慢性骨髄性白血病に対するイマチニブの長期的効果、安全性


写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。Ed Uthman

白血病は血液中の細胞がガン化することで発症します。

医療の進歩により不治の病ではなくなりましたが、それでも予後が良いガンではありません。白血病の発生率は年々増加しており、より効果的な治療法が望まれています。

白血病の分類と治療

白血病は大きく4つに分類されます。

赤血球や白血球、血小板になる前の細胞がガン化したものを骨髄性と呼び、リンパ球の前駆細胞がガン化した状態をリンパ性と分類します。

また白血病は急性と慢性に分類され、急性の白血病では、ガン化した細胞が分化・成熟機能を持っていないものの増殖能をもつため、正常な機能を発揮できない細胞が血液中に多数みられます。そのため、貧血や出血、易感染などの症状を呈します。急性白血病の治療では抗がん剤による化学療法や造血幹細胞移植により寛解を目指します。

一方、慢性の白血病では、正常な細胞への分化能が保たれているのが特徴であり、進行が緩やかで症状も軽いと言われています。しかし、慢性白血病の怖いところは進行すると急性に転化するというところです。急性転化した白血病は治療が難しく予後が悪いのが現状です。そのため、慢性白血病では急性転化しないよう治療を行います。

慢性白血病の治療は、症状に応じて抗ガン剤やインターフェロンα(IFNα)、造血幹細胞移植などが選択されます。

また、最近では慢性白血病の発症にBCR-ABL1と呼ばれる遺伝子が関わっていることが解明され、BCR-ABL1タンパク質に対する分子標的薬が使用されるようになりました。現在では第一選択薬として挙げられることが多く、イマチニブなどいくつかの分子標的薬が使用されています。

慢性骨髄性白血病の長期予後

2017年3月に発表された論文「Long-Term Outcomes of Imatinib Treatment for Chronic Myeloid Leukemia」では、イマチニブ投与後の予後を10年以上にわたり長期的に観察し、有効性・安全性を報告しています。

初めて慢性骨髄性白血病の治療を行う患者さんを対象に、イマチニブ投与群またはIFNα+シタラビン(抗がん剤)投与群に分け、クロスオーバー試験によりイマチニブの効果・安全性を解析しています。しかし、解析してみるとIFNα+シタラビン群のクロスオーバー率が高く、投与期間が短くなったことから、今回の論文では、最初にイマチニブ群に割り当てられた患者に焦点をあてて報告を行っています。

解析の結果、イマチニブ投与群では10年生存率が83.3%となり、有害事象の発生頻度は低くおさえられました。また、イマチニブ投与群の約半数が治療を完了し、その82.2%で細胞遺伝的完全寛解が得られました。

このことから、イマチニブの有効性は長期にわたり持続すること、安全性が高いことが示唆されました。

 

医療技術の進歩により白血病治療の選択肢は増えてきています。今後も、より有効性、安全性の高い治療法の確立が期待されています。

参照:NEJM

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