各国のがん5年生存率からみた世界格差

近年、医療技術の進歩から、日々新しい治療法が開発されており、がんの生存率は世界中で上昇傾向にあります。しかし、その一方で、国ごとに格差が存在しているのも現状です。

各国のがん5年生存率と差

2018年1月に発表された「Global surveillance of trends in cancer survival 2000–14 (CONCORD-3): analysis of individual records for 37 513 025 patients diagnosed with one of 18 cancers from 322 population-based registries in 71 countries」では、世界71か国、18種類のがんを対象として、5年生存率の大規模な調査を行なっています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

2000〜2014年にがんと診断された成人および小児、合計3751万3025人のデータに基づき、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、肺がん、乳がん、脳腫瘍、白血病など18種類のがんの5年生存率を推定しています。

その結果、従来の結果と同様に、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンにおいて、大部分のがんで高い生存率を示しました。生存率は、予後不良とされるがんであっても上昇傾向にあり、国によっては肝臓がん、すい臓がん、肺がんの生存率が最大5%上昇しました。

しかし、がん種によっては国ごとの格差が見られ、例えば、乳がんの5年生存率では、アメリカやオーストラリアが約90%であるのに対して、インドでは66.1%とひらきがみられました。また、小児のがん生存率にも国ごとのばらつきがみられ、脳腫瘍においては、スウェーデンやデンマークでは約80%であったのに対し、ブラジルでは28.9%となり、急性リンパ性白血病では、フィンランドで95.2%、エクアドルで49.8%と地域ごとで大きな差がみられました。

東アジアでは、消化器がんの生存率が高いものの(韓国;胃癌68.9%、結腸癌71.8%、直腸癌71.1% 日本;食道癌36.0%、台湾;肝臓癌27.9%)、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、骨髄性悪性腫瘍の生存率は、他の地域と比べて低い結果となりました。

日本の状況は?

国立がん研究センターでは、日本が消化器がんの生存率のもっとも高い国の一つとなった理由として、医療水準のみならず、検診の実施状況や、罹患が多いことによる一般的な関心の高さが早期発見につながり、良好な生存率に貢献していると考えられると発表しています。

一方で、悪性黒色腫やリンパ性・骨髄性悪性疾患の生存率が他の地域より低い理由としては、日本人に発生しやすいがんの構成が違うためと考えられるとし、日本人の状況を踏まえたがん対策が望まれると報告しています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

国立がん研究センターが公表しているがん統計では、2016年にがんで死亡した人は、37万2986人にのぼり、生涯がんで死亡する確率は男性で4人に1人、女性で6人に1人と推定されています。また、2003年に新たに診断されたがんは86万2452例と報告されており、男女ともに、およそ2人に1人の確率で、生涯がんに罹患すると算出されています。

2006年から2008年にがんと診断された人の5年生存率は男女計で62.1%(男性59.1%、女性66.0%)となっており、部位別で比べると、皮膚、乳房、子宮、前立腺、甲状腺の生存率が高く、食道、肝臓、肺、胆のう・胆管、膵臓、脳・中枢神経系、多発性骨髄腫、白血病は低くなっています。

まとめ

今回の結果から、がん治療の発展により生存率は上昇傾向にあるものの、依然として国ごとの格差が存在していることが示唆されました。これらの結果は、治療の受けやすさと質を反映している可能性が高いと考えられています。


写真はイメージです。 photo by photo AC

今後、国ごとの格差が縮小し、世界全体でがんの生存率が向上していくことが望まれます。

 

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