魚油はドライアイには効果がない可能性も!?ドライアイと魚油について

ドライアイは、涙の量が減ったり、質が低下することによって、目の表面を潤す能力が低下した状態です。日本には、2200万人以上もの患者さんがいると推定されており、年々増加傾向にあります。


写真はイメージです。 photo by illust-ac

ドライアイとは?

ドライアイは、“さまざまな要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う”と定義されている慢性の眼疾患です。

涙液は、油層、水層、ムチン層から成っており、それぞれがバランスを保つことで安定性を保っています。涙は、目の乾燥を防止したり、洗浄、感染症の予防、栄養補給、鮮明な像を結べるように黒目の表面を滑らかに保つなどの重要な役割をしています。そのため、なんらかの理由により涙の状態が不安定になると、涙が蒸発しやすくなったり、目の表面が傷つきやすくなります。

加齢や、長時間にわたるデジタル機器の使用、コンタクトレンズの装着、エアコン下など乾燥した環境に長時間いることなどにより、ドライアイになりやすくなるといわれています。

おもに、目が乾く、不快感がある、物がかすんで見える、目が疲れやすいなどの症状がみられ、進行すると、視力低下や痛み、角膜上皮剥離が発現することもあります。

ドライアイの治療には、おもに点眼薬による治療と、涙点を閉鎖する治療法があります。

薬物療法では、患者さんの症状に合わせて、水分の補給や角膜創傷の治癒を促進する人工涙液やヒアルロン酸製剤、ムチンや水分の分泌を促進する点眼薬、ムチンを産生する点眼薬が用いられます。


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涙点を閉鎖する治療では、涙の出口となる涙点に栓をして、涙の排出を遮断します。

また、デジタル機器やエアコン、コンタクトレンズの使用状況を改善することも、症状を和らげるのに有効です。

ドライアイにたいする魚油の摂取

ドライアイの改善のため、点眼薬や涙の出口を塞ぐ治療、悪化要因の除去が行われていますが、世界では度々、魚油(ω3脂肪酸)の摂取が推奨されています。

しかし、2018年5月に発表された論文「n–3 Fatty Acid Supplementation for the Treatment of Dry Eye Disease」から、魚油サプリメントがドライアイ改善に効果をしめさない可能性について報告されました。

中等度〜重度のドライアイ患者さん535人を対象に、魚由来の ω3脂肪酸であるEPAとDHA合わせて 1 日 3,000 mg を経口摂取する群(サプリメント群)と、オリーブ油を摂取する群(プラセボ群)にわけ、12ヶ月にわたり毎日摂取し、ベースラインからの眼表面疾患指数の平均変化量などについて解析しています。

その結果、眼表面疾患指数の平均変化量は、サプリメント群で-13.9点、プラセボ群で-12.5点となり、有意な差はみられませんでした。また、結膜染色スコアや角膜染色スコア、涙液層破壊時間、シルマー試験の測定値についても両群で平均変化量に有意差はみられませんでした。

サプリメント群がプラセボ群と比較して、有意に良好な改善をしめさなかったことから、魚油の摂取はドライアイの症状改善に効果が低い可能性が示唆されました。


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ドライアイは多くの方が経験する疾患であり、目の乾燥や不快感などから日常生活にも支障をきたすことがあります。

今回、今までドライアイに効果があると考えられていた魚油の摂取が、実は有益な効果がない可能性について報告されました。しかしながら、さらなる研究の必要性についても指摘されており、今後の動向に注目が集まります。

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