川などの水辺で感染するレプトスピラ症とは リスクの高い地域では注意が必要

2016年8月に、沖縄の国頭(くにがみ)村を流れる奥間川で川遊びをしていた約70人のグループのなかで11人が川遊びによる原因で集団感染が発生したとういうニュースが流れました。

同じような集団感染は、2014年に沖縄北部の演習場を流れる川に濡れたアメリカ兵90人、八重山地区では2007年に10人、1999年に15人なども報告されています。

外国に目を向けてみると、タイでは毎年数千人規模の大流行、フィリピンで台風による洪水が原因で感染が広がり89人が死亡するという大規模の感染なども起きています。日本でも、台風による洪水のあとで2004年に愛媛県、2005年に宮城県で発生した事例があります。

マレーシアとアメリカでは河川でのトライアスロン大会で大規模な発生が報告されています。

これらの集団感染の原因は、「レプトスピラ菌」の感染による「レプトスピラ症」を発症したためです。

レプトスピラ菌photo by wikimedia

世界では、毎年30万人から50万人が「レプトスピラ症」を発症しているといわれています。

レプトスピラ症は、東南アジアや南アメリカといった亜熱帯地域の国に多くみられ、大規模な流行がたびたび発生しています。

[レプトスピラ症ってなに]

レプトスピラ症は日本では「秋やみ(軽症型)」、「ワイル病(重症型)」ともいわれ、保健所に届け出の必要がある四類感染症に指定されていています。

-レプトスピラ菌とは-

レプトスピラ症の原因になるレプトスピラ菌は、感染した宿主となる動物の腎臓に保菌されています。

尿ともに排泄されて、数ヶ月間は中性から弱アルカリ性の淡水中や湿った土壌中で生存します。

野生下では、主に「ネズミなどのげっ歯類」などが宿主になります。ウシなど家畜や愛玩動物であるイヌやネコなどのほとんどの哺乳類に感染します。ヒトにも感染する「人畜共通感染症」です。

野生下のドブ ネズミphoto by wikimedia

感染した動物の尿や尿で汚染された水や土から経皮的もしくは経口的に感染します。

-レプトスピラ症の症状は-

レプトスピラ症は、感染してからの潜伏期間が3日から2週間程度です。軽症型と重症型の2段階に分けられます。

軽症型の症状は、「38℃から40℃の発熱、頭痛、結膜充血、悪寒、蛋白尿、背中やふくらはぎなどの筋肉の痛み」など軽い風邪からインフルエンザのような症状を引き起こします。多くの場合は1週間程度で治癒します。

発症してから、5日から8日ごろに重症型に移行する場合があります。「黄疸、出血、腎臓障害、肝臓障害」などの症状があらわれます。出血は、鼻血や皮下出血で肺などの臓器からも出血する場合があります。

重症型では、臓器不全や急性呼吸窮迫症候群などを引き起こして危険な状態になることがあります。重症型に移行した場合の致死率は5%から40%です。治療開始が遅れると致死率が高くなる傾向にあります。

-レプトスピラ症の治療は-

治療には抗菌薬が使用されます。軽症型では、「ドキシサイクリン」や「アモキシシリン」などが使用されます。

重症型では、「ペニシリン」や「ストレプトマイシン」を用います。ストレプトマイシンは、日本での研究によって早くから使うことで高い効果が期待できるとされています。

重症型の場合、腎不全などの臓器障害などが起きている場合には対処療法も併せて行われます。

[レプトスピラ症の特徴をみてみましょう]

レプトスピラ症は、7月から10月に多く見られます。

河川や池などでのレジャーや作業の感染が全体の半数近くと最も多く、ネズミの尿と接触の機会が多い下水道工事や建築など作業、農作業、畜産に関わる作業、台風や大雨などの増水のあと、ネズミが住み着いている家屋の住人などの感染があげられます。

日本では、1970年代までは年間の死亡者数が50人以上も報告されていましたが、衛生状態の向上に伴い感染者数は激減しました。

最近10年間の感染者数は年間で約30人弱(うち死亡者数は約0.5人)です。性差がみられて感染者の約90%が男性です。

感染者を地域別にみると半数以上が沖縄(142例)です。沖縄の中でも全体の85%以上が八重山地区で、とくに西表島で多くみられます。

沖縄についで多いのが東京(27例)、宮崎(16例)、鹿児島(13例)です。散発的にそのほかの都道府県でも発生しています。

国内の発生状況photo by 国立感染研究所

沖縄では河川から、東京ではネズミとの接触からの感染が多いことが報告されています。

国内での感染だけではなく、海外の流行地域からの帰国者の発症も毎年2人~3人ほどみられます。そのほとんどが東南アジアからの帰国者です。

[レプトスピラ症を予防するには]

レプトスピラ症を予防するためには、感染源となる感染動物の尿や汚染された水や土壌との接触を避ける必要があります。

・リスクが疑われる地域で、河川や水田などに素足などでそのまま入らない。とくに、皮膚に傷がある、体調が悪い場合などは感染のリスクが高まります。川の水を飲むなどはしない。

・入る必要がある場合には、ゴム手袋や長靴など肌の露出がないように防護効果のある服装を身に付ける。入ったあとは手洗いなどを行うようにする。

・ネズミなど野生生物との接触を避ける。家屋にネズミなど野生生物が住み着いている場合には業者に依頼するなどして駆除をおこなう。

・台風や大雨などで河川や下水が氾濫したところには近づかない。

写真はイメージです。photo by wikimedia

海外を含めて多発地域から帰ってきたあとに、インフルエンザのような症状が出た場合には病院でお医者さんに行った場所や状況を伝えるようにしましょう。

レプトスピラ症は症状だけでは確定診断ができません。確定診断には専門機関での検査が必要ですが、お医者さんに情報を伝えることで診断の重要な手がかりになります。

レプトスピラ症が疑われれば、確定診断を待たずに早期の治療開始が可能になります。

レプトスピラ症は先に書いたように人畜共通感染症です。身近なペットではイヌなどの発症例が増加傾向といわれています。ご自宅で飼われているイヌなどの様子がおかしいと感じた場合には獣医さんに相談してくださいね。

 

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