者さんにみとめられるといわれており、顔面に赤みを帯びた皮疹ができる血管線維種や、白斑、爪囲線維種などの症状がよくみられます。


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顔面の血管線維種は、学童期以降の患者さんでよくみられ、思春期ごろになると皮疹が著明になり、数も増加することが多いといわれています。患者さんにより症状の程度は異なりますが、出血や二次細菌感染、痛み、機能障害などが発現し、患者さんに苦痛をあたえ、QOLの低下を引き起こすこともあります。

症状がひどくない場合には経過観察となることもありますが、機能障害や整容的問題が生じた場合、悪性化した場合などには治療の対象となることがあり、外科的切除やレーザー療法などが行われています。

しかしながら、既存の治療は、侵襲性が高く、子供や発達障害をともなう患者さんでは施行が困難となるケースもみとめられていました。

そこで、2018年3月、新しく製造販売が承認されたのが、「ラパリムスゲル0.2%(一般名:シロリムス)」です(ノーベルファーマ株式会社 ニュースリリースより)。シロリムスは、mTORを阻害する作用を有しており、日本では、リンパ脈管筋腫症の治療薬としても使用されている成分です。

ラパリムスゲルは、結節性硬化症の皮膚病変にたいして局所投与することにより、低侵襲で簡便に治療することが可能となっています。顔面血管線維種がみとめられる患者さんを対象とした臨床試験では、高い有効性・安全性をしめすことが明らかとなっています。

2015年10月に先駆け審査指定制度において医薬品第1号に指定されており、今回、申請から6ヶ月も経たない期間で承認されました。なお、発売までのスケジュールについてはまだ発表されていません。


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結節性硬化症にともなう顔面の血管線維種は、患者さんに身体的・精神的苦痛をあたえ、QOLを低下させます。

今回、世界に先駆けて新規外用薬であるラパリムスゲルが承認されました。新たな治療の選択肢となり、患者さんの症状改善およびQOL改善に寄与することが期待されています。

 

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