難病指定の脂肪萎縮性糖尿病一亜系の治療に成功

珍しい病気のお話しです。珍しいっていう病気と聞くあまり関係ないのかなと思うかもしれませんが、お話しに付き合ってください。

日本は、約45年前に難病に係る法律を定め、世界で初めて難病(NAN-BYO)を研究対象とした先進国です。

厚生労働省は、「症例が少なく原因不明、治療法が確立しておらず、生活面で長期に支障をきたすおそれがある疾患」を難病に指定し、現在330の難病が指定されています。

そのうちの1つ脂肪萎縮症に関する報告です。

そもそも脂肪萎縮症とは

脂肪萎縮症は先天的あるいは後天的に、脂肪組織が全身あるいは部分的になくなり、萎縮することでさまざまな症状を引きおこす病気です。

思春期以降に糖尿病、脂質異常症、脂肪肝の症状が目立ちはじめ、時間経過とともに腎臓や目の網膜に障害を呈してくることがあります。

皮下注射によるレプチン補充療法が有効な治療法でしたが、高価であること、皮下脂肪がないことによる注射時痛があり、治療継続が困難な場合がありました。

先天性全身性脂肪萎縮症に新たな治療法

4月4日、東北大学病院糖尿病代謝科の今井淳太講師、川名洋平医師、片桐秀樹教授らのグループは先天性全身性脂肪萎縮症に対して、SGLT2阻害薬であるイプラグリフロジンを追加投与したところ、脂肪肝が減少し、糖尿病、インスリン抵抗性が著明に改善したと報告しました。


ナトリウム・グルコース共役輸送体の図 黄色がナトリウム、橙がグルコース
photo by WIKIMEDIA COMMONS

SGLT2阻害薬とは、尿中に糖を排出することで治療する新たなタイプの糖尿病薬です。

SGLT2の働きを阻害すると、近位尿細管でのグルコース再吸収が減り、その分だけ尿糖の排泄が増え、高血糖が改善します。

以前からSGLT2の働きで、内臓脂肪が減少すると報告されていて、その効果が今回のインスリン抵抗性、糖尿病の 改善につながったと考えられます。

今後、脂肪萎縮症に対する新たな治療選択肢になるのではないかと期待されます。

参照:Annals of Internal Medicine

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