早期2型糖尿病患者の動脈硬化に対するリナグリプチンの有用性


写真はイメージです。 photo by Mark Doliner

近年、血管年齢という言葉をよく耳にするようになりました。血管年齢は動脈硬化の進行度合いをしめすものであり、血管年齢が高いほど血管が硬く、脆い血管になっていることを表しています。動脈硬化は生活習慣病や喫煙などにより進行するため、日ごろから予防に努めることが大切です。

動脈硬化をくいとめる

動脈硬化が進行すると、血管の弾力性が無くなり徐々にしなやかさが失われていきます。また、血管の内側にプラークが付着することで血管が狭くなり、血液が上手く流れなくなる場合もあります。このような状態が続くと臓器に負担がかかるようになり、命に関わるような重大な心臓の病気や脳の病気へとつながっていきます。

高脂血症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病や喫煙、過度の飲酒が動脈硬化を進行させる原因になることが知られていて、生活習慣の改善や治療は動脈硬化をくい止めるためにも大切です。

糖尿病と動脈硬化

糖尿病と動脈硬化は深い関係があると言われています。血中に糖が増えると、血液がドロドロになり血管を傷つけ、血管障害を引き起こし、糖が血管壁に存在するコラーゲンと結合し、固まることで血管の弾力性が失われることも動脈硬化が進行する原因になると言われています。

糖尿病は主に2つの型に分類され、自分自身の免疫によってインスリンを分泌するβ細胞を破壊し、インスリンの分泌ができなくなる1型糖尿病と、身体がインスリンにうまく反応しない、インスリンの分泌が少なくなる症状がみられる2型糖尿病に分けられます。

2型糖尿病の発症には生活習慣が関わっていることから、生活習慣病のひとつとして考えられています。

それぞれの型で治療は異なり、1型糖尿病ではインスリンを注射して、補充します。2型糖尿病ではインスリンの分泌をうながすSU剤やDPP-4阻害薬、インスリンの効きめをよくするビグアナイド薬など作用機序の違う薬をひとつまたは組み合わせて使います。治療薬は患者さんの血糖状態や体質、生活スタイル、合併症を考えて選びます。

糖尿病薬のさまざまな作用

より患者さんに合った治療薬を選ぶためにも、血糖を下げる作用だけではなく、様々な作用に目を向けることも必要です。

2017年2月に発表された論文「Effect of linagliptin on pulse wave velocity in early type 2 diabetes: A randomized, double-blind, controlled 26-week trial (RELEASE).」ではリナグリプチン(DPP-4阻害薬)の動脈硬化への効果について報告しています。

2型糖尿病になったばかりの患者さんを対象にリナグリプチン5mg1日1回服用群とプラセボ服用群に分け、26週間服用を継続し、動脈硬化の進行度合い(脈波伝播速度;PWV)を観察しています。

その結果、26週後においてリナグリプチン服用群ではプラセボと比較してPWVの減少がみられました。また、リナグリプチン服用群ではHbA1c、空腹時血糖、トリグリセリドの低下がみられました。一方で、体重、コレステロール値、CRP(炎症マーカー)についてはリナグリプチンとプラセボ服用群で差はみられませんでした。

これらのことから、2型糖尿病になったばかりの患者さんが、リナグリプチンを服用することで動脈硬化の進行をくいとめることができるのではないかと示唆されました。

今後も研究が進み、患者さん1人ひとりに合った治療薬が選択され、糖尿病や動脈硬化が引き起こす重い病気をより効果的に防げるようになるのではないかと期待されます。

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