大腸がんの再発率・死亡率がナッツ類の摂取により低下する?!

大腸がんの患者さんは増加傾向にあり、罹患数・死亡数ともに全がんの中でも上位に入っています。なるべく早期に発見し、適切な治療を受けることが大切となりますが、今回、ナッツ類の摂取が大腸がん(ステージⅢ)患者さんの再発率、死亡率を低下させる可能性があることが報告されました。

大腸がんと治療法

現在、日本には26万人以上の大腸がん患者さんがいると推定されており、年間4万人以上の方が命を落としています。

大腸がんは、大腸粘膜の表面から発生し、次第に大腸の壁に深く侵入していき、進行するにつれて、リンパ節や別の臓器に転移がみられるようになります。がんの進行度はステージで表され、進行度がもっとも低いステージ0から、もっとも高いステージⅣまで5段階に分けられます。

ステージ0;がんが粘膜にとどまっている。
ステージⅠ;固有筋層(大腸の壁)にとどまっている。
ステージⅡ;固有筋層の外まで浸潤している。
ステージⅢ;リンパ節転移がある。
ステージⅣ;遠隔転移または腹膜播種がある。


写真はイメージです。 photo by silhouette ac

治療には内視鏡治療、手術治療、化学療法、放射線治療などの方法がありますが、中心となる治療法は内視鏡と手術です。

一般的に、ステージ0〜Ⅰの粘膜内のがんや、浸潤の程度が軽いがんは内視鏡治療がおこなわれます。浸潤の程度、大きさ、部位によっては手術が選択されることもあります。

がんが固有筋層より深く浸潤したがんに対しては、基本的に手術がおこなわれます。手術では、腸の切除だけではなく、リンパ節郭清がおこなわれ、また、必要に応じて補助化学療法もおこなわれます。

ステージⅣでは、切除が可能な場合は手術がおこなわれますが、化学療法や放射線療法が選択される場合もあります。

ステージ別の5年生存率は、ステージ0で約94%、ステージⅠで約92%、ステージⅡで約85%、ステージⅢで約60~75%、ステージⅣで約19%といわれています。また、手術後5年以内の再発率は、ステージⅠで約3.6%、ステージⅡで約12.4%、ステージⅢで約30.1%と報告されています。

大腸がん術後のナッツ類摂取の効果

生活習慣の欧米化(高脂肪・低繊維食)や運動不足、肥満などさまざまな生活習慣が大腸がんと関係していることが知られていますが、今回、「Nut Consumption and Survival in Patients With Stage III Colon Cancer: Results From CALGB 89803 (Alliance)」では、ナッツ類の摂取が大腸がんの再発率、生存率に与える影響について報告しています。

治療(手術および化学療法)を受けているステージⅢの結腸がん患者さん826人を対象に、ナッツ類の摂取量に応じてグループに分け、がん再発率および死亡率について解析しています。なお、摂取量については、1回の摂取を1オンス(約28.3g)としています。

その結果、追跡期間中央値6.5年時において、199人が再発し、177人が死亡しました。ナッツ類を摂取しない群と週2回以上ナッツ類を摂取した群を比較すると、無病生存率は42%(ハザード比0.58)改善し、有意な差がみられました。また、全生存率についても、週2回以上ナッツ類を摂取する群では、57%(ハザード比は0.43)の改善がみられました。

ナッツの種類別でみると、木の実を1週間に1回以上摂取する群では、木の実を摂取しない群に比べ、再発のリスクが46%(ハザード比0.54)、死亡のリスクが53%(ハザード比0.47)低下することがしめされました。一方で、ピーナッツの摂取では、無病生存率、全生存率の有意な改善はみられませんでした。

このことから、ナッツ類、特に木の実の摂取によりステージⅢ結腸がんの再発リスク、死亡リスクともに有意に低下することが示唆されました。


写真はイメージです。 photo by pixabay

日本において、大腸がんは、患者数・死亡数ともに多い疾患です。今回の報告により、治療を受けたステージⅢの大腸がん患者さんがナッツ類を摂取することで、再発リスク・死亡リスクともに低下する可能性が示されました。

生活習慣と大腸がんとの関連は数多く研究されており、今後さらに研究が重ねられていくことが望まれます。

 

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