ビタミンCの摂取は認知機能の低下リスクを軽減する?!

高齢化にともない認知症の患者数は急増しており、現在では65歳以上の約15%が罹患していると言われています。社会問題ともなっている認知症ですが、今回、血中のビタミンC濃度が高いと認知機能低下のリスクが軽減する可能性が報告されました。


写真はイメージです。 photo by photo AC

アルツハイマー病と危険因子

認知症とは、脳の神経細胞が死滅したり働きが悪くなることで、認知機能や活動能力が日常生活に支障をきたすほど失われる状態のことを指します。

認知症にはいくつかの種類がありますが、そのうち約60%を占めているのがアルツハイマー病です。

アルツハイマー病は、記憶や思考能力が徐々に障害され、最終的には単純な作業もできなくなる不可逆的な進行性の脳疾患です。

老人斑や神経原繊維変化が海馬を中心に発現し、脳の神経細胞が死滅していくことでさまざまな障害が生じます。(詳しくはこちらを参照)

詳細な原因はいまだ解明されていませんが、加齢にともなう脳の変化や遺伝的な要因、さまざまな生活習慣因子が複雑に絡み合って、発症につながっていると考えられています。

そのなかで、アポE4とよばれるタンパク質を有していることは、アルツハイマー病の危険因子となることがわかっています。

アポEは、脂質の代謝に関与するタンパク質であり、3種類の遺伝子型(アポE2、E3、E4)が存在します。

特にアポE4は、アルツハイマー病の発症に深く関与していると考えられており、日本人においては、アポE4の保有者は非保有者に比べてアルツハイマー病発症のリスクが約3.9倍になることが報告されています。

また、性差をみると、特に女性において強力な危険因子となることが知られています。


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血中ビタミンC濃度と認知機能

アルツハイマー病の危険因子となるアポEですが、保有者の発症リスクを軽減する方法については確立されていませんでした。そこで「Higher Blood Vitamin C Levels are Associated with Reduction of Apolipoprotein E E4-related Risks of Cognitive Decline in Women: The Nakajima Study」では、アポE4保有者の認知機能低下を防ぐ生活習慣関連因子を見つけることを目的に、抗酸化物質であるビタミンCおよびEの血中濃度とアポE4保有者の認知機能との関連について検討しています。

この研究では、2007~2008年のベースライン調査に参加した65歳以上の認知機能正常な高齢者を対象に追跡調査を行い、平均7.8年後の認知機能を解析しています。

ベースライン調査時には、血中ビタミンCおよびE濃度とアポE表現型の測定を行い、男女別に血中ビタミンCおよびE濃度の低い群、中間の群、高い群に分けて検討を行なっています。

その結果、アポE4を保有している女性において、血中ビタミンC濃度が高い群は、低い群と比べて将来の認知機能の低下リスクが0.10倍(オッズ比)と有意な減少をしめしました。一方で、アポE4を持っていない群では血中ビタミンC濃度と将来の認知機能との間に有意な関連はみられませんでした。

血中ビタミンE濃度をみると、アポEを保有していない男性において、濃度が低い群に比べて高い群で認知機能低下のリスクが0.19倍、中間の群で0.23倍と有意な減少がみられました。

一方、女性ではアポE4保有の有無に関わらず、血中ビタミンE濃度と認知機能低下リスクの間に有意な関連はみられませんでした。

このことから、アポE4を保有する女性において、ビタミンCが認知機能の低下リスクを軽減することが示唆されました。


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今回、ビタミンCを豊富に含む食品を摂ることで、アポE4の保有女性の認知機能が低下するリスクを軽減できる可能性がしめされました。高齢化にともない認知症の患者数はさらに増加すると予測されています。今後も研究が重ねられ、有効な予防法や治療法が確立されていくことが望まれます。

 

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